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インフルエンザ診療
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働く世代のインフルエンザ予防接種事情 
あなたは、接種しますか? 接種しませんか?

2012/10/04
和田耕治(北里大学医学部公衆衛生学准教授)

60歳代の選択した理由とは
 インフルエンザの予防接種が推奨されている65歳以上も含まれている60代の選択した理由は興味深い。男性では、1位が「自分はインフルエンザに感染しないと思うから(39%)」、2位が「自分は感染しても重症にならないと思うから(31%)」、3位が「インフルエンザの予防接種の効果を信用していないから(25%)」だった。

 女性では、1位「インフルエンザの予防接種の効果を信用していないから(31%)、2位「予防接種によって起こりうる副反応が心配だから(29%)」3位「自分はインフルエンザに感染しないと思うから(27%)」が上位となる。

 すでにお気づきの方もおられるように、60歳代でネットサーベイに参加しているというバイアスがあるのではないかと。たしかに、否定はできないが、ある意味で情報を自ら取得しようという人たちとも言えるこの方々が、自分は感染しない、だとか効果を信用していない、副反応が心配だということを接種しない理由とした選択したことは興味深い。特に「インフルエンザに感染しないと思うから」というのは、長年の経験からであろうか。「効果を信用していない」というのは、接種したが、実際には感染してしまったという経験に基づいているであろうか。

 副反応が心配だからというのが女性の50代から60代に特に多い。この年代は、母として自分の子供たちが予防接種を受けた際にいろいろと予防接種について悩まされた機会が多かったのであろうか。たとえば、1994年にインフルエンザの予防接種の集団接種が様々な議論の後に中止された。また、1990年代前半から予防接種の副反応に関する裁判などがあり、社会的にも大きな課題として取り上げられた。たとえば当時10歳の子がいた36歳の女性が今では、54歳である。こうしたイメージをもった方々が65歳を超えたときにインフルエンザの予防接種をどのように考えるのだろうか。

 経済的理由がないことを理由とする人をどうするか?

 「経済的余裕がなかった」は、男性でも60代以外は上位に挙がり、女性でも20代から40代まで上位にあった。今後インフルエンザの予防接種を推奨する際には、経済的な面についても解決を考えなければならないであろう。

 2009年の当時、新型インフルエンザA/H1N1のワクチンを国民全員の確保を目指して、緊急に作り、一部は輸入もした。購入にあたって多くの税金も投入されたようだが、費用は1回目3600円、2回目2550円と比較的高額な個人負担が接種者には求められた。当初の優先順位がついていた際には混乱もあったようであるが、次第に話題にならなくなった。

 とはいえ、もう少し安価であれば、接種する人も増えたであろうか。輸入されたワクチンのほとんどが、結果的に使われずに廃棄されたのは極めて惜しい。新型インフルエンザ等対策特別措置法に関連して、どのようにして国民に予防接種を「提供するか」について検討がされているようであるが、効果のあるワクチンがどの程度「接種される」かの施策が検討されることも期待したい。

 経済的理由を考えるために、近年、社会的決定要因として話題になることが多い世帯年収と接種の有無の理由との関連を表2に示した。男性で世帯収入が300万円未満では、35%が経済的余裕がなくて接種しなかったと回答し、300万円から800万円未満の2倍であった。女性においても世帯収入が300万円未満では39%が経済的理由を挙げた。解決策として予防接種の費用補助を行っている企業や健康保険組合があるが、どの世帯収入においても1から2割程度しか接種した理由として挙げていない。

表2 世帯年収とインフルエンザ予防接種をしなかった理由とした理由(抜粋。n=3110人)[クリックで拡大]

おわりに
 インフルエンザの予防接種に限らず多くのことに、年代によって差があるのであろう。予防接種以外でも様々な面での意識の違いなどを明らかにすると健康教育や公衆衛生施策の展開を検討する際に有用と筆者は考えている。

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