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第49回
「ゴホン!」といえば龍角散、「コンコンコン!」ならコデインか

2021/01/08
村川 裕二(村川内科クリニック)

 喉が痛い。咳も出る。
 駅を出て、マツモトキヨシに向かう。
 「総合感冒薬」が山盛り。
 「アセトなんとか」と「クロルなんとか」で、熱と鼻水は大丈夫。
 それに、ジヒドロコデインも1回8mg。
 いまどきのかぜ薬は「てんこ盛り」。
 で、今回はコデインのお話。

はじめからゴチャゴチャ

 「コデイン」と「ジヒドロコデイン」がこんがらがっていました。
 1832年にフランスの薬学者ピエール=ジャン・ロビケがアヘンから分離したのがコデインです(Wikipediaより)。
 コデインはモルヒネと顔かたちがそっくり(下図)。
 ところで、足利尊氏の姓名は「源尊氏(みなもとのたかうじ)」で、新田義貞も「源義貞(みなもとのよしさだ)」であります。
 コデインは別名メチルモルヒネ。出自が分かる。
 ジヒドロコデインはコデインの誘導体。
 弟です。

左:コデイン、右:モルヒネ

コデインの仕事

 中枢神経に作用します。
 鎮痛効果もあるけど、主な仕事は咳止め。
 腸管の蠕動運動も抑えるから、便秘が副作用(下図)。

どういう咳にいいか

 かぜの後に長引く咳にはよく使われます。
 一方で、やたらと咳止め使うなという声も聞く。
 何でも「時と場合による」のであります。
 咳喘息やアトピー性咳嗽には「おススメ」ではないです。

オピウムとオピオイド

 モルヒネやコデインはオピオイドに含まれます。
 「オイド」とは小井戸ではなく、「みたいなもの」という接尾辞。
 「オピウム」は「アヘン」のこと。
 「イヴ・サン=ローランが1977年に売り出した香水」の名前もオピウム。
 一昔前は女性の半分は知っていた香水です。

下向きと上向き

 モルヒネもコデインも神経系のオピオイド受容体にくっつきます
 その中のμ(ミュー)受容体が、モルヒネやコデインの鎮痛と関係します。
 ミューと聞けばポケモンを思い出すけど、あっちは「ミュウ」。
 脊髄後角のμ受容体は「痛みの刺激が脳に向かうプロセス」を抑えます。
 現場の不平が「上に向かわないようにブロック」する鎮痛作用です。
 一方、大脳皮質や視床のμ受容体の活性化は抑制系を刺激します。
 上の方から「社員に慰労金と優しい言葉」を送って、「ホンワカとした状況」を醸し出す「下向き」の働きかけに当たります。

咳が出るわけ・止まるわけ

 コデインそのものには「μオピオイド受容体への作用」はわずか。
 コデインの肝代謝でできたモルヒネが、多少そっち方面の仕事をします。
 一方、鎮咳効果としてはコデインが直接に「延髄の咳中枢を抑制」します。
 咳嗽のメカニズムは「喉から肺にかけての知覚」と「延髄の咳中枢」と「視床」と「大脳皮質」の複雑な絡みがあります。
 延髄の孤束核と傍三叉神経核が咳中枢に含まれているとレビューに書いてありましたが、 正確な定義は見つけられませんでした(下図、Satia I et al. Clin Med (Lond). 2016;16:s92-s97)。

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著者プロフィール

村川裕二(村川内科クリニック院長)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。20年村川内科クリニック開院。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

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