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【新薬】アシミニブ塩酸塩(セムブリックス)
難治性の慢性骨髄性白血病に対する新たなチロシンキナーゼ阻害薬

2022/06/03
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2022年5月25日、抗悪性腫瘍薬のアシミニブ塩酸塩(商品名セムブリックス錠20mg、同錠40mg)が薬価収載と同時に発売された。同薬は、3月28日に製造販売が承認されていた。適応は「前治療薬に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病」、用法用量は「1回40mgを1日2回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」となっている。

 慢性骨髄性白血病CML)は、骨髄の造血幹細胞に異常が生じる白血病であり、骨髄の造血幹細胞の第9染色体と第22染色体の相互転座により生じたフィラデルフィア染色体が認められる。この相互転座により、ABL遺伝子とBCR遺伝子が融合したキメラ遺伝子(BCR-ABL遺伝子)が産生するBCR-ABL1チロシンキナーゼが、発症や病態形成に深く関与することが判明している。

 現在、CMLの治療選択肢には、同種造血幹細胞移植や、選択的にBCR-ABL1チロシンキナーゼを阻害する薬物療法がある。このうち薬物療法は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のイマチニブメシル酸塩(グリベック他)、ニロチニブ塩酸塩水和物(タシグナ)、ダサチニブ水和物(スプリセル他)、ボスチニブ水和物(ボシュリフ)、ポナチニブ塩酸塩(アイクルシグ)などが、現在の一次治療の中心であり、治療成績は格段に向上した。一方で、一部の患者では既存のTKIに抵抗性または不耐容を示し、十分な治療効果が得られない症例も存在することが大きな問題となっていた。これは、既存のTKIはいずれもBCR-ABL1チロシンキナーゼのATP結合部位に結合するため、ATP結合部位に生じた点突然変異によって薬剤抵抗性が生じることが判明している。

 アシミニブは、既存のイマチニブなどと同じ選択的BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬である。しかし、既存のTKIがBCR-ABL1チロシンキナーゼのATP結合部位を標的とすることに対して、アシミニブはBCR-ABL1のアロステリック部位であるミリストイルポケットに特異的に結合し、ABL1キナーゼファミリー(ABL1、ABL2、BCR-ABL1)を選択的に阻害する、ABLミリストイルポケット結合型(STAMP)阻害薬として位置付けられている。そのことからも、既存のTKIに抵抗性を示す症例に対しての有効性が期待されている。

 日本人を含む、前治療薬(2つ以上のTKI)に抵抗性または不耐容の慢性期CML患者を対象とした国際共同第II相試験(A2301/ASCEMBL試験)において、同薬の有効性および安全性が確認された。海外では2022年2月時点、米国で承認されており、日本では2021年8月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 副作用として、主なものは頭痛、悪心、発疹、疲労(各5%以上)などがあり、重大なものは骨髄抑制(血小板減少症 [24.4%]、好中球減少症[17.9%]など)、膵炎(アミラーゼ増加[4.5%]、リパーゼ増加[3.2%]など)、QT間隔延長(1.3%)、感染症(肺炎[0.6%]など)、血管閉塞性事象(脳梗塞[0.6%]、心筋虚血[0.6%]など)が報告されているので十分注意する必要がある。 

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しなければならない。

●染色体検査または遺伝子検査によりCMLと診断され、2つ以上のTKIに抵抗性または不耐容の慢性期CML患者に使用すること

●他のTKI同様に、薬剤投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化が現れることがあるので、投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認し、投与開始前に適切な処置を行うこと(添付文書「重要な基本的注意」、「特定の背景を有する患者に関する注意」を参照)

●食事の影響を避けるために、食事の1時間前から食後2時間までの服用を避けること

●薬剤投与により、副作用が発現した場合には、添付文書の「用法および用量に関連する注意」に記載のある「副作用発現時の休薬、減量、中止の目安」を参考に休薬、減量または中止すること。減量した投与量で忍容性が認められた場合には1回のみ開始用量まで再増量することができる

●骨髄抑制など重大な副作用を予防する観点から、薬剤投与前から投与中は、定期的に個々の副作用に関連する臨床検査を実施すること(添付文書「重要な基本的注意」を参照)

●承認までの治験症例が限られていることから有効性および安全性に関するデータ収集のために、全使用症例で使用成績調査を実施すること

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