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【新薬】ファリシマブ (バビースモ)
眼科領域における初のバイスペシフィック抗体

2022/05/20
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2022年3月28日、抗血管内皮増殖因子(VEGF)/抗アンジオポエチン(Ang)‐2バイスペシフィック抗体のファリシマブ(遺伝子組換え)(商品名バビースモ硝子体内注射液120mg/mL)の製造販売が承認された。同薬は22年5月25日に薬価収載予定である。適応は「①中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、②糖尿病黄斑浮腫」、用法用量は「①②6.0mg(0.05mL)を4週ごと、通常、連続4回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。①その後の維持期で、通常、16週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上空けること。②その後、投与間隔を徐々に延長し、通常、16週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、4週以上空けること」となっている。

 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性nAMD滲出型加齢黄斑変性)は、黄斑部に発生する脈絡膜からの異常血管が伸長することにより、網膜外層に滲出液、血液等が漏出し、網膜浮腫や網膜下の滲出液貯留が生じる。また、糖尿病黄斑浮腫DME)は糖尿病網膜症の合併症であり、網膜における血管透過性亢進に伴い血漿成分が漏出し、黄斑部に浮腫が起こる。両疾患共に、視力障害または失明に至る疾患である。そして、両疾患では炎症、血管の透過性亢進に伴う滲出性変化や黄斑浮腫、周皮細胞(ペリサイト)の脱落などによる血管の不安定化が生じており、これらの病態にはVEGF-A経路に加え、Ang-2経路の関与が考えられている。

 従来、nAMDに対する治療薬として、黄斑部の新生血管に集積する、光線力学的療法用製剤のベルテポルフィン(ビスダイン)およびVEGF阻害薬のラニビズマブ(遺伝子組換え)(ルセンティス)、アフリベルセプト(遺伝子組換え)(アイリーア)、ブロルシズマブ(遺伝子組換え)(ベオビュ)が用いられている。また、DMEにおいてはトリアムシノロンアセトニド(マキュエイド)やブロルシズマブを除く抗VEGF阻害薬が臨床使用されている。

 ファリシマブは、多くの網膜疾患に関与するVEGF-AとAng-2に対する、ヒト化二重特異性モノクローナルIgG1抗体であり、眼科領域初のバイスペシフィック抗体である。構造としてはVEGF-Aと結合する抗VEGF-A Fabと、Ang-2と結合する抗Ang-2 Fabが同一分子内に存在している。ファリシマブは、nAMDとDMEにおける病的血管新生や血管透過性亢進を引き起こすVEGF-2に加え、血管不安定化シグナルとして作用するAng-2を同時に阻害し、血管を安定化することで効果を発揮すると考えられている。

 アフリベルセプトを対照とした4つのグローバル第III相臨床試験(nAMD:国際共同第III相試験[TENAYA試験]および海外第III相試験[LUCERNE試験]、DME:国際共同第III相試験[YOSEMITE試験]および海外第III相試験[RHINE試験])において、本薬のアフリベルセプトとの非劣性、有効性および安全性が確認された。海外では、2022年1月時点、米国で承認されている。

 副作用として、主なものは血圧上昇、硝子体浮遊物、高眼圧症、角膜擦過傷、眼痛、眼部不快感(各1%未満)などであり、重大なものは、眼障害(眼内炎症[ぶどう膜炎、硝子体炎など][1.0%]、網膜色素上皮裂孔[0.4%])や、脳卒中(虚血性脳卒中、血栓性脳梗塞、ラクナ脳卒中[各0.05%])が報告されており、他に眼内炎、裂孔原性網膜剥離および網膜裂孔の可能性があるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておく必要がある。

●眼または眼周囲に感染、またはその恐れがある患者では、眼内炎などの重篤な副作用発現の可能性があり、禁忌である

●眼内に重度の炎症がある患者では、炎症が悪化する恐れがあり、禁忌である

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