自分の力だけで行う転職の問題点
それでは、A)独力系の2つのパターンについて解説していきます。最初に1)知人経由の転職についてです。
・お世話になった先生が、市中病院の部長になり誘われた
・非常勤で勤めていた病院に、そのまま常勤として誘われた
・友人や事務長経由などで人事情報が流れてきた
などが、このパターンでよくある例です。医療業界は狭い世界ですので、知人や恩師などを経由した転職は有力な方法だと思われます。なおかつ、この経由であれば、雇用者・被雇用者、お互いに良い意味での緊張感があり、条件交渉の段階や就職後に、トラブルに見舞われることが少ないようです。また、紹介する知人としても、条件が合わずに働きづらい職場に送り込むわけにはいきませんので、ある意味“無償の代理人”として条件交渉をしてくれる場合もあります。
次に、2)の病院の求人情報への直接応募による転職についてです。医療関係の雑誌や新聞、インターネット上のサイトなど、様々な媒体に求人情報が掲載されています。それらの情報を頼りに自ら直接病院へ連絡して転職する方法です。この方法は、掲載情報だけを頼りに自分で判断しなくてはならず、以下のような問題点が考えられます。
・求人側(病院)と求職側(医師)の間で希望に隔たり(ミスマッチ)があっても、交渉段階ではミスマッチの状況にお互いが気づかず、転職が成立してしまう。就職後、ミスマッチのある状況に耐えられず、結果として短期の離職につながることになる
・条件交渉をする中で、雇用者と被雇用者という関係が強調され、被雇用者である医師が弱い立場になりやすい
・当直の回数、休日の日数、研究会への参加など、就職前に約束されていたはずの就労条件が、就職後になって守られない。病院側に、常勤医の充足を最優先にせざるを得ないくらい、厳しい状況にある場合でこうしたことが多い
・そもそも、各種就労条件の交渉をするにしても、給与や休日、福利厚生など交渉項目は多岐にわたり、個人で交渉するには限界がある
・交渉は複数回に及ぶことも多く、なかなか時間が取れない
昨今の医師不足は、病院の存続にかかわる問題であるため、各病院は医師の確保に必死です。「病院が嘘をつく」とは言いませんが、転職は医師にとって非常に大きな問題ですから、独力による交渉には特に慎重にならざるを得ないかと思います。
次回は、B)の代理人を介して行う転職について、なぜ代理人の存在が必要なのかを解説します。