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日経クロスヘルスEXPO2021より
多職種の情報連携で在宅医療の質向上へ
状況と相手に合わせ使いやすいツールの選択が導入のカギ

 団塊世代が75歳以上となる2025年までに、在宅医療を受ける患者は現状に加え30万人以上増えることが見込まれている。急拡大する在宅医療の需要に対応するには、多職種での連携が不可欠となる。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、多職種で直接顔を合わせて集まる機会は減少したが、一方で増えているのが多職種による情報連携ツールの活用だ。

本セッションの登壇者。左から竹田氏、伊藤氏、小黒氏、開田氏

 10月21日に開催された「日経クロスヘルスEXPO 2021」(主催:日経BP)のパネルディスカッション「一歩先行く医療・介護・薬局の情報連携」では、医療、薬局、介護分野のパネリストが登壇。各法人の取り組みを報告し、モデレーターの病院マーケティングサミットJAPAN代表理事の竹田陽介氏と共に在宅患者の医療・介護提供における情報共有のポイントについて議論を交わした。

連携先や緊急度に応じて情報ツールを使い分け

 最初に登壇したのは、医師が1人で往診する診療体制で数多く在宅診療を行う医療法人みらい・みらい在宅クリニック港南(横浜市港南区)院長の開田脩平氏。同法人では、NTTエレクトロニクステクノ(株)(横浜市神奈川区)の在宅医療対応電子カルテ「モバカルネット」、エンブレース(株)(東京都千代田区)の「メディカルケアステーション」を導入。さらに、連携する相手や緊急度に応じて情報連携ツールのほか、患者宅にノートを置いて各職種が記入して情報共有する「連絡ノート」、ファクス、電話を使い分けていることを報告した。

 法人内の医師や事務職員、連携頻度の高い近隣の訪問看護ステーションとはモバカルネットを使い、電子カルテの内容を共有する感覚で、互いに実施した処置、気になる症状や患者・家族からの伝言などを入力。薬剤変更など重要な伝達項目はカルテを開くと最初に表示されるような設定をするなどをして、迅速で無駄のない情報共有をしている。ただし、緊急時は電話やファクスを活用しているという(図)。

図 情報連携ツールの使い分け(開田氏資料)
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 ケアマネジャーや連携する介護職などとの情報共有にはメディカルケアステーションを使い、チャット形式で各職種が気になった情報を書き込み、患者の治療・ケアに関する情報を共有できる体制を構築している。連携ツールを導入していない連携先やヘルパーなどとの情報共有には、昔ながらの連絡ノートを利用することもあるという。

 連携ツールを用いた情報連携について開田氏は、「場所や時間を選ばず多職種で正確に情報を共有できるメリットがある」と説明。一方で能動的にツールを見に行く必要があるため、迅速な対応が必要な場合は電話での連絡が有用なこと、同じツールの導入が必要なため、必ずしも全ての職種・連携先と活用できるわけではない点などが課題であると指摘した。

 次に登壇したのは、薬局を3店舗、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションを運営する(株)ファーマ・プラス(群馬県高崎市)専務取締役の小黒佳代子氏。同社が使用するのは、メディカルケアステーションだ。無料な上にパソコンやスマートフォンなど様々なデバイスで内容を確認・書き込める点が導入の決め手になった。

 小黒氏が薬剤師として在宅医療への介入に取り組み始めた当初は、「医師と訪問看護師、薬剤師で情報を共有することが難しく、自分が知らない間に担当の在宅患者が発熱して抗菌薬が処方されていたり、次の訪問予定日までの間に患者が入院していたこともあった。患者の状態を日ごろからしっかり把握した上で、フォローしたいと考えていた」とSNSによる情報共有の導入の経緯を説明した。

 情報を共有するには、連携先同士が同じツールを用いる必要がある。そこで小黒氏は自ら、連携先の医師や訪問看護ステーションに出向いて導入操作を手伝い、普及を図った。「情報共有の中に薬剤師が自ら加わったことで、看護師の情報などから生活環境にあわせて医師に処方提案したり、医師の代わりに薬剤の変更や頓服の使用方法など説明できるようになった。結果として、在宅医療の質向上に寄与できるようになった」と小黒氏は導入効果を話した。

 介護事業者の(株)リエイ(千葉県浦安市)快護事業部事業部長の伊藤辰郎氏は、法人内での情報共有の取り組みを紹介した。入居施設では、記録のペーパーレス化のために(株)カナミックネットワーク(東京都渋谷区)のタブレットによる介護記録システム「ケアウォッチャー」と平和テクノシステム(株)(静岡県沼津市)の生活状態見守りナースコールを連動させ、血圧や体温などの測定結果、ナースコール対応時の記録を自動入力する仕組みを構築。受診時や様々な介助時の患者の様子をデータベースとして蓄積できるようにしたことで、職員間の情報共有や介護記録への転記などの事務作業の短縮を実現した。さらに館内の全職員がインカムを装着することで、互いに連絡しやすい環境を作り、ケアの提供に滞りが起きないように職員同士でサポートできる体制を築いたという。

 一方、通所介護の現場などで情報連携が進みにくい現状も報告した。制度上はビデオ電話を活用してサービス担当者会議などが実施できるようになったが、サービス提供の合間に実施してよいかなど、細かな点で行政の担当者で見解が異なり実施が難しいのだという。加えて、通信環境がまちまちな利用者の自宅で、リモートでの担当者会議を開催するには介護職員が出向く必要が生じ、人員を確保することが難しい点などを課題として挙げた。

患者の治療・ケアの目指す先を見据え職種の壁を超えた連携を

 これらの発表を踏まえ、パネルディスカッションでは竹田氏の司会の下で、SNSを用いた情報連携を広げるための現場での課題・解決策について、対面とオンラインをどのように使い分けるか――などについて、意見が交わされた。

 ツールの選択・使い分けについては、「ツールの選択は連携先と話し合い、使いやすそうなツールを選択するのが望ましい。使い始めて導入のメリットが伝われば自然と普及は進む。ただし、SNSだけでのコミュニケーションでは、ちょっとした誤解が生じることがある。ときに患者の目標設定を話し合い、目指す先を共有しておく必要がある」(小黒氏)、「オンラインは便利で普及を進める必要があるが、対面での会話で生じる空気感が大切なときもある。特にシリアスな状況下ではオンラインでのやり取りのみではなく、対面での会話も必要な場合も多い。患者の病態、共有する情報の内容に応じての使い分けが必要」(伊藤氏)といった意見が相次いだ。また、「どんなツールにも一長一短がある。1つのプラットフォームで連携・記録ができるツールが今後できることを期待したい」と開田氏は語った。

 これらの意見を受け、竹田氏は「患者の背景、病状経過のストーリーなどを患者に関わる医療者が把握し、当事者意識を持って患者の目指す先を見据える姿勢が必要になる。特に在宅医療の現場では、職種の壁を越えて1つのチームとして患者や家族からの情報を共有する考え方が、今後一層求められるようになるだろう」と述べた。

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連載の紹介

日経クロスヘルスEXPO 2021 リポート
日本のヘルスケア変革を支援するイベント「日経クロスヘルスEXPO 2021」(会期:2021年10月11日~10月22日、オンライン開催)。日経メディカル、日経ヘルスケア、日経ドラッグインフォメーション、日経バイオテク、日経デジタルヘルス、Beyond Healthの各編集部が総力を挙げて情報を発信します。

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