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2008. 8. 5

【用語解説】 COPDの薬物治療

 COPDに対する薬物治療の目的は、主訴の1つである気流制限を軽減し、運動能力を高めることや症状を軽減すること、増悪を防ぐことなどにある。現在使用されている薬剤は、大きく4つのグループに分けることができる。

 (1)まずCOPDでは、気流制限により、最大吸気量の減少や労作時の呼吸困難などを生じるため、気管支拡張薬が処方薬の中心となる(それぞれの気管支拡張薬の特徴については後述)。

 (2)安定期では推奨されないが、急性増悪の頻度軽減が期待できるステロイド薬も選択されることがある。

 (3)COPDの気道病変として分泌線の過形成や肥大があるため、喀痰量の増加や喀出困難が認められる場合は、去痰薬も選択肢の1つとなる。

 (4)COPDの増悪因子となるインフルエンザや感冒などの予防・治療に向け、ワクチンや抗菌薬が考慮されることもある。

 COPDの薬物治療では、これらの薬剤を病期や症状などに応じて、適切に選択し組み合わせる必要がある。

【安定期の薬物治療】目標は1秒量低下の抑制

 COPD慢性安定期の治療では、短期的には可能な限り可逆性の気流制限の治療を行い、生活の質(QOL)を良好に保つことが目標になる。一方、長期的には病気の進行を予防し、生命予後の改善を目指す。言葉を換えれば、「経年的な1秒量の低下を抑制すること」にあるため、スパイロメトリーなどで判定した病期に応じて、より詳細な治療方針が決定する(表1)。

表1 慢性安定期COPDの病期別管理 COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第2版より

 まず、禁煙はCOPDの進行抑制に最も効果的とされるため、喫煙者への禁煙指導は病期にかかわらず治療の基本となる。同時に、増悪因子であるインフルエンザや感冒の予防も病期を問わない。

 ステージ機雰攵COPD)と判定されれば、短時間作用型で吸入式のβ2刺激薬あるいは抗コリン薬を頓用する。ただし、吸入薬に十分反応しない患者の場合は、低用量投与で抗炎症作用を有するとの報告もあるテオフィリン薬(キサンチン系薬)を第2選択薬として用いる。これらの薬剤は、重症度が進展しても頓用の基礎薬として常に考慮する。

 ステージII(中等症COPD)以上では、頓服だけでは症状の管理が困難なため、長時間作用型で吸入式の抗コリン薬あるいはβ2刺激薬を常用する。それで十分な反応を得られない場合は、テオフィリン薬の併用も検討する。

 ステージIII(重症COPD)では、急性増悪への対応が求められる。増悪を繰り返す(例えば、過去3年間で3回の増悪を繰り返す)場合は、短時間作用型(頓用)と長時間作用型(常用)の抗コリン薬あるいはβ2刺激薬とともに、吸入ステロイド薬を考慮する。

 ステージIV(最重症COPD)の慢性呼吸不全例では、各種気管支拡張薬と吸入ステロイド薬の併用とともに、酸素療法や外科的介入も考慮する。急性増悪の頻度が高まると生存率が著しく低下することも報告されており、厳重な管理が求められる。

【急性増悪時の薬物治療】III期以上(重症・最重症)の急性増悪は要入院

 COPDにおける急性増悪とは、一般的には安定期に行われていた治療内容を変更しなければならないような状態を指す。病期によってその対応は異なるが、III期(重症)以上、あるいは機II期でも高齢者や増悪に対する治療に反応がない症例などでは、要入院となる。

 COPDの急性増悪における即時目標は、十分な酸素の供給と気道閉塞の改善にある。したがって、薬物療法では、短時間作用型吸入β2刺激薬の反復吸入が基本となる。それで十分な効果を得られない場合は、短時間作用型吸入抗コリン薬をβ2刺激薬と同時または交互に投与する。吸入薬の投与法として、定量噴霧式吸入器(MDI;Metered Dose Inhalor)とネブライザーがある。

 急性増悪におけるステロイド薬は、全身投与が呼吸機能の回復と増悪期間の短縮に有効とされ、経口剤あるいは注射剤(静注)が推奨されている。

 テオフィリン薬は、ガス交換の悪化による低酸素血症をもたらすリスクがあり、副作用防止のために血中濃度を監視する必要がある。ただし、β2刺激薬や抗コリン薬の吸入剤で十分な効果を得られなかった場合は、経口あるいは静注のテオフィリン薬投与も考慮される。

 急性増悪の原因は、喫煙や刺激物の吸入曝露、あるいは高濃度の大気汚染とともに、細菌性やウイルス性の感染も多いと考えられている。そこで、膿性痰が認められる増悪症例では、抗菌薬投与も推奨される。このほか、喀痰の量の多さや喀出困難が認められれば、去痰薬も考慮される。

COPD治療に用いる気管支拡張薬の特徴

<抗コリン薬>

 副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンの受容体の中で、気道平滑筋に存在するM3受容体が平滑筋収縮の中心的な役割を占めるとされている。抗コリン薬は、この経路を遮断して気管支拡張作用を示す。わが国で気管支拡張薬として用いられる抗コリン薬には、長時間作用型のチオトロピウムと、短時間作用型のイプラトロピウム、オキシトロピウムがある。チオトロピウムはカプセルを使用したドライパウダーであり、1日1回の吸入で24時間以上の気管支拡張効果が持続するとされ、中等症以上の安定期の維持治療や急性増悪の抑制に有用と考えられている。一方、短時間作用型の2剤は定量噴霧式吸入製剤で、吸入後6〜9時間の効果が期待できる。主に、軽症例や急性増悪時の頓用として用いられる。

<β2刺激薬>

 β2刺激薬は、気道平滑筋に存在するβ2アドレナリン受容体に作用して平滑筋を弛緩させ、気管支を拡張する。抗コリン薬と同様に、β2刺激薬にも短時間作用型と長時間作用型があり、剤形も定量噴霧式吸入製剤と吸入可能なドライパウダー式が上市されている。現在、COPD安定期の維持治療薬としては、長時間作用型β2刺激薬があり、LABA(long-actingβ2-agonist)とも呼ばれる。それに対し、SABA(short-actingβ2-agonist)と呼ばれる短時間作用型β2刺激薬は、症状緩和薬との位置付けで、頓用吸入あるいは急性増悪の即時治療薬として使用されている。

<テオフィリン薬(キサンチン系薬)>

 テオフィリン薬(キサンチン系薬)の気管支拡張効果は、抗コリン薬やβ2刺激薬に比べて一般的に低いと考えられ、有効血中濃度域も狭い。したがって、COPDの薬物療法においては、抗コリン薬やβ2刺激薬に反応性の乏しい症例に対する第2あるいは第3選択薬との位置付けになる。

(日経メディカル開発)

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