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外来診療クイックリファレンス

全身性強皮症

 
桑名正隆(日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野教授)

 全身性強皮症(SSc)は皮膚や内臓諸臓器の線維化と循環障害を併せ持つ結合組織疾患で、いまだ根治的治療法のない難治性病態として取り残されている。軽症例を含めると、わが国の患者数は5万人程度と推測される。小児を含めてあらゆる年齢層にみられるが、好発年齢は40~60歳で、男女比は1:8〜10と圧倒的に女性に多い。難病認定患者数は増えているが、疾患認識の高まりによる軽症例の取り込みがおもな要因と考えられる。
 わが国では厚生労働省研究班が作成した全身性強皮症の診断基準・重要度分類・診療ガイドライン2016、欧州でも治療推奨2017がある。最近、大規模コホート研究や臨床試験データを用いて活動性評価、進行予測、さらには治療効果判定基準が提案され、また臨床試験の結果が相次いで報告されて治療体系が大きく変化しつつある。死因として最も多い間質性肺疾患(ILD)については、関連学会が共同で最新の情報に基づいた診療の手引きを作成中である。今後のガイドラインのアップデートが待たれる。(最終更新日:2020年3月)

診断

 SScでは多彩な臨床症状がみられるが、その病態は「線維化」と「血管障害」で特徴づけられる。

(1)線維化


 皮膚では真皮から皮下組織にかけて膠原線維が増生して皮膚硬化を来す。手指腫脹から始まり、指先から体幹に向かって皮膚硬化が拡大する。初期は浮腫を伴って皮膚は緊満するが、硬化期には硬度が増して光沢を帯びてくる。皮膚の線維化は腱を巻き込み屈曲拘縮を呈する。皮膚硬化は発症数年でピークとなり無治療でも改善する。晩期には萎縮した皮膚に色素沈着と脱失が混在する特徴的な外観を呈する。線維化はさまざまな臓器でみられ、肺ではILDを引き起こす。拘束性換気障害が進行すると労作時息切れの原因となる。消化管も高率に障害され、食道では下部括約筋圧低下、下部食道拡張による胃食道逆流症、腸管では蠕動能低下による偽性イレウスを来す。

(2)血管障害


 血管障害では、細小動脈レベルでの血管壁の膠原線維増生による内腔狭窄(中心性内膜線維化)と毛細血管の減少・消失を来す。さらに、レイノー現象に代表される可逆性の小動脈の攣縮を高率に伴う。レイノー現象は95%以上でみられ、皮膚硬化が明らかとなる数カ月〜数年先行する。循環障害が高度になると指尖に潰瘍や壊疽が出現する。指尖陥凹性瘢痕は指の先端に出現する無痛性の虫食い状の上皮の凹みで、慢性的な虚血を反映した所見である。健常者の爪郭毛細血管はループ構造が規則正しく並んでいるのに対し、SSc患者では毛細血管数が減少し、ループが拡張、巨大化する。罹病期間が長くなると血管が消失し、分枝や吻合を伴う異常血管新生がみられる。血管障害は内臓諸臓器にもみられ、肺動脈の中心性内膜線維化は肺動脈性肺高血圧症(PAH)を来す。早期には自覚症状を欠くが、進行すると心拍出量低下、右心不全を招く。一方、心臓の小動脈の繰り返す攣縮により心筋の小壊死、線維化が誘発され、罹病期間が長くなると心機能、特に拡張能が障害され、ときに収縮機能障害や伝導障害、期外収縮など不整脈を認める。また、突然出現する高血圧、急速進行性の腎機能障害を特徴とする腎クリーゼは、腎動脈の攣縮により誘発された高レニン血症が原因である。

(3)診断基準


 難病認定を目的とした厚労省研究班の診断基準では、両側性の手指を越える皮膚硬化(大基準)を満たすか、(1)手指に限局する皮膚硬化、(2)爪郭毛細血管異常、(3)手指尖端の陥凹性瘢痕あるいは指尖潰瘍、(4)両側下肺野の間質性陰影、(5)抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体のいずれかが陽性(小基準)のうち、(1)を含む2項目以上満たすことで診断できる。
 一方、早期診断に有用なレイノー現象、手指腫脹、爪郭毛細血管変化を加えた分類基準が米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会より提唱され、高い感度、特異度が示されている(表1)。いずれの基準も適応する際には、好酸球性筋膜炎や限局性強皮症など皮膚硬化局面を呈する他疾患の除外が前提となる。これら疾患では手指硬化はなく、レイノー現象をはじめとした血管障害を欠くことから鑑別は容易である。なお、診断を目的とした皮膚生検は不要である。
 臨床症状や経過はきわめて多彩なため、臓器障害や予後の予測に病型分類が役立つ。おもに用いられる分類は経過中にみられる最も広い皮膚硬化範囲による。ピークが肘あるいは膝を越えて近位まで広がる病型をびまん皮膚硬化型(dcSSc)、肘と膝より遠位と顔面にとどまる病型を限局皮膚硬化型(lcSSc)に分ける。

管理・治療

 完成した線維化病変や血管障害は可逆性に乏しいため、治療目標は早期に治療介入し、臓器障害の進行を食い止め、機能障害の軽減、生命予後の改善である。治療の基本は、①機能障害の進行、生命予後の悪化が予測されるdcSSc早期や進行性ILDを有する例に対する疾患修飾療法、②完成した個々の病変に対する支持療法である。個々の患者の病型、罹病期間、各臓器障害の進行度を勘案して治療方針を決める。

(1)疾患修飾療法


 病初期の病変組織へのリンパ球浸潤が線維化の進行を促進することから、シクロホスファミド水和物(エンドキサン)、メトトレキサート(リウマトレックスなど)*、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプトなど)*など免疫抑制薬を用いる。特にシクロホスファミドはILDだけでなく皮膚硬化の進行も抑制する。ただし、悪性腫瘍誘発など毒性が強いため、投与期間を12カ月以内(総投与量36g未満)に限定し、維持療法として安全性の高いアザチオプリン(イムランなど)などに切り替える。最近、ミコフェノール酸モフェチルの効果はシクロホスファミドと同様で、安全性は高いことが示されている。他の膠原病と異なり、ステロイドの有効性に関するエビデンスは乏しく、むしろ腎クリーゼのリスクを高める。そのため、その使用は皮膚の浮腫や瘙痒、関節炎などに限定し、少量(プレドニゾロン換算10mg以下)にとどめる。
 近年、細胞・分子レベルでの病態解析からさまざまな細胞、液性因子、細胞内シグナルが密接に関わる病態が明らかにされ、数多くの分子・細胞標的が同定された。現在、それらに対する治療薬のグローバル臨床試験が実施され、IL-6を標的としたトシリズマブ(アクテムラ)*、チロシンキナーゼ阻害薬ニンテダニブ(オフェブ)のILD進行抑制効果が証明された。

(2)支持療法


 個々の患者の臓器病変の程度に応じて支持療法を行う(表2)。特にPAHに対する肺血管拡張薬、腎クリーゼに対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬は生命予後改善に大きく貢献した。*保険適用注意

経過・予後

 病型ごとに皮膚硬化の進展、臓器障害の種類と出現時期は大きく異なる。dcSScでは皮膚硬化とレイノー現象の出現がほぼ同時もしくは6カ月以内で、発症後0.5~3年間は皮膚硬化が進行するが、その後皮膚硬化はゆっくり改善する。一方、lcSScにおける皮膚硬化は経過を通じて軽度で変化に乏しい。dcSScでは、皮膚硬化の進行期に腎クリーゼ、心筋障害によるうっ血性心不全を来す。消化管や肺の線維化は緩徐に進行し、皮膚硬化がピークに達する頃に機能障害が顕性化する。一方、lcSScでは10年以上の長い罹病期間を経てPAH、消化管機能障害、心筋病変(おもに拡張機能障害)が顕性化する。10年生存率はおおよそdcSScで70%、lcSScで90%である。死因として最も多いのはILD、次いでPAHで、肺病変が死因の約半数を占める。

参考文献

van den Hoogan F, et al : 2013 classification criteria for systemic sclerosis : an American College of Rheumatology/European League against Rheumatism collaborative initiative. Arthritis Rheum 65 : 2737, 2013.
全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン作成委員会:全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン.日皮会誌 126:1831,2016.〈https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/126101831.pdf〉
Tashkin DP, et al : Mycophenolate mofetil versus oral cyclophosphamide in scleroderma-related interstitial lung disease (SLS II) : a randomised controlled, double-blind, parallel group trial. Lancet Respir Med 4 : 708, 2016.
Khanna D, et al : Safety and efficacy of subcutaneous tocilizumab in adults with systemic sclerosis (faSScinate) : a phase 2, randomised, controlled trial. Lancet 387 : 2630, 2016.
Kowal-Bielecka O, et al : Update of EULAR recommendations for the treatment of systemic sclerosis. Ann Rheum Dis 76 : 1327, 2017.
Distler O et al : Nintedanib for Systemic Sclerosis-Associated Interstitial Lung Disease. N Engl J Med 380 : 2518, 2019.

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連載の紹介

外来診療クイックリファレンス
日常の外来でよく診る主要100疾患+αについて、各領域の専門医が最新の診療ガイドラインに基づき、診断や治療を分かりやすく解説します。ガイドラインの改訂や新薬登場などに応じて内容は定期的に更新します。

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