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【新薬】ホスネツピタント塩化物塩酸塩(アロカリス)
抗癌薬による悪心・嘔吐に対する新たな制吐薬

2022/04/29
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2022年3月28日、制吐薬ホスネツピタント塩化物塩酸塩(商品名アロカリス点滴静注235mg)の製造販売が承認された。適応は「抗悪性腫瘍薬(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」、用法用量は「他の制吐薬との併用において、抗悪性腫瘍薬投与1日目に1回235mgを点滴静注する」となっている。

 癌化学療法によって引き起こされる悪心・嘔吐(CINV)は、患者の苦痛も強く、QOL低下が生じることから、治療継続に当たっては最も重要で解決しなければならない課題の1つである。また、これら症状の発現時期により、CINVは、「急性」「遅発性」「予測性」の3つに大別される。CINVのメカニズムは、抗悪性腫瘍薬投与により消化管粘膜の腸クロマフィン細胞からのセロトニン(5-HT)分泌が亢進し、嘔吐中枢が刺激されることにより発現する。また、腸クロマフィン細胞内に存在するサブスタンスPは、抗悪性腫瘍薬投与により分泌が亢進し、中枢神経系のニューロキニン1(NK1)受容体に結合することにより、CINVが誘発される。

 国内ガイドラインでは、シスプラチン(ランダ他)などの高度催吐性抗悪性腫瘍薬投与に伴うCINVに対してNK1受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗型制吐薬およびデキサメタゾンの3剤併用療法、カルボプラチン(パラプラチン他)などの中等度催吐性抗悪性腫瘍薬投与に伴うCINVに対しては5-HT3受容体拮抗型制吐薬およびデキサメタゾンの2剤併用療法が基本とされ、催吐性リスクに応じてNK 1受容体拮抗薬を追加することが推奨されている。このうち、NK1受容体拮抗薬の注射薬としてはホスアプレピタントメグルミン(プロイメンド他)が臨床使用されている。しかし、一方で副作用として注射部位反応が認められ、さらに5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロン塩酸塩(アロキシ他)との併用では配合変化が生じる問題があった。

 ホスネツピタントは、ホスアプレピタントメグルミンに次ぐ2番目のNK1受容体拮抗薬の注射薬である。ホスネツピタントは、ネツピタントのリン酸化プロドラッグ製剤であり、静注後、脱リン酸化酵素により速やかに活性本体ネツピタントに変換される。ネツピタントは、NK1受容体に対して、選択的な拮抗作用を示し、制吐作用を発揮する。高度催吐性抗悪性腫瘍薬投与に起因する消化器症状(悪心、嘔吐)に対する国内第III相試験(対照;ホスアプレピタント、10057030試験および10057040試験)において、ホスアプレピタントとの非劣性が検証され、有効性および安全性が確認された。

 副作用として、主なものは便秘、しゃっくり(各5%以上)、下痢、ALT上昇、頭痛、めまい、倦怠感、食欲不振(各1~5%未満)などであり、重大なものはショック、アナフィラキシーの可能性があるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項について留意しておかなければならない。

●抗悪性腫瘍薬投与前に投与を終了すること

●本薬の活性本体ネツピタントは薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3Aに対する阻害作用を有することから、CYP3Aで代謝される抗悪性腫瘍薬を含めた併用薬と薬物相互作用を起こすことがあるので、十分注意すること(添付文書の「相互作用」を参照)

●妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与禁忌である。また、妊娠する可能性のある女性には、投与中および投与終了後一定期間は、適切な避妊を行うよう指導すること

●安全性検討事項の重要な潜在的リスクとして、「投与による注射部位反応の可能性」が指摘されているので、十分注意すること(医薬品リスク管理計画書[RMP]を参照)

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