
ザナミビル(商品名;リレンザ)とオセルタミビル(商品名;タミフル)の有効性を比較した研究成果が発表された。B型インフルエンザではザナミビルの方が投与から解熱までの時間が半日以上も短く、一方のA型でも、11歳以上ではザナミビルの方が有効性は高いという結果だった。Journal of infectionの電子版に掲載されたばかりの論文をもとに、取りまとめにあたった日本臨床内科医会インフルエンザ研究班班長の河合直樹氏(写真)に、その核心を語ってもらった。
―― 9月に開かれた日本臨床内科医会学会で先生は、研究成果の一部を発表されました。日経メディカル オンラインで速報(参照記事)しましたが、読者の関心はとても高かったです。ザナミビルとオセルタミビルの有効性を多数例で直接比較した初めての研究だからだと思います。
河合 これほどの症例数で論文になったものとしては、おそらく世界でも初めてではないかと思われます。ひとえに日本臨床内科医会の多数の会員の先生方のご協力の賜だと思います。
―― 早速、論文の内容をうかがっていきたいと思います。まず研究対象からお話ください。
河合 2006年12月2日から2007年5月28日までに登録されたインフルエンザ患者1113人です。ザナミビルの適応が5歳以上ですので、年齢をそろえるため、対象は5歳以上の患者さんということになります。このうち、ザナミビル投与群は、A型で225人、B型で177人の計402人。一方のオセルタミビル投与群は、A型で472人、B型で171人の計643人でした(表1)。


表1 患者背景(出典:J Infect 2007,doi:10.1016/j.jinf.2007.09.002)
―― 患者さんの背景で、ザナミビル投与群とオセルタミビル投与群で、何か違いはありましたでしょうか。
河合 年齢や性別、ワクチン接種などといった点で、統計的に有意な差はありませんでした(表1)。A型でオセルタミビル投与群の年齢が若干高い傾向がみられますが、シーズン中にオセルタミビルが「10代は原則使用禁止」となったことが影響しているのかもしれません。B型でザナミビル投与群とオセルタミビル投与群ともに15歳前後だったのは、2006/2007シーズンは主として10代でB型が流行したことを反映しているものと思われます。
―― 発症から37.4℃以下に解熱するまでの時間(発熱時間)で、違いが出ています。
河合 A型では、ザナミビル投与群とオセルタミビル投与群の間で差はみられませんでした。ただし、両群とも非投与群よりも発熱時間が有意に短いという結果でした(図1)。

図1 発熱時間の比較(出典:J Infect 2007,doi:10.1016/j.jinf.2007.09.002)
―― B型ではいかがですか。
河合 ザナミビル投与群では非投与群、オセルタミビル投与群のいずれとも有意差があり、オセルタミビルよりもザナミビルの方が約16時間短いという結果でした。
―― 抗インフルエンザ薬の初回投与から37.4℃以下に解熱するまでの時間(解熱時間)でも、両群の比較をされています。
河合 薬の有効性をより詳しく把握するためです。分析の結果、A型でもB型でも、ザナミビルの方が、解熱時間が有意に短いことが分かりました(表2)。A型で4時間弱、B型では17時間ほど早いという結果でした。臨床の現場では、4時間早いというのはそれほど実感を伴わないかもしれませんが、半日以上も早いと、先生方もその効果に驚かれると思います。

表2 解熱時間の比較(出典:J Infect 2007,doi:10.1016/j.jinf.2007.09.002)