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特集 インフルエンザ 2007/2008

【専門家に聞く】(No.2)
医療関係者の治療や予防にはザナミビルを
長崎大名誉教授・愛野記念病院名誉院長 松本慶蔵氏

 日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の調査で、ザナミビルは、特にB型インフルエンザに対して、オセルタミビルより有効性が高いことが明らかになった。抗インフルエンザ治療薬研究の第一人者である長崎大名誉教授・愛野記念病院名誉院長の松本慶蔵氏(写真)は、これを「当然の結果」と受け止める。治療薬の1剤依存という危うさを指摘してきた松本氏は、改めてザナミビルの重要性を強調、「医師をはじめとする医療関係者の治療や予防にはザナミビルを主として使うべき」という見解を示した。

――  日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の調査で、ザナミビルは、特にB型インフルエンザに対して、オセルタミビルより有効性が高いことが明らかになりましたが、先生はこの結果をどのように受け止められますか。

松本  これは極めて当然の結果だと思います。

――  9月に名古屋で開かれた日本臨床内科医学会で、班長の河合先生が発表しました。投与開始から解熱までの解熱時間をみると、A型ではオセルタミビル群(472例)が35.5時間、ザナミビル群(225例)が31.8時間でザナミビルの方が有意に短かった(p<0.05)。また、B型ではオセルタミビル群が52.7時間(171例)だったのに対しザナミビル群(177例)が35.8時間と、こちらもザナミビル群の方が有意に短いという結果でした(p<0.001、関連記事)。

松本  河合先生から発表データの詳細を見せていただきました。非常に明瞭な結果が出ていました。立派な仕事をされたと思います。

――  なぜゆえ「当然」なのですか。

松本  ご存知のように、ザナミビルはノイラミニダーゼ阻害薬として最初に開発された薬で、早くから有効性、安全性が確認されていました。1993年に、von Itzstein氏がNatureに初めてノイラミニダーゼ阻害薬を発表しました(Nature363:418‐423,1993)。私は、この論文を読んで新しい抗ウイルス作用に強い感銘を受けました。以後、ザナミビルの開発に取り組んできたわけですが、私たちが行った研究でも、その有効性は明らかでした。

――  具体的なデータを教えていただけますか。

松本  インフルエンザを発症した患者さんについて、A型、B型のタイプ別にザナミビル吸入後の累積体温軽減率を検討しました。2001年から2005年にかけての4シーズンを対象に検討した結果、A型、B型ともに累積体温軽減率の推移は似ており、投与3日目には9割以上の患者さんで体温が37℃未満に低下しました(図1)。ザナミビルは、A型、B型の違いに関係なく効果を発揮していたのです。

図1-ザナミビル吸入後の累積体温軽減率の推移(出典:松本慶蔵ら、化学療法の領域 23:293‐304,2007)

――  ウイルスの消失率はいかがですか。

松本  治療開始5~6日後の平均ウイルス消失率は、A/H3型で100%、B型で86.8%と非常に高い成績でした。またこの4シーズンにおいて、A/H3型とB型で、ザナミビル治療前のザナミビル感受性に大きな変動は認められませんでした。問題となる耐性ウイルスは、1例も確認されていません。

――  もともとザナミビルは、耐性が生じにくいといわれていました。

松本  ザナミビルの開発者であるvon Itzstein氏も示唆していましたが、ノイラミニダーゼ活性部位との結合様式に関係があります。ザナミビルは、ウイルス表面のノイラミニダーゼの活性部位にザナミビルのguanidino基が直接的に結合するため高い親和性を示します(図2)。一方のオセルタミビルは、疎水基を介してノイラミニダーゼの活性部位に結合するため、親和性が落ちると推察されているのです。この結合様式の差が耐性誘導の違いにつながると考えられているのです。オセルタミビルはもともと数%の耐性があると報告されていました。ザナミビルについては、B型で1株発生しているだけです。これは免疫不全の患者さんで、通常の流行においては確認されていません。

図2-ノイラミニダーゼ活性部位との結合様式の違い(出典:坂井優子ら、VIRUS REPORT 1:31-37,2004)

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