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【第7回】
震災で強いストレスにさらされている方にはこの漢方薬を

2011/04/04

 同様に何となく気が晴れないというときには、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)も使用します。処方の主たる対象は、咽が何かしら変な感じがするときとされています。解剖学には、食道が狭いとか、気道が狭い、咽が苦しいという感じです。その昔、中国ではこのような状態を、「炙った肉が咽にある」という意味で「咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)」という表現を使っていました。半夏厚朴湯は、こうした咽中炙臠の症状の場合に処方しますが、症状がなくてもストレスを感じるときには有効です。私は香蘇散が無効な患者さんに処方することが多いです。

経過が長引くときには柴朴湯や柴胡加竜骨牡蛎湯
 漢方では、症状が改善しない場合には、柴胡と黄ごんを中心に組み合わせた柴胡剤を併用します。柴胡剤の中でも最も一般的なのが小柴胡湯で、小柴胡湯と半夏厚朴湯を合わせたものが柴朴湯(さいぼくとう)です。半夏厚朴湯では思うような効果がなく、長びくストレス症状には柴朴湯が有効となることもあります。

 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)もストレスには有効です。柴胡という名前で分かる通り、これも柴胡剤です。多くの教科書では大柴胡湯の次に実証(ガッチリした体格の人)タイプの人に向く柴胡剤と紹介されていますが、実は虚証(やせ型の人)にも有効です。エキス剤の柴胡加竜骨牡蛎湯には大黄が含まれていませんので、虚証の方に処方しても不快な作用がないからです。教科書的には「虚証用の柴胡加竜骨牡蛎湯」とされる、柴胡桂枝乾姜湯が薦められますが、こちらは乾姜が入っているので、私は冷え症でストレスがある人に対して処方しています。

補中益気湯を被災地に届けたかったが…
 今回の大震災で、避難所生活などを余儀なくされた方々は、体力と同時に気力も弱っていることでしょう。精神的、肉体的に疲れているときには補中益気湯が有効です。身を粉にして働いている人々や、避難所や被災した家屋で必死に耐えている人々に飲んでもらいたい漢方薬です。

 そこで私は、ツムラに補中益気湯の無償供与をお願いしましたが、実現しませんでした。この震災で工場のラインが止まり、「医療現場での漢方エキス剤が品薄となっており、とても支援物資に供与できるだけの量がない」のだそうです。震災の影響は製薬会社にも及んでおり、供給体制の確保に苦労している例も少なからずあります。残念ですが、致し方ないですね。

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著者プロフィール

新見正則(帝京大外科准教授、愛誠病院漢方センター長)●にいみ まさのり氏。1985年慶応大卒。専門は末梢血管外科。98年帝京大第一外科講師、02年より同大外科准教授。10年より愛誠病院漢方センター長。

連載の紹介

【臨床講座】漢方嫌いだった外科医の漢方教室
西洋医学的なアプローチで十分な治療効果を得られないとき、漢方薬を使うとよい場合があります。現役外科医の新見正則氏が、“食わず嫌い”の医師向けに漢方の魅力とプライマリケアの現場で役立つポイントを紹介します。

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