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【新薬】カボテグラビル(ボカブリア)、リルピビリン(リカムビス)
抗HIV療法における初の持効性注射薬

2022/07/08
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2022年6月27日、抗ウイルス化学療法薬のカボテグラビル(CAB;商品名ボカブリア水懸筋注400mg、同水懸筋注600mg)、リルピビリン(RPV;リカムビス水懸筋注600mg、同水懸筋注900mg)が発売された。両薬は5月31日に製造販売が承認、6月8日に薬価収載されていた。

 適応は「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1感染症」、用法用量は「両剤併用において、成人に初回CAB 600mg、RPV 900mgを臀部筋肉内へ投与。以降は、次のいずれかの間隔で投与する。1カ月間隔投与:CAB 400mg、RPV 600mgを1カ月に1回、臀部筋肉内へ投与。2カ月間隔投与:初回投与1カ月後に、CAB 600mg、RPV 900mgを臀部筋肉内へ投与し、以降はCAB 600mg、RPV 900mgを2カ月に1回、臀部筋肉内へ投与する」となっている。

 HIVは、主としてCD4陽性Tリンパ球とマクロファージ系の細胞に感染するレトロウイルスである。2020年末時点、全世界ではHIV患者数が3770万人となっており、日本でも新規HIV感染症患者数および後天性免疫不全症候群(AIDS)患者数は減少傾向がみられるものの、臨床現場では早期発見や治療の十分な管理などの重要性が増している。

 HIV感染症の病期は、感染初期(急性期)、無症候期、AIDS発症期に大別されている。急性期では発熱、発疹、リンパ節腫脹などの急性感染症状が発現し、その後、無症候期として患者自身の免疫機構とHIVが拮抗した状態が長期間続く。さらに、治療を開始しなければAIDS発症期としてHIV増殖が続くことで、患者の免疫力が徐々に低下し、日和見感染を併発しやすい状態に陥る。初感染からAIDS発症期に至るまでの期間は個々の症例で異なるものの、一般的には、抗HIV療法を行わない場合、AIDS発症後死亡に至るまでの期間は約2年程度と考えられている。

 現在、抗HIV療法には、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻害薬が臨床使用されている。現在、これらの薬剤を3~4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が治療の標準となっており、INSTIのドルテグラビル(DTG;テビケイ)とNNRTIのRPV(エジュラント)の配合薬であるジャルカ、ドルテグラビルとNRTIのラミブジン(3TC;エピビル)の配合薬であるドウベイトが2剤併用療法として臨床使用されており、HIVに対する有効性を長期間維持すると共に、副作用発現が少なく長期服用が可能となった。しかし、2剤併用療法では、長期間にわたり毎日の内服が必要であることから、アドヒアランスの改善や患者の負担軽減を考慮した製剤の開発が求められていた。

 今回承認されたCAB(ボカブリア)とRPV(リカムビス)は、抗HIV薬としては日本初となる長時間作用型注射薬で、患者への負担が少ない1カ月投与間隔または2カ月投与間隔の2剤併用療法である。また、既存の経口薬とは異なり、毎日の服薬により患者自身がHIV陽性であることを思い起こすこと(スティグマ)を回避できる。さらに、内服困難な高齢者、認知症を合併しているHIV-1患者にとっても有用な治療選択肢として期待されている。

 CABは、既存のドルテグラビルと同様、レトロウイルスの複製に必要な酵素HIVインテグラーゼの活性部位に結合し、活性を阻害することでウイルスDNAの宿主DNAへの取り込みを抑制するが、INSTIとして初となる長時間作用を発揮する水懸筋注製剤である。また、RPVは、HIV-1逆転写酵素(RT)を非競合的に阻害し、ヒトDNAポリメラーゼα、βおよびγを阻害しないNNRTIであるが、NNRTIとして初となる長時間作用を発揮する水懸筋注製剤である。

 ART未治療の成人HIV-1感染患者を対象とした国際共同第II相試験(FLAIR:201584試験)、ART既治療の成人HIV-1感染患者を対象とした海外第II相試験(ATLAS:201585試験)、海外第III相試験(ATLAS-2M:207966試験)において、CAB+RPV併用療法の有効性(1カ月間隔投与群と既存のART療法との非劣性、2カ月間隔投与群の1カ月間隔投与群との非劣性)が検証された。海外で、CABおよびRPVは欧米、カナダを含む世界20カ国以上で承認されており、日本では2020年6月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 副作用として、主なものは注射部位反応(疼痛、結節、硬結)(10%以上)、頭痛、不安、異常な夢、不眠症、浮動性めまい、悪心、下痢、発疹、筋肉痛、注射部位反応(不快感、腫脹、紅斑、そう痒感、内出血、熱感、血腫、知覚消失)、発熱、疲労、無力症、倦怠感(1~10%未満)などであり、CABには重大な副作用として肝機能障害、薬剤性過敏症症候群の可能性があるので十分注意する必要がある。

 なお、CABに関しては、同日に経口薬(ボカブリア錠30mg)も発売された。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●ウイルス学的失敗の経験がなく、切り替え前6カ月間以上においてウイルス学的抑制(HIV-1 RNA量<50copies/mL)が得られており、CABおよびRPVの耐性関連変異が認められず、本併用療法が適切と判断された患者に使用すること

●CAB+RPV注射剤併用療法前に、CAB+RPV経口剤併用療法により1カ月間(少なくとも28日間)を目安に行い、忍容性が確認された患者に使用すること

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