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薬剤師・薬局は調剤中心から多面的な対応へ
厚生労働省薬事企画官が改正薬機法の概要などを解説

 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課薬事企画官の安川孝志氏が2020年10月15日、「日経クロスヘルスEXPO 2020」(主催:日経BP)のオンラインセミナー「令和の時代に求められる薬剤師・薬局の役割」に登壇。薬剤師・薬局を取り巻く状況とそれに伴う厚労省のこれまでの施策、20年9月1日から施行された医薬品医療機器等法(薬機法)改正に伴う「服薬期間を通じた薬剤師によるフォローアップ」などについて語った。

 冒頭では、平成の約30年を「薬剤師・薬局の位置付けや求められる役割が大きく変化してきた」と評した安川氏。第2次医療法改正で薬剤師が医療の担い手として明記されたことをはじめとして、薬局の医療提供施設としての定義、チーム医療の推進などが方向付けられ、臨床現場での薬剤師・薬局の位置付けはより重要なものとされてきた。近年の、「患者のための薬局ビジョン」の策定や調剤報酬改定、そして薬機法改正などの施策は、いずれも、対人業務の充実を求めるメッセージが込められていると説明した。

 その上で、薬剤師・薬局の課題として、安川氏は、患者からの「薬局は薬を受け取るだけの場所」「処方箋がなければ行かない」「薬剤師からの情報提供・指導は形式的なものにとどまっている」といった声を紹介したほか、地域の医療・介護関係者や市町村などにも、薬剤師の業務が見えにくい現状があるとした。

 こうした患者の声や現状の課題に対応すべく、処方箋に基づいた調剤にとどまらず、薬物治療への貢献、患者の個別性を考慮した対人業務に薬剤師がどう関わっていくかが重要だと強調。2018年度の研究事業における薬剤師の需給予測では、薬剤師業務が今後も変わらない前提で推計した場合、今後薬剤師の供給が需要を上回る計算だったが、薬剤師の業務がどのように移り変わっていくかによって、需給バランスは変化する可能性があると述べた。

「薬剤師として患者へどう関わるかが重要」

 最近の大きな施策である、薬機法改正についても、趣旨と概要を説明。20年9月1日からは、継続的服薬指導(フォローアップ)が薬剤師の業務として義務付けられた。

 薬局薬剤師によるフォローアップと医師へのフィードバックは、既に、調剤報酬のかかりつけ薬剤師指導料の算定の考え方に含まれているといえる。「(フォローアップは)かかりつけ薬剤師・薬局としてもともと行うべきことであり、法改正が施行されても、考え方そのものや実施する内容は変わっていないものと考えている」と安川氏は述べた。

 フォローアップの運用については、法律や省令で詳細に定められているわけではないが、「薬剤師が必要があると認める場合」にフォローアップを実施するという点が大きなポイントとなる。全ての患者に対して実施することは求めておらず、患者が服用している薬の特性や、服薬状況などを個別に判断した上で、薬剤師が実施の有無を適切に判断し実施する。

 例えば、「副作用が出やすい薬が処方されているので、一定期間後に副作用の有無を確認したい」「薬が多く処方されているので、服薬状況を確認したい」といったように、「患者から『なぜ(薬局から)連絡する必要があるのか』と尋ねられた際に、必要性をしっかり説明できることが求められる」(安川氏)。

 また、フォローアップには電話をはじめ様々な手段が考えられるが、電子メールでの一斉送信や自動送信のような機能を活用し、一律に同じ内容の送信をすることのみをもって、フォローアップの義務を果たしたことにはならないことも安川氏は強調した。

 薬機法改正に当たっては、オンライン服薬指導も20年9月1日から施行された。現状(2020年10月時点)では、薬剤交付時の対面以外の服薬指導として、(1)薬機法改正に伴うオンライン服薬指導、(2)国家戦略特区における実証的な事業、(3)新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた時限的・特例的な取り扱い(0410対応)――が存在する。

 なお、0410対応を規定した事務連絡では、服用期間中に電話等で服薬状況の把握や副作用確認を実施するよう求めており、既に適切な場面での薬剤師によるフォローアップが重要との考え方が示されていた。

 今後、オンライン服薬指導の取り組みが進んでいく中で、今後の在り方やルールなどについては改めて検証・議論を行うとした。その上で、比較対象となる対面での服薬指導に関しても、「もし、対面で形式的に指導しているだけであれば、『オンラインや電話でも変わらない』『対面でなくても問題ない』といった議論に発展しかねない」(安川氏)として、対面での薬剤師の関わり方を再点検する必要性も強調した。

 また、薬機法改正のうち、今後施行される認定薬局制度も、大きな変更点として挙げられた。

 地域連携薬局は、患者の入退院時に医療機関と連携したり在宅対応などを行ったりしながら、一元的・継続的に対応できる薬局。薬局ビジョンで既定された「かかりつけ薬剤師・薬局機能」に当たる。専門医療機関連携薬局は、癌などの治療を行う専門医療機関と連携して専門的な薬学管理を担う薬局で、薬局ビジョンでいう「高度薬学管理機能」に対応する。ともに都道府県知事による認定を受けて薬局機能を標榜できる制度だ。20年10月8日は省令案が示された(関連記事:薬局認定制度の基準に関する省令案公表)。

 安川氏は、認定薬局については、医療計画など、他の医療政策とも結び付けていく可能性にも言及。「様々な施策の中で対応していきたい」と話した。

薬剤師の資質向上の取り組みにも動き

 厚労省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」で議論が始まっている、薬剤師の養成も、今後の薬剤師において大きなトピックだ。

 薬学教育が6年制となって10数年が経過し、また直近の薬機法以外にも様々な制度改正などを受けて、薬剤師・薬局を取り巻く様々な環境変化や、薬剤師に求められる役割が変化している。「薬剤師教育においても、変化に対応できる薬剤師の養成が必要とされている」と安川氏は述べるとともに、薬剤師免許の取得がゴールではなく、生涯学習など自己研さんに日々取り組むことが、薬剤師の資質向上、ひいては医療の質の向上につながるとした。

 また、薬剤師の専門性に関する私見として、(1)専門制度・認定制度、(2)薬剤師免許取得後の卒後研修――について述べた。(1)については、多岐にわたる専門制度・認定制度がある中での質の担保や標準化、薬局薬剤師としての専門性の在り方などについて、検討が必要だとした。

 (2)の卒後研修は、現在は病院が独自にレジデント制度や研修制度を設けており、医師のように卒後研修を位置付けるべきとの意見も聞かれる。安川氏は、研修カリキュラム、研修実施施設、指導体制、専門・認定制度との関係、卒前の実務実習との関係などを整理する必要があるとの見方を示した。これについては、19年度から「薬剤師の卒後研修カリキュラムの調査研究」の研究班を立ち上げており、現状を把握するとともに今後の在るべき姿を示していく考えだという。

 最後に安川氏は、薬剤師の今後の課題としての私見をまとめた。繰り返し強調されたのは、処方箋の調剤だけではなく、様々な場面で専門性を発揮し活躍してほしいとのメッセージだ。臨床現場での問題解決への貢献や、薬薬連携・他職種連携を通した地域包括ケアシステムの一員としての対応に期待を寄せた。さらに、地域の医薬品提供体制の確保や、新型コロナウイルス感染症などの新興感染症や災害時など、緊急事態における公衆衛生の向上などにも薬剤師が存在感を発揮していくことを求めた。

 同時に、薬剤師の資質向上のため、薬剤師としてのキャリアパスを描くこと、薬物療法への薬剤師業務の貢献をエビデンスにして示すことなどにも積極的に取り組んでほしいとした。

 最後に、令和の薬剤師像は、現場の手で作り上げていくものだとして、「行政として現場の後押しをしていきたい。ぜひ主体的に業務を進めてもらえればと思っている」と締めくくった。

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連載の紹介

日経クロスヘルス EXPO 2020 リポート
2019年10月、医療従事者と周辺産業関係者の交流を目的に初開催して好評を博した「日経クロスヘルス EXPO」を、2020年は10月14日(水)~16日(金)にオンライン開催しました。その様子をお届けします。

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