喉が痛い。咳も出る。
駅を出て、マツモトキヨシに向かう。
「総合感冒薬」が山盛り。
「アセトなんとか」と「クロルなんとか」で、熱と鼻水は大丈夫。
それに、ジヒドロコデインも1回8mg。
いまどきのかぜ薬は「てんこ盛り」。
で、今回はコデインのお話。
はじめからゴチャゴチャ
「コデイン」と「ジヒドロコデイン」がこんがらがっていました。
1832年にフランスの薬学者ピエール=ジャン・ロビケがアヘンから分離したのがコデインです(Wikipediaより)。
コデインはモルヒネと顔かたちがそっくり(下図)。
ところで、足利尊氏の姓名は「源尊氏(みなもとのたかうじ)」で、新田義貞も「源義貞(みなもとのよしさだ)」であります。
コデインは別名メチルモルヒネ。出自が分かる。
ジヒドロコデインはコデインの誘導体。
弟です。

左:コデイン、右:モルヒネ
コデインの仕事
中枢神経に作用します。
鎮痛効果もあるけど、主な仕事は咳止め。
腸管の蠕動運動も抑えるから、便秘が副作用(下図)。

どういう咳にいいか
かぜの後に長引く咳にはよく使われます。
一方で、やたらと咳止め使うなという声も聞く。
何でも「時と場合による」のであります。
咳喘息やアトピー性咳嗽には「おススメ」ではないです。
オピウムとオピオイド
モルヒネやコデインはオピオイドに含まれます。
「オイド」とは小井戸ではなく、「みたいなもの」という接尾辞。
「オピウム」は「アヘン」のこと。
「イヴ・サン=ローランが1977年に売り出した香水」の名前もオピウム。
一昔前は女性の半分は知っていた香水です。
下向きと上向き
モルヒネもコデインも神経系のオピオイド受容体にくっつきます
その中のμ(ミュー)受容体が、モルヒネやコデインの鎮痛と関係します。
ミューと聞けばポケモンを思い出すけど、あっちは「ミュウ」。
脊髄後角のμ受容体は「痛みの刺激が脳に向かうプロセス」を抑えます。
現場の不平が「上に向かわないようにブロック」する鎮痛作用です。
一方、大脳皮質や視床のμ受容体の活性化は抑制系を刺激します。
上の方から「社員に慰労金と優しい言葉」を送って、「ホンワカとした状況」を醸し出す「下向き」の働きかけに当たります。
咳が出るわけ・止まるわけ
コデインそのものには「μオピオイド受容体への作用」はわずか。
コデインの肝代謝でできたモルヒネが、多少そっち方面の仕事をします。
一方、鎮咳効果としてはコデインが直接に「延髄の咳中枢を抑制」します。
咳嗽のメカニズムは「喉から肺にかけての知覚」と「延髄の咳中枢」と「視床」と「大脳皮質」の複雑な絡みがあります。
延髄の孤束核と傍三叉神経核が咳中枢に含まれているとレビューに書いてありましたが、 正確な定義は見つけられませんでした(下図、Satia I et al. Clin Med (Lond). 2016;16:s92-s97)。
