日経メディカルのロゴ画像

《Beyond Healthより》
7代目王者を目指す15社が競演、2022経産省ビジコン
「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2022」ビジネス部門一次審査

 ヘルスケア分野におけるエコシステムの構築を目指す取り組みの一環として、2015年にスタートした経済産業省主催の「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(略称:JHeC)」。第7回目となるJHeC2022は、最終プレゼン審査を2022年1月14日に予定している。

 その最終プレゼン審査への出場をかけた一次プレゼン審査が、「日経クロスヘルスEXPO 2021」内で実施された。コロナ禍の現状を踏まえて、事前の書類審査を通過した参加者が、すべてオンラインで発表する形式を採った。

審査会場の様子(写真:寺田 拓真)

経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐の高橋久美子氏(写真:寺田 拓真)

 一次プレゼン審査は、アイデアコンテスト部門とビジネスコンテスト部門が2日に渡って実施された。本記事では、15組がしのぎを削ったビジネスコンテスト部門の一次プレゼン審査の様子を紹介していく(アイデアコンテスト部門の一次プレゼン審査の様子はこちら)。

 冒頭、経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐の高橋久美子氏が登壇。同省が2021年10月20日に発表した第3次「J-Startup」について触れた(第3次「J-Startup」の詳細はこちらの記事を参照)。今年選定された50社の中には、JHeC2021のビジネスコンテスト部門でグランプリを受賞したMagic Shieldsが含まれていることを挙げ、エコシステム全体で「成功事例を作っていくことが非常に大事だ」と語った。

 以降では、ビジネスコンテスト部門に登壇した15社によるプレゼンの概要を、登場順に伝えていく。

Raise the Flag.

Raise the Flag. 代表取締役CEO 中村猛氏

 Raise the Flag.は現在、視覚障がいをサポートする多彩な機能を搭載したアイウェア「RtFグラス」を開発している。メガネ型デバイスのRtFグラスは、視力に頼ることなく感覚的に周囲の様子を正確に認識できるコア機能を備えるほか、録画やテキスト読み上げ、視線先の色再現などの機能も搭載し、メガネのツル部分を軽くタップすることで機能を切り替えられる。

 コア機能の開発にあたって同社 代表取締役CEOの中村猛氏が着目したのは、視覚障がい者の約9割が「自由に動かせる眼球」を有していること。これを踏まえ、ステレオカメラを中心とするさまざまなセンサーから得られる信号を演算処理し、視線先対象物までの距離を振動や音響でフィードバックすることで、視力を使わずに周囲の環境を認識できるシステムを開発した。

 RtFグラスのいくつかの機能やバージョンアップは、スマートフォンを介して行う仕組みとなる。中村氏によれば、障害特性に合わせた細かなセッティングを施すことで「すべての視覚障がいに対応できる」とのこと。さらに、すでに大手メガネチェーンと業務提携しており、販売や初期セッティング、メンテナンスなどを「地域格差なく実施できる体制も構築できている」と付け加えた。

エニシア

エニシア 代表取締役 小東茂夫氏

 医師の事務作業に大きな負荷がかかっている現状から、自然言語処理技術を用いた電子カルテ要約支援ソフトウエア「SATOMI」を開発し、医師の働き方改革を目指すエニシア。臨床現場に立つ医師と情報技術の協調によって、現状では活用しづらいカルテ情報を扱いやすくすることで、医師の業務負担を軽くするとともに、次の診療や医療の進歩に貢献したいと考えている。

 SATOMIでは、医師がカルテを記入するたびに、その要約と構造化データを作成する。これにより、カルテをすべて読まなくても「経緯を把握できるようになる」ことに加え、自然文で書かれているカルテデータを機械で扱えるようになるため「ビッグデータとして活用可能になる」と、同社 代表取締役の小東茂夫氏は説明する。

 導入のメリットとしては、カルテ要約により「医師の文書作成業務の負担を軽減できる」、医療データが整理されることで「医療研究などへの利活用を実現できる」といった点が挙げられる。ターゲットには国内の約800の大病院を想定し、特に大学病院を中心とする特定機能病院からの普及を見込んでいる。小東氏は、大学病院から「構造化データに対する強いニーズを受けているから」と補足した。

道 小方麻貴氏

 道では、高齢者の認知症やうつ病の予防を目的としたコラボレーション型の自分史作成サービス「Homeroom+」を開発している。Homeroom+は、自分史を自分一人で作るのではなく、「オンラインで他の人とつながりながら共同作業で作成する」(同社 小方麻貴氏)という点が大きな特徴。グループになった人たちとフラットかつ自然に親しくなれるような仕組みを用意することで、アウトプットよりも「その過程を楽しむ」ことを重視している。

 小方氏によれば、Homeroom+での自分史作成には「昔のことを思い出す“回想”がともなう」とともに、自分の記憶を言葉で他の人に表現する必要があるため、脳の活性化に加えて「認知機能の低下防止や気分の安定につながる」と解説する。さらに、ワークショップを終えた人にファシリテーターとして運営を支えてもらうことを想定。継続的な社会参加を促すことで、「やりがい」を感じてもらいたいと考えている。

 将来的には、高齢者にもっと直感的に使ってもらうため、最新のAI技術を導入して音声認識や回答支援機能などを追加していく予定。さらに、身体が不自由な人や障がいを持っている人にも利用してもらえるような「ユニバーサルデザインも目指していく」(小方氏)。

アイ・ブレインサイエンス

アイ・ブレインサイエンス 代表取締役社長 髙村健太郎氏

 認知機能の初期検査では、短い診療時間の中で「10~15分程度を要する検査時間が取れない」という課題があり、それが早期診断を妨げる最大のボトルネックとなっている。そこでアイ・ブレインサイエンスは、その課題を解決する手段として「アイトラッキング式認知機能評価法」の開発・実用化を進めている。

 この評価法では、まず被験者がスマート端末の前に座り、画面に表示される設問に答えていく。ただし、スマート端末の顔認識システム(RGBカメラ+深度センサー)を用いた視線追跡技術で被験者の視線を記録できるため、被験者は「画面に触れたり話したりする必要はなく、画面を見ているだけで設問に回答できる」(同社 代表取締役社長 髙村健太郎氏)。さらに、正解の部分を見ている時間を計測し、定量化することで評価している。

 導入面での注意点として、髙村氏は「従来法との連続性」を挙げる。一気に検査のAI化などを進めても「診療で受け入れられない可能性がある」からだ。その点、今回の評価法で用いられているソフトウエアは、従来の認知症検査である「MMSE」と高い相関性を持っており、アナログの医療と将来的なAIによる診断予測の中間に位置する手法であることがポイントとなる。

Contrea

Contrea 代表取締役 川端一広氏

 Contreaは、医師と患者が対話に注力するためのクラウド型IC支援システム「MediOS」を開発している。医師にとって、手術前などに行う患者やその家族への説明対応は大きな負荷となっている。そこで、これまでは医師がすべて口頭で説明していた内容の一部を動画でサポートし、医師の説明時間を短縮するとともに「患者との信頼関係を築くうえで重要な個別説明などに注力してもらう」(同社 代表取締役 川端一広氏)ことを目的としたサービスとなる。

 実際の利用では、医師はまずIC(インフォームドコンセント)をする前に病気や手術方法に応じた動画を組み合わせることで、患者に合わせたセミオーダーの動画を発行できる。発行までには「最短で6クリック、30秒程度で操作は完了する」(川端氏)というシンプルさも大きな特徴だ。患者は、医師から発行された動画を、スマホやパソコンなどを使っていつでも好きな場所で繰り返し視聴できる。医師に質問できる機能も備える。

 今後の展開として川添氏は、MediOSを「医療者と患者をつなぐプラットフォーム」として構築していくことを想定。現場のさらなる効率化をはかるとともに、「患者のエンゲージメントも高められるようなシステムにアップデートしていきたい」と考えている。

ライトタッチテクノロジー

ライトタッチテクノロジー 代表取締役 山川考一氏

 日々血糖測定を行う習慣がない境界型糖尿病患者が生活のなかで疾病の予防、早期発見を行い、重症化を予防できるようにする。これが、ライトタッチテクノロジーが開発する糖尿病重症化予防のための非侵襲血糖値センサーの狙いだ。センサーを含むサービスの事業化を進め、そこから得られた血糖データをクラウド上で管理するネットワークシステムの構築も想定。これにより「糖尿病患者の健康状態に基づいた医師の管理支援」(同社 代表取締役 山川考一氏)を実現させていく。

 社会的な意義としては、このような取り組みによって生活習慣病や循環器病を防ぐことで、「国民の健康寿命の延伸」や「医療・介護費の負担軽減」を目指す。将来的には、予備軍や健常者に対しても日常的な予防サービスを展開することで、「新しい疾病予防・管理の社会基盤を構築することにも貢献したい」と山川氏は考える。

 開発を目指すセンサー製品は「非侵襲」「医療廃棄物なし」「想定時間はわずか5秒」「クラウド上で医師とデータ共有」といった特徴を持つ。これらの特徴を総合的に生かすことで、既存マーケットへの置き換えでなく、境界型糖尿病患者への新たなサービスとして提供していく。

iMed Technologies

iMed Technologies CEO 河野健一氏

 iMed Technologiesは、16年間も脳血管内手術を手掛けている同社 CEOの河野健一氏を中心に、Deep Learningを活用して脳血管内手術の安全性を向上させる手術支援AIの開発に取り組んでいる。複数の場所を同時に確認できる“AIの強み”と、1点に集中できる“人間の強み”をかけ合わせれば「より安全な手術ができるはず」という考えが、発想の源にある。

 現状ではすでに、複数病院と提携することでAIの学習に必要な100万枚の画像を得ているほか、資金調達も累計で約2.5億円に到達。システムとしても、現場でリアルタイムに動くプロトタイプを実現できている。さらに、その技術を守るためのPCT特許も出願済みとなる。競争優位性としては「100万枚の画像」や「強力なチーム」とともに「現場と連携してアジャイル的に開発できる」という点を挙げた。

 中期ロードマップとしては、2022年の発売を目指してプロダクトの開発と薬事を進めている。脳血管内手術の市場は世界で8500億円規模になり、10~20%で成長している。河野氏はそこに対して「新しい市場を作っていきたい」と意気込む。長期的にはアメリカやヨーロッパへの海外展開、また循環器やカテーテル領域での横展開を視野に入れる。

レナートサイエンス

レナートサイエンス 代表取締役 長谷川雪憲氏

 「乳房再建・豊胸手術を考える女性に幸せな人生を送ってもらいたい」という理念を掲げるレナートサイエンス。現状の乳房再建法の技術的課題に対する解決策として、ポリL乳酸(PLLA)メッシュの中にコラーゲンスポンジを入れた人工脂肪を活用する乳房再建法の実現に取り組んでいる。

 今回利用される人工脂肪は、「自家組織犠牲がない」「自然な形態、触感がある」というメリットがあるほか、グンゼが同素材を用いたコラーゲン使用人工皮膚の承認を取っていることから「安全性も高い」と同社 代表取締役の長谷川雪憲氏は考える。また、技術シーズのコンセプトとして「人工脂肪を埋入(移植)するだけで乳房を再生」を提示。流れとしては、STEP1「人工脂肪を埋入することで形状的に乳房を再建する」→STEP2「人工脂肪を足場材料として自家の脂肪が形成される」→STEP3「人工脂肪は生体内で吸収され、自家脂肪に置き換わる」という段階を想定する。

 この技術コンセプトに基づく小・中型動物実験はすでに成功しており、現在は大型動物実験(ミニブタへの人工脂肪埋入)を滋賀医大と実施中。事業化までのスケジュールは、2025年に医療機器販売業の取得、2027年に薬機法Class IVの取得、2028年に上市を予定する。

Yuimedi

Yuimedi CEO グライムス英美里氏

 近年、医療機関では医療情報のオープンデータ化を目指す動きがあるが、データクレンジング人材の不足が課題となっている。そこでYuimediは、ワンクリックで医療データをクレンジングするソフトウエア「Yuicleaner」を開発。データベース化や匿名化、クレンジングなどの自動化を実現するとともに、ビジネスマッチングの仲介役として企業と医療機関をつなげるサービスの提供も視野に入れる。

 Yuicleanerは、医療データに特化したノーコードのデータクレンジングソフトウエアである。同社 CEOのグライムス英美里氏はメリットとして、個人のローカルパソコンで利用できるため「大規模なシステムの導入が不要」、インターネット接続も不要となるため「外部への情報漏洩のリスクを抑えられる」といった点を挙げる。また、AIによって医療データをワンクリックで簡単に標準化できるほか、エラー・バイアスの可視化や匿名化処理のサポートなどにも対応する。

 グライムス氏は、最終的なユースケースとして「治験のオペレーション改善」を想定。さらに、「アプリ開発への医療データ連携」にも注目している。また、自社のスタンスとして「レジストリを持つのではなく、データ標準化基盤としての橋渡し役の役割を果たす」と語った。

FFC

FFC 代表取締役社長兼CEO 畑中麻里氏

 オーラルフレイルには「乳幼児期・学齢期の健全な口腔機能の発達」と「加齢による口腔機能の低下予防と改善」が重要と考えるFFC。口力(くちりょく)の向上をはかるプログラム「クチトレ」を開発している。

 クチトレでは、子どもから高齢者までが使える専用トレーニング器具「クチトレプラス」を使用したエクササイズを、1日4回実施する。エクササイズではクチトレプラスを口腔前庭に装着し、口を閉じて3分静止した状態を保つ。これにより「通常の生活では鍛えられない口周辺の筋肉をトレーニングできる」(同社 代表取締役社長兼CEO 畑中麻里氏)ため、食事や会話、呼吸、睡眠、免疫力などの向上が期待される。

 後期高齢者による6カ月間の実証実験では、「オーラルフレイルの該当項目が大幅に減少」や「口腔機能低下症の有病率が50%減少」という結果が得られた。また、小中学校の特別支援学級を対象とした8カ月間の実証実験では「コミュニケーションや社会性、日常生活のスキルが優位に改善する」ことが示唆された。

 そのほか、クチトレ普及を目的とする指導者育成の資格制度を事業化。資格を取得した指導者を活用し、自治体や学校などに向けた新たなビジネス展開も計画する。

ORANGE kitchen

ORANGE kitchen 若子みな美氏

 ORANGE kitchenは、国民保険の被保険者を対象とした寄り添い型の重症化予防プログラム「しおみる」を提供している。これによって人工透析を予防し、医療費の適正化や患者のQOL向上、健康寿命の低下予防を目指す。

 同社の若子みな美氏は、現状の保健指導の課題として「被保険者がプログラムを受講しない」「参加が目的となり、行動や生活が変わらない」「改善した行動や生活が、その後も維持できているかが見えない」という3点を指摘。しおみるでは、これらの課題の解決策を事業に盛り込むとともに、行動変容ステージモデルに則って完全オンラインでサービスを提供している。

 特徴としては「ナッジ理論を活用した郵送案内」「専属の管理栄養士が選べる」「オンラインで効率的な高頻度介入」「摂取食塩量測定機器でモニタリング」などが挙げられる。ビジネスモデルは地方自治体の保険事業の一環として契約する形式で、ユーザーは無料で利用できる。ここで得られたデータはユーザーを通じてかかりつけ医に共有され、治療効率や満足度の向上につなげてもらう。

 社会的なインパクトとしては、年間医療費を最大で約3500億円削減できる可能性があると予測。年間の市場規模は、約100億~1000億円を見込む。

TXP Medical

TXP Medical 代表取締役 園生智弘氏

 これまで電話や手書きによる情報伝達を行ってきた救急医療現場に対して、DXの推進を実現するシステム「NEXT Stage ER」を提供するTXP Medical。NEXT Stage ERで提供される救急隊向けのスマホアプリには「2つの技術的な柱がある」(同社 代表取締役 園生智弘氏)。

 1つは医学用語や騒音に強い「音声コマンド入力」で、長い文章の入力をたった2回のクリックと1回の音声入力で実現。95%の精度を保証し、約8割の時間削減につながっている。もう1つは、OCR技術を用いた「画像解析&情報抽出」。従来では10~20クリックを必要とした入力作業を、1回の写真撮影で代替する。精度保証は98%で、約9割の時間削減が可能となる。

 今後の目指す姿として、園生氏は基幹プロダクトである「NEXT Stage ER」を軸に、まずは病院と社会の接点である救急分野を中心とする「現場のデジタル化」を支援する。さらにその先として、これまでは分断されていた地域全体の急性期医療データを集結させ、「より良い医療提供体制の実現」を目指す。

 マネタイズプランについては、NEXT Stage ERと医療データを用いた「製薬企業向けのビジネスをすでに複数展開している」(園生氏)。一例として、急性期における治験のリクルート支援を紹介した。

Liquid Mine

Liquid Mine 代表取締役社長 岸本倫和氏

 白血病は再発防止が重要だが、再発モニタリング検査には「約30%の患者にしか適用できない」「負担の大きい骨髄検査を受ける必要がある」という課題がある。この課題を解決すべく、Liquid Mineは「血液による再発モニタリング検査」を実現するサービスの実用化を進めている。

 サービスは「全ゲノム解析」と「再発モニタリング検査」の2種類がある。まずは「全ゲノム解析」で白血病の原因遺伝子変異を正確に同定し、その結果を患者と医師に報告する。さらに、全ゲノム解析でモニタリングする原因遺伝子変異を決定した後、患者は「再発モニタリング検査」へと進む。従来の再発モニタリング検査では何度も骨髄検査を受ける必要があったが、Liquid Mineの技術が社会実装されれば「血液検査でモニタリングが可能になる」とともに「96%の患者に適応できる」と、同社 代表取締役社長の岸本倫和氏はそのメリットを説明する。

 将来的には保険償還を目指しており、全ゲノム解析は70万円、検査薬の作成は1変異10万円、再発モニタリング検査は1回4万円で、厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)と協議していく考えだ。また、現在のターゲットは白血病だが、最終的には「全がん種に広げて市場を獲得していく」(岸本氏)。

キッズウェル・バイオ

キッズウェル・バイオ 小林みどり氏

 再生・細胞医療の開発・製品化には「同種原料の国内調達が難しい」「参入障壁がある」「製品化後の安定供給が不安」という3つの課題がある。これを解決すべく、キッズウェル・バイオは商業利用可能な乳歯をガイダンスに沿って国内入手し、その乳歯から取得した再生・細胞医療開発の出発原料細胞を提供するサービス「S-Quatre」を開始した。

 S-Quatreではキッズウェル・バイオが中核となり、ドナー募集機関、医療機関、製造保管企業などと業務連携した体制を構築。契約企業や参入を目指す事業者に「信頼性の高い中間製品をワンストップで提供する」(同社 小林みどり氏)。

 ドナー募集では、ボランティアネットワークを活用し、原料の国内供給と製品化後の安定供給を実現。医療機関では、医師と歯科医師が健康状態を確認したドナーから乳歯と付帯情報を提供してもらい、安全性の高い原料を入手する。さらに入手した乳歯は、薬機法で定める製造施設が培養・保管・管理することで品質を確保する。

 S-Quatreで既存の課題を解決されれば、研究がさらに加速して「治療の新たな選択肢を創出できる」と小林氏は期待する。安定した治療提供で患者の社会復帰を支援し、患者や家族のQOL改善に寄与していく。

HIROTSUバイオサイエンス

HIROTSUバイオサイエンス 中楯健氏

 線虫には犬にも匹敵する嗅覚があり、「健常者の尿からは離れ、がん患者の尿には近づく」という特殊な習性がある。HIROTSUバイオサイエンスは、この線虫の能力を活用し、尿一滴でがんのリスクを検査できる新型がん検査「N-NOSE」を生み出した。

 従来のがん検査には「全身網羅的ではない」「費用が高い」「早期がんの感度が低い」といった課題があった。しかし、N-NOSEは尿で検査できるため「簡便」「苦痛がない」というメリットがある。さらに、主要マーカーと比較しても「高精度」で、早期がんに反応するため「早期発見」につなげられると説明する。1回の検査費用は9800円と「安価」であることも特徴だ。

 これらの利点から、N-NOSEは「がん検査の一次スクリーニングに適している」と同社の中楯健氏は語る。そこで同社は、「N-NOSEで全身網羅的にがんのリスクを調べる」→「結果が“高リスク”と出た場合は、従来のがん検査でがんの有無を調べる」という新しいがん検診プロセスを提唱している。

 現状では「がん種は特定できない」ことから、それを可能にする研究を進めている。これを実現できれば、N-NOSEの検査領域が広がるだけでなく「医療業界にも大きなインパクトを与える」と中楯氏は見る。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連載の紹介

日経クロスヘルスEXPO 2021 リポート
日本のヘルスケア変革を支援するイベント「日経クロスヘルスEXPO 2021」(会期:2021年10月11日~10月22日、オンライン開催)。日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション、日経バイオテク、日経デジタルヘルス、Beyond Healthの各編集部が総力を挙げて情報を発信します。

この記事を読んでいる人におすすめ