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【新薬】カロテグラストメチル(カログラ)
潰瘍性大腸炎に対する初の経口α4インテグリン阻害薬

2022/06/17
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2022年5月30日、潰瘍性大腸炎UC)治療薬のカロテグラストメチル(商品名カログラ錠120mg)が発売された。同薬は3月28日に製造販売が承認され、5月25日に薬価収載されていた。適応は「中等度の潰瘍性大腸炎(5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な場合に限る)」、用法用量は「成人に1回960mgを1日3回食後に経口投与」となっている。

 UCは「主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症」と定義されている慢性難治性の炎症性腸疾患IBD)である。主な臨床症状としては、持続性または反復性の粘便・血便などであり、しばしば下痢、腹痛、発熱を伴うこともあり、罹患部位や罹患範囲および炎症症状の程度により、多彩な臨床症状を呈する。

 UCは厚生労働省の指定難病であり、発症原因の詳細が明確に解明されていないことから、根本的な治療法は確立されていないのが現状である。また、寛解と再燃を繰り返すことから、長期にわたる薬物治療が必要である。現在、UC治療の基本は、病態に応じた治療法を選択し、症状をコントロールすることであり、速やかに寛解導入を図り、寛解を長期に維持することが治療目標となる。薬物治療としては、病態(病型・病期・重症度)によりサラゾスルファピリジン(サラゾピリン他)、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤のメサラジン(ペンタサアサコールリアルダ他)などが軽症から中等症の寛解導入や維持を目的とした基本的治療薬となり、効果不十分な場合はステロイドで寛解導入が行われている。さらに、これらに対する抵抗性や依存性が認められる難治症例においては、免疫抑制薬のアザチオプリン(イムランアザニン)、アダリムマブ(遺伝子組換え)(ヒュミラ他)などの抗TNFα製剤、抗IL-12/23p40抗体のウステキヌマブ(遺伝子組換え)(ステラーラ)、ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体のベドリズマブ(遺伝子組換え)(エンタイビオ)、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブクエン酸塩(ゼルヤンツ)が使用されている。

 近年、UCに対する治療選択肢が急速に充足してきたが、生涯にわたって病勢をコントロールしていくためには、難治症例に移行させないことが重要である。そのためにも5-ASA製剤で効果不十分または不耐となった場合に、5-ASA製剤と抗体製剤の間に存在するアンメットメディカルニーズを埋めることができる、新たな寛解導入薬の開発・承認が求められていた。

 UCを含むIBDの病態には消化管炎症部位へのリンパ球を含む炎症性細胞の浸潤が関与していることが判明しており、そこではリンパ球ホーミングと同様にα4インテグリンを介した接着分子(VCAM-1、MAdCAM-1)への結合が寄与していることが示唆されている。

 カロテグラストメチルは、低分子α4インテグリン阻害薬のエステル型プロドラッグであり、α4インテグリン阻害薬としてはベドリズマブ、多発性硬化症の適応を有するナタリズマブ(遺伝子組換え)(タイサブリ)に次ぐ3番目の薬剤である。また、同薬は日本で開発された、世界初の経口薬である。活性代謝物のカロテグラストは、リンパ球などの炎症性細胞の表面上に発現するα4β1インテグリンと血管内皮細胞上に発現する接着分子VCAM-1との結合、およびα4β7インテグリンと接着分子MAdCAM-1との結合を特異的に阻害することで、炎症性細胞の血管外遊走、腸管組織への集積を抑制することで抗炎症作用を発揮する。

 5-ASA製剤に対して効果不十分または不耐の中等度の活動期UC患者を対象とした国内第III相試験(検証試験)にて、同薬の有効性および安全性が確認された。

 副作用として、主なものは肝機能異常、AST増加、LDH増加、頭痛、悪心、腹部不快感、白血球数増加、関節痛、尿中蛋白陽性、上咽頭炎、上気道の炎症、発熱、CRP増加(各1~5%未満)などであり、重大なものは進行性多巣性白質脳症(PML)の可能性があるので十分注意する必要がある。

 薬剤投与に際しては下記の事項についても留意しておかなければならない。

●妊婦または妊娠している女性、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)の患者は禁忌である

●維持療法のために投与しないこと

●PML発現リスクを低減するため、投与期間は6カ月までとし、6カ月以内に寛解に至った場合はその時点で投与を終了すること。また、治療を再度行う場合は、投与終了から8週間以上空けること

●他の免疫抑制薬との併用を避けること

●医薬品リスク管理計画書(RMP) では、重要な潜在的リスクに「進行性多巣性白質脳症(PML)」「生殖発生毒性」「感染症」が挙げられている

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