日経メディカルのロゴ画像

第49回
「ゴホン!」といえば龍角散、「コンコンコン!」ならコデインか

2021/01/08
村川 裕二(村川内科クリニック)

コデインの20mg錠と5mg錠

 20mg錠は麻薬。
 5mgは麻薬ではない。
 道路の向かいにある薬局から確認の電話があって最近知りました。
 コデイン20mg錠を1日3個は麻薬施用者免許が必要。
 5mg錠1日12錠なら麻薬施用者免許なしで処方できる。
 コデインをボチボチ処方している人には常識らしい。

オピオイドは麻薬か

 コデインは「いつでもオピオイド」ですが、「いつでも麻薬」ではありませんでした。
 「日本ペインクリニック学会」のウェブサイトを見たら……。
 「『麻薬』という用語は社会的用語であり、薬理学的あるいは分子生物学的用語である『オピオイド』とは意味が異なる」という説明がありました。
 さらに、「『麻薬及び向精神薬取締法』で『麻薬』に指定されている薬剤が麻薬であり、オピオイド受容体とは関係しないものもある」そうです。

なぜジヒドロコデインか

 約半数の総合感冒薬で、咳止め成分はジヒドロコデイン。
 誰でもどこでも買える→「ジヒドロコデインはマイルド」だと思っていました。
 ところが、ジヒドロコデインの鎮咳作用は「コデインの2倍」。
 コデインでなくジヒドロコデインなのは、「便秘の副作用少なめにして、咳止め効果アップ」という意図なのでしょうか。真偽は知りませぬ。

総合感冒薬のジヒドロコデインの力価

 コデインは60mg/日が通常用量。
 市販薬のジヒドロコデイン24mg/日の鎮咳作用は「コデイン48mg/日」に相当します。
 総合感冒薬の咳止めは「ほどほど気合が入った用量」であります。

咳はどう始まるか

 「気道の炎症→迷走神経のC線維刺激→神経ペプチドの放出→咳受容体の刺激→延髄の咳中枢亢進」というスジで理解していました。
 神経ペプチドの主役はサブスタンスP。
 サブスタンスPは、蕁麻疹とか片頭痛とかアチコチに顔を出しています。
 「何だか悪い奴」に見えるけど、たぶん「良かれと思ってやっている」のでしょう。

まだ先があった

 一方、急速適応受容体「rapidly adapting receptors(RARs)」という咳の知覚路が、喉から末梢の気道に分布しています。
 異物が気道に入ったときや、喀痰の刺激などにビビッと咳反射で対応します。
 ここで働くのは有髄の神経線維で、無髄のC線維より「すばやいリアクション」が可能です。
 で、前述の「C線維が絡む経路」はどういう立ち位置にあるのか?
 C線維終末から放出される神経ペプチドは「急速適応受容体の活性化を促して咳を増やす」動きもあるけど、C線維は別な経路では「咳を抑える動きもする」という挙動不審な動きをしています(城下. Veterinary Circulation. 2013;2:6-18)。
 表では人の良さそうな顔をしつつ、裏で怪しいことをやっているヤツがまた一人いました。

禁忌になった

 米国では2017年から、12歳未満へのコデイン類の使用は禁忌です。
 日本でも今は小児に禁忌。
 メジコン(デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物)はいまだ小児に処方できます。

まとめ

 コデイン兄弟は大人の咳止めランキングの「切れ味」部門で頂上にいます。
 「安全」部門ではメジコンか何か、意見が分かれます。
 「咳止めの過剰使用」については各自ご留意をということで、本題はおしまい。

また余談……検証

 研修医のとき、第二内科の教授回診は木曜日。
 M教授はよく怒る。怖かったです。
 前日、温度板とかカルテの体裁を整えると夜中になる。
 同期の村上君に向かって「面倒くさいね」とぼやきました。
 すると、「準備してもしなくても怒られるのは同じかもしれない。試してみよう」と言うではありませんか。
 そこで、回診の準備はほどほどにして、水曜日は午後8時から本郷三丁目の「白糸」という焼き鳥屋で飲むことにしました。
 結局、「遅くまで準備して怒られる量」と「適当に切り上げた時の怒られる量」に有意な差はありませんでした。
 村上君の「何でも検証しよう」とする科学的姿勢に感心しました。

■訂正(2021/1/12 12:00)
モルヒネおよびコデインの構造式を示す図に誤植がありました。
図中の左がコデイン、右がモルヒネです。お詫びして修正いたします。

  • 1
  • 2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

村川裕二(村川内科クリニック院長)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。20年村川内科クリニック開院。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

この記事を読んでいる人におすすめ