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【新薬】バルベナジントシル酸塩(ジスバル)
国内初の遅発性ジスキネジア治療薬

2022/05/27
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2022年5月25日、遅発性ジスキネジア治療薬のバルベナジントシル酸塩(商品名ジスバルカプセル40mg)が薬価収載された。同薬は3月28日に製造販売が承認されていた。用法用量は「1日1回40mgを経口投与する、症状により適宜増減するが1日1回80mgを超えないこと」となっている。

 遅発性ジスキネジアは、ドパミン受容体拮抗作用を有する抗精神病薬などを長期間服用することで起こる口腔顔面領域(舌、口唇、顎および顔面)、四肢および体幹の不随意運動を特徴とした神経障害であり、米国精神医学会の「DSM-5 精神障害の診断・統計マニュアル」では「神経遮断薬の少なくとも2〜3カ月以上の使用に関連して発現するアテトーゼ様、または舞踏病様の不随意運動(少なくとも2〜3週持続する)」と定義されている。

 一般的な初発症状は、軽度の不随意運動であるが、身体障害の重症度が進行すると、発語障害、関節の炎症、歩行障害および転倒等が生じる恐れがある。遅発性ジスキネジアのリスク因子としては、原因薬剤の投与期間および投与量以外に高齢、統合失調症、認知機能障害等が挙げられている。

 遅発性ジスキネジアは、黒質線条体のドパミン受容体の感受性が亢進することで発症すると考えられているが、より詳細な発症機序は十分解明されていないのが現状である。さらに、原因薬剤を減量または中止し、遅発性ジスキネジアが軽快に至ったとしても、精神症状の増悪や再発に繋がるリスクが高いことも報告されている。

 バルベナジンおよびその活性代謝物は、中枢神経系の前シナプスにおいて、モノアミン(ドパミン等)の貯蔵および遊離のために、細胞質からシナプス小胞へのモノアミンの取り込みを制御している小胞モノアミントランスポーター(VMAT)2を選択的に阻害するVMAT2阻害薬である。VMAT2を選択的に阻害してモノアミンの取り込みを抑制し、シナプス間隙に放出されるドパミン量を減少させることで、遅発性ジスキネジア患者における不随意運動を改善させることが期待されている。なお、VMAT2阻害薬としては2013年よりテトラベナジン(コレアジン)が「ハンチントン病に伴う舞踏運動」の適応で臨床使用されている。

 遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害または抑うつ障害の患者を対象とした国内第II/III相試験(プラセボ対照二重盲検試験)において、同薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2022年3月時点、米国、シンガポール、タイ、韓国、インドネシアで承認されている。

 副作用として、主なものは倦怠感(7.2%)などであり、重大なものは傾眠(16.9%)、流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、鎮静(1.2%)などが報告され、さらに重篤な過敏症、悪性症候群の可能性があるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●先天性QT延長症候群またはTorsades de pointesの既往のある患者には禁忌となっている

●1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合のみ増量を検討すること

●同薬の未変化体(バルベナジン)はCYP3Aで主に代謝され、活性代謝物は主にCYP2D6およびCYP3Aで代謝される。また、バルベナジンはP-gpを阻害する。このことから、CYP3AまたはCYP2D6の阻害薬、さらにはP‐gpの基質薬などとの併用では相互作用に注意する(添付文書の「用法および用量に関連する注意」「相互作用」参照)

●医薬品リスク管理計画書(RMP) では、重要な潜在的リスクとして「うつ病および自殺」「QT間隔延長」「高プロラクチン血症による有害事象」「錯乱」「悪性症候群」「嚥下障害」が挙げられている

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