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COVID-19対応と並行で医療提供体制改革を推進
「日経クロスヘルス EXPO 2020」に厚生労働省医政局長の迫井正深氏が登壇

厚生労働省医政局長の迫井正深氏

 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応を着実に行いながら、人口構造が変化する2040年に向けて、医療施設の最適配置、働き方改革、医師偏在対策の3つの改革を同時に進めていく」──。オンラインで開催中の「日経クロスヘルス EXPO 2020」(主催:日経BP、会期:10月14~16日)に厚生労働省医政局長の迫井正深氏が登壇し、2040年に向けて政策の方向性を明らかにした。

 迫井氏が登壇したのは、10月15日にオンライン配信された「新型コロナウイルス感染症への対応と2040年を見据えた医療提供体制の構築」。COVID-19で影響を受けた医療機関などへの対応と、2040年の医療提供体制を見据えた改革(いわゆる「三位一体改革」)について解説し、今後の議論のポイントを整理した。同改革は、(1)医療施設の最適配置の実現と連携、(2)医師・医療従事者の働き方改革、(3)実効性のある医師偏在対策──を軸に3つの改革を連携させながら一体的に進めていくものだ。

 地域医療構想の実現は2025年、働き方改革の柱である医師の時間外労働に対する上限規制は2024年度から、医師偏在是正の目標は2036年に掲げ、検討会やワーキンググループなどを中心に議論が進められてきた。ところが今年のCOVID-19の流行により、議論が一時的に中断したり、新たな課題が明らかになるなどの影響を受けている。こうした状況を踏まえた上で迫井氏は、冒頭の発言とともに厚労省の支援策や改革推進に向けての方針を語った。

1次・2次補正予算、予備費などの活用で手厚く医療機関を支援

 COVID-19の流行により患者の受療行動が変化し、多くの医療機関では減収となっている。特にCOVID-19患者受け入れ病院や耳鼻科や小児科などの診療所では、その影響が大きい。迫井氏は、COVID-19の影響の長期化やインフルエンザ流行期に備えた体制の確保に向け、厚労省の支援の概要を紹介した。

 現在までに行われた支援の一例として、(1)COVID-19緊急包括支援交付金の増額および対象拡大を全額国費により措置、(2)診療報酬の特例的な対応、(3)マスク、ガウンなどの確保、医療機関等への配布、(4)PCR検査体制のさらなる強化、(5)福祉医療機構の優遇融資の拡大──などを挙げた。さらにインフルエンザ流行期の備えとしては、予備費のうち、発熱外来診療体制確保支援で2170億円、感染症疑い患者を受け入れる救急医療機関等の支援に682億円を活用していくことも明らかにした。

地域医療構想・医療計画にCOVID-19の経験を反映へ

 2020年7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2020」の中で、COVID-19を踏まえた「新たな日常」に対応した医療提供体制の構築の方針が盛り込まれた。一時中断していた「医療計画の見直し等に関する検討会」などの各検討会は、この方針を基に改めて議論を再開していくこととなる。迫井氏は、「COVID-19の状況を踏まえながら、質が高く効率的な医療提供体制を持続可能にしていくことが重要だ」と改めて強調した。

 COVID-19により一時的な病床不足が起こったことについては、暫定的に一般病床を利用するなど、医療法上の開設・増床の臨時的な緩和措置が可能なことを紹介するとともに、感染症法に基づく予防計画について説明した。同計画の中には、地域における医療提供体制の確保に関する項目が盛り込まれていること受け、「予防計画と医療計画は連動する部分がある。医療計画の中でこうした計画をくみ取っていく必要があるだろう」と今後の方向性について提言した。

 一方で、「地域医療構想は人口構成の変化など長期的な視点での検討が必要だ」と述べた。地域医療構想では、癌や心疾患などの9領域の「診療実績が特に少ない」または6領域の「診療実績が類似している」と位置付けられた公立・公的医療機関等に対し、当該医療機能の他の医療機関への統合や他の病院との再編統合が求められている。対象の424病院を公表した背景について迫井氏は、「再編統合を必ずしなければいけないという趣旨ではなく、改めて地域における自病院の役割や医療需要の変化に伴う役割の変化などを再検討してほしいということだ」と説明した。今後の地域医療構想に関する取り組みの進め方については、再検証等の期限を含め、改めて厚労省で整理の上、提示する方針を明らかにした。

地域医療を考慮しながら働き方改革・医師偏在対策の推進へ

 医師の働き方改革について、直近の医師の労働時間が短縮傾向にあることを一定の評価をしながらも「年間960時間以上の長時間労働はまだ存在しており、対応が必要だ」(迫井氏)と必要性を強調した。一方で、主たる勤務先が医師の兼務先での勤務時間を把握する難しさや大学病院などが医師の派遣を中止することによる地域医療の崩壊などの問題点を提示した。迫井氏は、「大学病院などに情報提供を適切に行いながら対応していく必要がある」と述べた。
 
 医師偏在対策は古くからの課題であり、厚労省として様々な施策を展開してきたことを説明。しかし都市部に医師が集中する傾向はいまだに解消されていない。これを受け、(1)都道府県における医師偏在対策実施体制の強化、(2)医師養成課程を通じた地域における医師確保、(3)外来医療機能の不足・偏在等への対応、(4)医師の少ない地域での勤務を促す環境整備──といった方向性を打ち出している。
 
 医師養成数については、2022年度分までは既存の方法で設定し、その後に関しては見直しを行う方針を明らかにした。臨床研修医の募集定員倍率に関する取り組みは、2025年度の約1.05倍の数値目標に向け、継続して行っていく。

 学会が中心となって進めていた専門医制度に関しては、中立的な第三者機関(日本専門医機構)を設立し、さらに各地域の実情や医療政策の観点を反映させるために2018年以降から厚労省などからも意見を提出し、反映されていることを紹介した。

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連載の紹介

日経クロスヘルス EXPO 2020 リポート
2019年10月、医療従事者と周辺産業関係者の交流を目的に初開催して好評を博した「日経クロスヘルス EXPO」を、2020年は10月14日(水)~16日(金)にオンライン開催しました。その様子をお届けします。

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