日経メディカルのロゴ画像

外来診療クイックリファレンス

間質性肺炎

 
田口善夫(天理よろづ相談所病院副院長/呼吸器内科部長)

 間質性肺炎は膠原病など原因の明らかなものと、原因が不明な特発性とに分けられる。特発性の中では慢性経過の特発性肺線維症が臨床上重要な疾患である。特発性肺線維症は近年非常に幅広い概念で捉えられており、臨床・画像・病理のみならず時間経過を含めて診断をすることがポイントである。また、多職種間協議(MDD)によってさまざまな角度から病態を考慮しての診断が望ましいとされている。
 わが国のガイドラインは2016年に改訂第3版が出版されているが、国際的には2018年にガイドラインが報告されおり、その中の診断フローチャートはわが国における内容とほぼ同一であるといってよい。これらのガイドラインの基本は、これまで治療薬のない状況から、あらたに抗線維化薬という治療薬の出現を念頭に置いたガイドラインである。すなわち慢性に進行する病態では線維化を来すことが重要であり、そのことを念頭に置いた幅広い病態を意識してのガイドラインであるが、非専門医にとっては理解しにくいものであり将来的にはよりわかりやすいガイドライン作成が望まれる。
 本章ではわが国のガイドラインおよび国際ガイドラインを交えて、現時点での間質性肺炎の考え方と対応を述べる。(最終更新日:2020年3月)

診断

(1)病態
 間質性肺炎の病態は、原因の明らかなものと原因不明なものに大きく分けられる。原因の明らかなものとして、膠原病、過敏性肺炎(アレルギー性)、感染性、放射線性、塵肺、腫瘍性、薬剤性などに分類される。原因不明の間質性肺炎は特発性間質性肺炎と呼ばれ、この中の主要な疾患群として特発性肺線維症(IPF)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、特発性器質化肺炎(COP)、急性間質性肺炎(AIP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、呼吸細気管支関連性間質性肺炎(RB-ILD)があり、特殊な病態として胸膜実質性線維弾性線維症(pleuroparenchymal fibroelastosis:PPFE)などがある。実臨床で問題となるのはIPF、NSIP、COPに加えてPPFEである。
一般に、膠原病肺においても特発性間質性肺炎の画像、病理所見で評価されることが多い。病理学的に通常型間質性肺炎(UIP)を呈するものの予後は、特発性と同様に不良である。本章ではおもに頻度の高い慢性型の間質性肺炎を中心に述べる。

(2)診断アプローチ
a. 症状
 慢性経過の間質性肺炎の診断の入り口は、フローチャート(図)に記載されているように慢性咳嗽、呼吸困難、および胸部聴診所見である。咳嗽は一般に乾性咳嗽であり、呼吸困難は労作時呼吸困難であるが患者が自覚していないことも少なくない。次に、原因が特定できる病歴、例えば膠原病の既往、明らかな塵肺を来す職歴などがあれば、原因のある間質性肺炎の可能性が高くなる。また、薬歴、家族歴なども詳細に聴取することが重要である。
慢性の間質性肺炎では慢性過敏性肺炎が鑑別上重要な疾患であり、トリ曝露歴や家屋などについても詳細な聴取が必要である。

b. 身体所見
 間質性肺炎に共通の身体所見は病変部位に一致したcracklesの聴取である。基本的には両側肺底部背側にて深吸気時にfine cracklesを聴取する。線維化が進んでくると比較的早期より粗いcracklesを聴取するようになる。また、ばち指はIPFでは約40%程度に認められるが、疾患特異性はもちろんなく、心疾患、他の呼吸器疾患、肝疾患などでも認められる。
 原因のある膠原病肺などでは、ゴットロン徴候、メカニックハンド、ソーセージ様手指、蝶形紅斑、DIP関節の変形、爪囲出血、筋力低下などの身体所見が認められるため、間質性肺炎をみた場合にも全身の身体観察が重要となってくる。なかでも致死的な急速進行性の間質性肺炎はCADM(clinically amyopathic dermatomyositis)による病態が重要であり、この際には身体所見が診断のきっかけとなる。

c. 検査
 慢性経過の間質性肺炎では白血球増多やCRP上昇は認めないのが特徴である。血液検査では、間質性肺炎のマーカーであるKL-6、SP-D、SP-Aなどが上昇していることが一般的であるが、軽微な症例では異常値がみられない場合もある。なお、KL-6は肺癌や乳癌などでも上昇することがあり、注意が必要である。さらに、慢性過敏性肺炎除外のためトリ抗体やトリコスポロン抗体を実施すべきである。
 また、膠原病合併間質性肺炎では、その基礎疾患に応じた特異的な自己抗体が検出される。逆に膠原病を診察する場合には、間質性肺炎のマーカーは膠原病合併間質性肺炎の存在を知るうえで重要な検査ともいえる。
 以上のような流れで他疾患を除外したのちに、特発性として高分解能CT(HRCT)にて画像上UIPパターンの有無を判断し、UIPといえなければ気管支肺胞洗浄(BAL)や必要に応じて外科的肺生検を行い、いずれの場合にも多職種間協議(MDD)を行って最終診断することになる。しかし、実際には明確な診断が得られないことも多く、その場合にはIPFと仮診断して経過観察しながら経時的にMDDを行って再診断することになる。

管理・治療

(1)管理
 先述の詳細な問診、身体所見、胸部X線所見、血液検査などから間質性肺炎が疑われた場合は、無症状でも一般臨床医は呼吸器専門医へ紹介すべきである。
 そのため、一般臨床医が間質性肺炎という疾患を十分に理解していないと、無症状ないし症状軽微な患者を専門医へ紹介することができないことになる。
 紹介を受けた専門医は症状の有無にかかわらず病態を評価し、診断および治療介入の可能性を考慮する。症状の乏しい間質性肺炎でも病態の定期的な経過観察が重要である。一般に、IPFの年間の努力肺活量(FVC)低下は200mL程度とされ、無症状であってもFVC低下の確認は病態を評価するうえで重要である。
 慢性経過の場合、特発性間質性肺炎でも膠原病肺でも進行性であれば治療介入を考慮する。治療介入にはさまざまな副作用もあることから十分なインフォームドコンセントを行い、間質性肺炎が進行性か否かを的確に判断することが重要である。
 特に、無症状であっても3~6カ月ごとに呼吸機能検査と画像検査、血液検査などで経過観察を行い、病態の進行の有無を評価する。また、HRCTや6分間歩行なども1年に1回は施行して評価を行うべきである。特に、慢性に進行するIPFでは治療介入がFVC低下の改善が目的となるため、症状のない患者に定期的にFVC測定を行うことが病態の理解や治療効果判定に有用である。
 一般的な慢性疾患と同様、感染予防は重要である。ニューモバックスプレベナーなどの肺炎球菌ワクチン接種や毎年のインフルエンザワクチンの接種は必須である。また、感染予防策としての手洗い、うがいなどは自己管理として徹底することが重要である。インフルエンザ流行期には閉鎖空間である公共の乗り物などは可能な範囲で控えるべきである。
 ADL改善のために慢性呼吸器疾患として呼吸リハビリテーションが有効との報告もみられることから、可能な患者において積極的に導入すべきである。
 慢性疾患においては長期にわたる病態進行とともに摂食時に呼吸困難が生じることがあることから、食事療法の指導も重要である。
 また、間質性肺炎において、安静時呼吸困難はもちろんのこと労作時呼吸困難の対応として、いつ酸素療法を導入するかは難しい問題である。生命予後に関するエビデンスはないが、近年酸素療法によりADLが改善するとの報告もあり、労作時低酸素血症がある患者では相談のうえ酸素療法導入を考慮してもよい。

(2)治療
 治療については、疾患診断によって治療介入が異なってくる。いわゆる慢性経過で線維化が主体のIPFにおいては、現時点での治療介入は抗線維化薬であり、エビデンスとしても推奨されている。抗線維化薬には、ピルフェニドン(ピレスパ)とニンテダニブエタンスルホン酸塩(オフェブ)の2種類が存在する。

ピルフェニドン投与法:600mg分3で開始して2週間で1200mg分3へ増量し、2週間後に副作用がなければ1800mgの維持量へと増量する。おもな副作用は消化器症状と光線過敏症がある。

ニンテダニブ投与法:300mg分2が投与量で、おもな副作用は消化器症状、なかでも下痢と肝機能障害である。
いずれの薬剤も開始時より制吐薬やプロトンポンプ阻害薬などを併用して開始することがスムーズな治療導入につながる。また、ニンテダニブでは止瀉薬を当初から併用することも考慮すべきである。
 
 両薬での抗線維化薬としての効果はほぼ同様であるとされており、IPFの年間FVC減少量を約半分にする効果がある。また、両薬剤とも致死的な病態である急性増悪発症頻度を低下させる効果も報告されており、ピルフェニドンでは肺癌術前投与での急性増悪抑制効果が報告されている。
 なお、投与量について、ピルフェニドンはわが国で治験が行われ独自の投与量が設定されており国際的な投与量の2/3程度となっているが、ニンテダニブはグローバル治験が行われたことから国際的に同一量であるため、体重の少ない患者では下痢などの副作用が出やすく治療導入量を考慮すべきである。両薬とも高額であり、特定疾患の軽症高額助成制度を利用することも治療導入には重要なポイントである。
 また、線維化病変の強い全身性強皮症でも近年抗線維化薬の効果が確認されており、使用可能となっている。
 線維化が強くないNSIPやCOP、膠原病肺では抗線維化薬ではなく、従来のステロイドや免疫抑制薬を導入する。
COPや細胞浸潤型NSIPではステロイド単剤での治療導入が一般的である。処方例として、プレドニゾロン(PSL〈プレドニンなど〉)0.5mg/kg/日で治療導入して漸減する。治療抵抗性の場合には免疫抑制薬を併用するが、その際にはシクロホスファミド水和物(CPA〈エンドキサン〉)、アザチオプリン(AZN〈イムランなど〉)、タクロリムス水和物(TAC〈プログラフなど〉)、シクロスポリン(CyA〈サンディミュンなど〉)などが併用される。
 一般に、CADMなどの治療抵抗性の間質性肺炎や急性増悪には治療導入時よりステロイドパルス療法を開始してPSL 1mg/kg/日で維持量に移行するとともに、TACやCyAなどの免疫抑制薬を併用する。また、症例によっては治療開始時からCPA間欠大量療法を併用することも少なくない。

経過・予後

(1)経過
 間質性肺炎の経過は疾患診断によりさまざまであり、その発症経過は重要な情報を提供する。すなわち、年単位で経過する慢性の疾患群はIPFや線維化型NSIP、月単位で進行する疾患群は細胞浸潤型NSIP、COP、週単位で進行する疾患群はCOP、AIP、IPFの急性増悪などである。膠原病肺なども、発症形式によって組織型は同様に推測可能である。したがって、病歴聴取の基本として、いつから症状が出現しているかを詳細に問診することで、ある程度疾患群を予想することが可能である。また、病状の進行に季節性がある場合には、環境因子による過敏性肺炎が推測される。

(2)予後
 予後については、急性・亜急性の病態では初期治療が奏効すれば良好であることが多い。しかし、線維化を主体とするIPFや線維化型のNSIPなどでは慢性進行性であり予後不良である。膠原病においても慢性経過の病態やIPF類似の画像を呈する病態では進行性であり予後不良である。一般に、IPFでの発症からの生存期間中央値(MST)は約3年との報告もあり、わが国では急性増悪が40%を占め最も重要な死因である。続いて慢性呼吸不全、肺癌であり、急性増悪、慢性呼吸不全、肺癌はIPFの3大死因といわれている。
 急性増悪は発現率が高く1カ月以内の経過で病態が進行し、HRCTでは新たなすりガラス陰影の出現がみられて呼吸困難が増強する。しかし、急性増悪の病態認識とHRCTによる早期評価により、近年予後の改善傾向がみられている。急性増悪は膠原病肺でも認められるが、その予後はIPFに比べて良好である。
 肺癌の発症率は慢性経過であればあるほどリスクは上昇するとされ、10年経過では約半数の症例で肺癌発症を呈するとの報告もある。したがって、IPFにおいては定期的なHRCTは必須であるが、病態によっては対応できないことが少なくないことも理解したうえで評価を考慮すべきである。

参考文献

Travis WD, et al : An official American Thoracic Society/European Respiratory Society statement : Update of the international multidisciplinary classification of the idiopathic interstitial pneumonias. ATS/ERS Committee on Idiopathic Interstitial Pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 188 : 733, 2013. 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会 編:特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き 改訂第3版.南江堂,東京,2016. Raghu G, et al : Diagnosis of idiopathic pulmonary fibrosis : An official ATS/ERS/JRS/ALATA clinical practice guideline. Am J Respir Crit Care Med 198 : e44, 2018. Lynch DA, et al : Diagnosis criteria for idiopathic pulmonary fibrosis : a Fleishner Society White Paper. Lancet Respir Med 6 : 135, 2018.

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連載の紹介

外来診療クイックリファレンス
日常の外来でよく診る主要100疾患+αについて、各領域の専門医が最新の診療ガイドラインに基づき、診断や治療を分かりやすく解説します。ガイドラインの改訂や新薬登場などに応じて内容は定期的に更新します。

この記事を読んでいる人におすすめ