日経BPは2019年10月9~11日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で「クロスヘルスEXPO 2019」を開催する。このEXPOは、医療・介護・健康といったヘルスケア分野の行政動向や、様々な製品・サービスに関する最新情報を得られる場だ。

 本連載ではEXPOの見どころや、セミナーに登壇するキーパーソンからのメッセージを紹介していく。今回は2021年度に予定される介護保険制度改正と介護報酬改定について、その司令塔を務める厚生労働省老人保健課長の眞鍋馨氏のインタビューをお届けする。


 既に今年の2月から、社会保障審議会の介護保険部会では制度改正に関する議論が進んでいます。そこでは介護予防・健康づくりの推進、保険者機能の強化、地域包括ケアシステムの推進、認知症「共生」「予防」の推進、そして持続可能な制度の再構築・介護現場の革新─について検討してきました。

 「クロスヘルスEXPO」の開催までにあと3~4回は議論ができる見込みなので、10月10日に予定されている私の講演では、2021年度の次期介護保険制度改正について、ある程度は具体的なお話ができるのではないかと思います。

 2025年以降の「現役世代人口の急減」を見据えると、介護保険制度の持続可能性は最大の課題です。介護の担い手の確保と、それに資する生産性の向上。これが一番大事なところでしょう。介護職員の処遇改善を進めているのも、こうした考えからです。

 また、例えば介護ロボットの利用推進やICT(情報通信技術)の活用によって省力化や情報の共有を進め、介護職員が本来の介護に集中できる環境を作っていくことも重要です。そこに介護報酬をどう付けていくかはこれからの議論になりますが、重要な視点の一つだと思います。

 それに加えて介護報酬改定を巡っては、介護サービスによるADL(日常生活動作)の向上を評価する、いわゆるアウトカム評価を推進していこうという流れがあります。2018年度改定で導入された、通所介護の「ADL維持等加算」のような評価の拡大が検討されることになるでしょう。

介護に“卒業”があってもいい

 ただアウトカム評価に関しては、現場の方から「要介護度を改善すると介護報酬が下がってしまう」という声をよく聞きます。だから「改善に対するインセンティブを付けるべきだ」ということなのでしょうが、なかなか難しい部分があると感じています。

 私自身は、要介護1や2ぐらいの人は、介護サービスを“卒業”させることに目標を置いてもいいのではないかと思っています。ADLの向上によって介護サービスの利用者をどんどん“卒業”させ、その分、新しい人を受け入れるスタイルで運営する介護事業者が出てきてほしい。そもそも介護保険制度は、その人が有する能力に応じて自立した生活を営めるようにすることが理念なのですから。

 また介護の分野は、公的保険だけでなく、インフォーマルなサービスも大事です。例えば、要介護1で身体機能があまり低下してなくても、風呂掃除ができないからデイサービスの入浴を利用したいという人はいるわけです。そういったニーズにきめ細かく対応できるのは、やはり民間の発想でありインフォーマルサービスです。

 さらに、先ほど言ったように、新たなテクノロジーを介護サービスに取り入れていくことも不可欠です。2040年や2050年になっても介護サービスを持続可能な形で提供していくためには、できることは全部やらなきゃいけないと考えています。公的保険だけでなく、インフォーマルなサービスやテクノロジーも総動員しなければ乗り越えられません。

 今回の「クロスヘルスEXPO」をきっかけに、介護の現場の人と周辺産業の人とがつながることで新たな発想が生まれて良い製品やサービスが実現するなら、ぜひそれを広げていってほしいと思います。(談)

2019年10月10日(木) 12:20-13:20

2021年度介護保険制度改正と介護報酬改定の方向性

2021年度の介護保険制度改正では、これまでの地域包括ケアシステムの深化・推進に取り組みつつ、2025年以降の「現役世代人口の急減」という新たな重要課題への対応を図っていく必要がある。介護保険部会で検討が進む次期制度改正に向けた議論を概観した上で、2021年度介護報酬改定の方向性について解説する。

厚生労働省老健局老人保健課長
眞鍋 馨氏

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