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2021年度介護報酬改定の方向性が明らかに
新型コロナの感染対策は基本報酬で評価へ
「日経クロスヘルス EXPO 2020」に厚労省老健局老人保健課長の眞鍋馨氏が登壇

厚生労働省老健局老人保健課長の眞鍋馨氏

 「今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や昨今の災害の影響を踏まえ、今後の感染・災害対策のコストは基本報酬で評価し、介護事業者に求められる取り組みは運営基準に位置付ける」──。10月14~16日にオンラインで開催された「日経クロスヘルス EXPO 2020」で16日、厚生労働省老健局老人保健課長の眞鍋馨氏が登壇し、2021年度介護報酬改定の方向性を明らかにした。

 介護報酬は3年に1度見直される。次の2021年度改定の大きなテーマは、(1)感染症や災害への対応力強化、(2)地域包括ケアシステムの推進、(3)自立支援重度化防止の取り組みの推進、(4)介護人材の確保・介護現場の革新、(5)制度の安定性・持続可能性の確保──の5点である(図1)。

図1 2021年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)の概要
(※クリックすると拡大表示されます)

 (2)~(5)のテーマは前回の2018年度改定を踏襲しているが、(1)は新型コロナ禍や昨今の災害の発生・対応の状況に鑑みて新たに盛り込まれたものだ。感染症や災害が発生した場合でも、利用者に必要なサービスを安定的・継続的に提供できるように、発生時に備えた日ごろの体制構築や業務継続に向けた取り組みを推進する。

 新型コロナ禍への対策については、2020年度補正予算で創設された「新型コロナ緊急包括支援交付金」などで介護事業所の運営に要したかかり増しの費用が補助されている。こうした新型コロナウイルス感染症、また災害発生時への対応は「平時から必須になる」との認識から、眞鍋氏は「日常的に掛かるコストを基本的な報酬で評価し、サービスの質の全体的な底上げを図ることになるだろう」との見解を示した。感染対策の研修体制、消毒・手洗い・検温などの予防体制の整備、消耗品等の購入、業務継続計画BCP)の策定などが対象に含まれる見通しだ。次期改定の方向性を議論する社会保障審議会・介護給付費分科会では「委員からおおむね賛同を得ている」としている。

 これに伴い運営基準では、各事業者が順守すべき感染・災害対策の取り組みを位置付ける方針。既に厚労省は感染症対策のマニュアルを10月1日に作成してホームページで公開しており、BCP策定のガイドラインも2020年度中に改訂版を公表する予定という。

「PT、OT、STをバランス良く配置する事業所に期待」

 (2)の「地域包括ケアシステムの推進」では、医療・介護の連携と看取りへの対応をポイントとして挙げた。後期高齢者の増加を背景に死亡者数がピークを迎える2040年を見据えた上で、特別養護老人ホームや高齢者住宅で近年死亡が増えている実情を踏まえ、次期改定では前回改定に続いて看取りを評価する意向。「外部から医療が入りやすい仕組みを整え、看取りを促進したい」と眞鍋氏は語った。また、2019年6月に閣議決定された「認知症施策推進大綱」を受け、施設・在宅における認知症への対応力の向上を図る観点から、「全ての介護従事者に認知症に関する何らかの研修を受けてもらう方向で検討している」と述べた。

 (3)の「自立支援・重度化防止の取り組みの推進」については、エビデンスに基づく介護サービスの提供を促進するため、介護データの収集および分析を重視。2018年度改定で導入されたリハビリの評価データのVISITとともに、高齢者の栄養・口腔・認知症などの状態のデータであるCHASEの一体的な運用を2021年度に始め、データ提出を促す方法を介護報酬で検討するとした。「収集したデータを分析した結果を事業所にフィードバックし、例えば、その事業所が取り組んだケアによる利用者の状態の改善率が全国の事業所の中で何番目なのかが分かるようにしたい」と眞鍋氏は語った。

 さらに自立支援・重度化防止を効果的に行うため、「状態改善の一定のエビデンスが認められるリハビリテーション、栄養、口腔の『三位一体』の取り組みがきちんと機能するように見直したい」と報酬面での評価を示唆。「特に理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)をバランス良く配置している事業所の役割に期待している」とした。

 (4)の「介護人材の確保・介護現場の革新」では、人材不足が今後より深刻になる見通しの下、少ない介護職でケアの質を維持できるように介護ロボット・ICTの活用による生産性向上の必要性を強調。一例として、「前回改定で見守りセンサーの設置を条件に特養の『夜勤職員配置加算』で認めた配置要件の緩和について拡大を検討したい」と眞鍋氏は述べた。また、(5)の「制度の安定性・持続可能性の確保」については、2000年の介護保険制度の創設以降に種類が増えて複雑化した加算を簡素化する方向を提示。ただし、「算定率が低くても必要な加算もあるため、一つひとつの加算の意義について丁寧に吟味したい」とした。

 次期改定に向けては今後、介護給付費分科会で12月をめどに意見を取りまとめ、来年1月に諮問・答申を経て新しい介護報酬が決まる見通しだ。

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連載の紹介

日経クロスヘルス EXPO 2020 リポート
2019年10月、医療従事者と周辺産業関係者の交流を目的に初開催して好評を博した「日経クロスヘルス EXPO」を、2020年は10月14日(水)~16日(金)にオンライン開催しました。その様子をお届けします。

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