変形性膝関節症(膝OA)治療におけるヒアルロン酸関節内注射の有効性に関しては、検証した各試験のデザインが均一でないため、報告によって評価が異なっている。そこでStrandらは、オーストラリア、フランス、ドイツ、スウェーデン、英国で実施された5つの無作為化二重盲検比較試験(RCT)から同一の評価項目によるメタアナリシスを行った。
LIスコアが24%改善対照群に比べ有意に減少
対象は、X線で膝OAと診断された40歳以上(スウェーデンでは50歳以上)の症例。炎症性関節症や過去3~6カ月以内に関節内注射を実施した例は除外され、穿刺排液後、1%ヒアルロン酸関節内注射剤(平均分子量90万ヒアルロン酸)または対照としてリン酸緩衝液2.5mLを膝関節内に週1回、連続5回投与(ドイツの試験では対照として希釈した0.01%ヒアルロン酸を投与)した。アセトアミノフェンの使用は許可した。
主要評価項目は、疼痛と関節機能の総合指標であるLequesne Index(LI)スコア。LIスコアは、疼痛や歩行距離、階段の上り下りなどの日常生活動作に関する質問で構成されている。評価には、投与5週後、9週後、13週後のデータを採用した。
患者は、1%ヒアルロン酸関節内注射剤投与群(IA-HA群)が619例、対照群が536例。IA-HA群および対照群のそれぞれの平均年齢は61.8歳および61.4歳、女性の割合は62.4%および58.8%、試験開始時のLIスコアは11.0および11.3で、両群間の患者背景に統計学的な有意差は認められなかった。

解析の結果、LIスコアの治験開始時からの改善率は、対照群では17.7%(-2.00)だったが、IA-HA群では24%(-2.68)と有意な差が認められた(図1)。これは、膝OAのRCTで報告されているCOX-2阻害薬や非選択的NSAIDsなどの効果と比べても良好であった。
帝京大学ちば総合医療センター院長・整形外科教授の和田佑一氏は、「両群とも炎症性サイトカインなどを含む関節液を穿刺排液しているため、対照群でも LIスコアに改善が認められたのだろう」と述べた上で、「ヒアルロン酸関節内注射療法は、日本をはじめ世界各国の臨床試験で高い有効性と安全性が認められているが、今回、新たなエビデンスが加わったことは大いに意義がある」と強調。さらに、「われわれの最近のMRIを用いた研究では、ヒアルロン酸関節内注射は単なる対症療法ではなく、疾患の自然経過を変え、軟骨変性の進行を抑制させるstructure modifying drugs (構造改善薬)としての作用が示唆されている」とコメントした。
(日経メディカル別冊)