日経BPは2019年10月9~11日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で「クロスヘルスEXPO 2019」を開催する。このEXPOは、医療・介護・健康といったヘルスケア分野の行政動向や、様々な製品・サービスに関する最新情報を得られる場だ。

 本連載ではEXPOの見どころや、セミナーに登壇するキーパーソンからのメッセージを紹介していく。今回はヘルスケア分野における産業育成の立場から、「次世代ヘルスケア産業の創出に向けた政策支援について」と題する講演(10月9日・水)に登壇する、経済産業省ヘルスケア産業課長の西川和見氏のインタビューをお届けする。


 超高齢社会を迎える中で、ヘルスケア分野におけるソリューションは、従来の20世紀型から大きく変わってきています。予防から診断、治療、生活支援までの全人生的な健康医療のソリューションが今、求められています。

 従来のヘルスケア産業は、病医院や介護事業所に加え、製薬企業や医療機器メーカーといった企業が中核を占めてきました。21世紀も、そこはコアな部分として残るでしょうが、それだけでなく予防や予後の生活支援を担う産業も必要になってきます。製薬企業や医療機器メーカーなどに限らない幅広い生活産業の人たちが、その役割を担っていく必要があります。

 感染症やけがなどの急性疾患に代わり、今後は慢性的な生活習慣病や、認知症のような老化に伴う疾患が、予防や生活支援のメーンターゲットになってきます。これは日本だけの話ではなく世界的な傾向で、糖尿病と認知症だけで、それぞれが1兆ドルぐらいの社会コストになると言われています。それを解決することが社会貢献であり、産業的な視点で言えばビジネスチャンスにもなると考えています。

品質を確保しながら保険外サービスの拡大を

 日本人の健康・医療が公的保険制度に支えられていることに否定の余地はありません。ただ、今後の予防や生活支援のサービスを考える上では、公的保険では賄えない保険外のサービスを、品質を確保しながらしっかり広げていくことが重要です。

 従来は、公的保険のサービスと保険外のサービスが交わることはありませんでした。というよりは、互いに距離を取っていたのが実態だと思います。でも、認知症や糖尿病などの予防や生活支援を手掛けるためには、両者が交わることが不可欠です。そのためには企業などが提供する保険外サービスが、医療や介護の専門家に評価される質を担保したものでなければ、結局は長続きしないと思います。

 質の確保に向けて経済産業省では、市場経済の力を適切に活用して、品質の良いものが残り、品質の悪いものが淘汰される形を作っていきたいと思っています。そのため、業界団体が守るべき基準や規範、医学常識を「ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方」としてまとめ、業界に順守をお願いしているところです。

 一方、ヘルスケア産業といえども市場経済の範疇にあるものですから、適切な流通構造を作ることも必要だと考えています。これまでの公的保険外のヘルスケアサービスは新しい領域ですから、あまり市場経済が発達しておらずB to C市場が中心でした。しかし、ヘルスケア分野は情報の非対称性が非常に大きいので、適切な公的保険外サービスを選択して、消費者に信頼をもって届けていく仲介者の役割が非常に大事になってきます。経産省としては、そこを応援していきます。

 こうした取り組みを経産省が中心になり、厚生労働省や関係省庁と連携してながら進めているところです。「クロスヘルスEXPO」が開催される10月ごろになれば、先に挙げた「ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方」に沿って、民間主導の品質ガイドラインや第三者認証制度が出来上がっているといいなと考えています。

従来なかった結び付きが生むイノベーション

 超高齢社会の中で新しいヘルスケアの提供をしていくためには、やはりイノベーションが不可欠です。イノベーションとは、新しいつながりや新しい交わりから生まれるものです。

 従来の医療や介護、健康といった観点で見れば、医師と製薬会社、介護事業所と福祉機器メーカーなどの結び付きは非常に強いものがあります。それ自体は悪いことではありませんが、これまで関係がなかった人と結び付くことによって、新しいイノベーションを起こしていただくことが、これからは必要です。例えば、臨床現場の医師がゲーム産業の若手技術者と手を組んだり、介護事業者がAI技術者の知見を業務に取り入れたり、といった新しいタイプの結び付きです。

 今回の「クロスヘルスEXPO」は、まさにそのための取り組みであり、我々としても非常にありがたいと考えています。こういった取り組みが政府主導ではなく、民間のメディアや様々な団体が中心になってたくさん出てくることが重要だろうと思っています。

 なお、経産省では4年前から「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト」というイベントを実施しています。これはコンテストをきっかけに、新たにヘルスケア分野に混じっていただく人や企業を増やそうという試みです。その二次審査が「クロスヘルスEXPO」の会場で公開されますので、ぜひ足を運んでいただければ、と思います。

2019年10月9日(水) 10:00-11:40

次世代ヘルスケア産業の創出に向けた政策支援について

他に類のない超高齢社会を迎えた日本。難局を乗り越えるには、医療・介護従事者やヘルスケア産業従事者らが協力し合って、新たなヘルスケアサービスを創出していくことが欠かせない。現状の課題を明らかにした上で、次世代ヘルスケア産業の未来に向けて経済産業省が取り組む施策を紹介する。

経済産業省ヘルスケア産業課長
西川 和見氏

◆お申し込みはこちら