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「クロスヘルスEXPO 2019」リポート
2040年に向け医療・介護の生産性向上と地域で集住求める取り組みを
迫る「85歳以上高齢者の急増」と「生産年齢人口の急減」

 日本の社会保障政策は2040年に向けて2つの大きな問題「85歳以上高齢者の急増」と「生産年齢人口の急減」に直面する。医療提供体制を維持するには、医療・介護領域の生産性を向上させ、人口構造・住民に寄り添った地域づくりを進める必要がある――。10月10日、東京ビッグサイトで開催されている「クロスヘルスEXPO 2019」(主催:日経BP、10月9~11日)のパネルディスカッションで、モデレータの埼玉県立大学理事長の田中滋氏と4人のパネリストから、今後の社会保障政策の進め方について、こうした意見が示された。

モデレータを務めた埼玉県立大学理事長の田中滋氏

 これまで、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となる2025年に向け、地域包括ケアシステムの構築が進められてきた。ある程度の道筋が見えてきている今、政策の焦点は85歳以上人口が最大になる2040年の医療・介護提供体制の再構築へと移っている。

 そこで、同セッションでは厚生労働省政策統括官の伊原和人氏が「2040年に向けた医療・介護の需給両面からの改革」をテーマに、生産年齢人口が減少する中で、医療・介護の需要をどう賄い、どう供給を維持するかを解説。続いて日本病院会長の相澤孝夫氏が「急性期病院が向かうべき方向性」を示し、全日本病院協会副会長の神野正博氏が「地域医療を担う医療法人が取るべき戦略」を提言。さらに日本医師会常任理事の江澤和彦氏が「尊厳ある看取りの在り方と介護医療院の行方」について説明した。

厚生労働省政策統括官の伊原和人氏

 伊原氏は、「2018年度から2040年度にかけて入院医療の需要は微増するが、外来医療の需要は大きく減り、85歳以上人口のピークに沿って介護需要が大幅に増加する」と指摘。この変化に対応するため、国は(1)70歳までの就業機会を確保するなど多様な就労・社会参加に向けた環境整備、(2)健康寿命の延伸、(3)医療・福祉サービスの改革による生産性の向上、(4)給付と負担の見直しによる社会保障の持続可能性の確保――を進めていることを説明した。

日本病院会長の相澤孝夫氏

 日本病院会長の相澤氏も、伊原氏の発表を受けてすでに毎年受療率が減ってきていることを指摘。そして、入院患者の傾向として重症の患者が減り、軽症で高齢な患者が増えていることから、「人口構造の変化に伴い、地域で同じような医療を提供し続けていると患者が減り、経営は成り立たなくなる。地域の各病院は役割分担と協働で地域住民を支える視点が必要」と発言した。

 その上で、地域住民を支える医療提供体制の構築に向けて、地域の病院を統廃合し基幹施設に一極集中をさせる改革ではなく、各医療機関が地域の中での役割を明確にし、高度急性期病院は軽度急性期の患者は診ない、地域密着型病院は高度急性期医療は担わないといった判断をすることで、「地域での役割分担を進め、組織としての生産性を高める取り組みが要る」と語った。

全日本病院協会副会長の神野正博氏

 全日本病院協会副会長の神野氏は、地域密着型の医療機関が医療・介護領域の労働生産性を高めるには、「医療・介護に加えて生活の視点を備え、生活を様々な場で支援することが求められている」と説明。法人内で提供する医療・介護サービスの質とともに、地域全体の質を高めるよう、地元の企業と組み生活をトータルで支援する新規事業の提供など法人としての守備範囲を再構築する視点の重要性を述べた。

日本医師会常任理事の江澤和彦氏

 さらに日本医師会常任理事の江澤氏は、看取り期の需要が増えることについて、「最期の瞬間まで、患者やその家族の価値観に寄り添い、真摯に向き合い支えるかが課題」とコメント。介護医療院は住まいと生活を両方支える新たな形態であり、入所者が自分自身で意思決定できる環境を築き、「『尊厳の保証』をいかに実行するかが大切」と説いた。

 その後に開催されたパネルディスカッションでは、(1)今後予測される「医療・介護人材の減少」にどう取り組むべきか、(2)人口減少地域での医療・介護提供体制のあり方とは――の2点について議論された。

 各パネリストからは、「医療・介護人材の減少に対しては、生産性を上げ、職員の給与と社会的地位を高めることで、誇りある勤務環境にすることが必須」といった意見が複数示された。このほか、「地域の中で住民が孤立しないよう人と交わる機会を作る介護需要を減らす取り組みも不可欠」とする意見も聞かれた。

 また、人口減少地域での対応については、過疎化が進む地域ではコンパクトシティの考えを浸透させ、「医療・介護サービスを求める住民には高齢者住宅などへの集住を求めていくしかない」とする意見が複数寄せられた。

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連載の紹介

「クロスヘルスEXPO 2019」リポート
医療・介護関係者と周辺産業の交流によるヘルスケア産業の革新を目的に、日経BPが開催する新イベント「クロスヘルスEXPO 2019」。ヘルスケア分野の行政動向や、様々な製品・サービスに関する最新情報を得られる同EXPOの注目セッションをリポートします。

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