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【新薬】3-ヨードベンジルグアニジン(131I)(ライアットMIBG-I 131)
褐色細胞腫・パラガングリオーマに対する治療用放射性医薬品

2021/12/17
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年11月25日、放射性医薬品の3-ヨードベンジルグアニジン(131I)(商品名ライアットMIBG-I 131静注)が薬価収載された。本薬は、9月27日に製造販売が承認されており、22年1月18日に発売が予定されている。適応は「MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ」、用法用量は「成人に1回5.55~7.4GBqを1時間かけて点滴静注」となっている。

 褐色細胞腫(PCC)は副腎髄質、パラガングリオーマ(PGL)は副腎外の傍神経節のカテコールアミン産生クロム親和性細胞から発生する神経内分泌腫瘍であり、両者を総称して褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)と呼ぶ。PPGLの日本での患者数は約3000人と推定される希少癌であり、カテコールアミン過剰による高血圧、動悸、頻脈、胸痛、頭痛、顔面蒼白、発汗、不安感など、多彩な臨床症状を示すと共に高血糖、乳酸アシドーシス、体重減少などの代謝異常を認めることが多い。

 PPGL治療は手術治療が第一選択であり、その周術期管理のため、PPGLと診断が確定した場合には、直ちに過剰カテコールアミンの作用を阻害するドキサゾシンメシル酸塩(カルデナリン他)などのα遮断薬、メチロシン(デムサー)といったチロシン水酸化酵素阻害薬などの薬物療法が開始される。しかし、PPGLは、外科的切除により多くの症例で完治するものの、治癒切除不能な場合には有効な治療法がないため、アンメットメディカルニーズが高い疾患と言われている。

 PPGLはノルアドレナリンに類似した構造を有する3-ヨードベンジルグアニジン(MIBG)を副腎髄質や交感神経終末に取り込む性質を有しており、PPGLの診断薬としてMIBGのヨウ素を放射性ヨウ素(123I)で置換した化合物3-ヨードベンジルグアニジン(123I MIBG)のシンチグラフィが用いられている。放射性ヨウ素の123Iは物理学的半減期が約13時間と短く、放射線はガンマ線のみを放出するため、診断用途に適している。

 ライアットMIB-I 131は、放射性ヨウ素の核物理学的特性が異なる131Iで置換した放射性医薬品(131I MIBG)である。主にノルアドレナリントランスポーターを介した再摂取機構(uptake1)により腫瘍細胞内に取り込まれ、131Iから放出されるベータ線により細胞を傷害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。131Iは物理学的半減期が約8日と長く、ガンマ線に加えて、細胞傷害能力の高いベータ線も放出するため、治療用途に適している。

 131I MIBGの核医学治療は、国内外のガイドラインでは外科的切除による治癒が困難な症例(難治性PPGL)の治療選択肢として推奨されているが、国内では未承認のため、海外で承認されている薬剤を患者が個人輸入し、自由診療としてごく一部の患者でのみ行われていた。このことから、日本癌治療学会、日本内分泌学会、患者会などから厚労省へ治療用131I MIBGの開発が要望され、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(2012年12月)にて高い評価を受けて、今回の承認に至った。

 国内における123I MIBG集積陽性の治癒切除不能なPPGL患者を対象とした国内第II相臨床試験(P-1614-21)において、本薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2021年6月現在、ポーランドをはじめとする世界14ヵ国で承認されている。日本では、20年12月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 副作用は主に、悪心(68.8%)、食欲減退、便秘、唾液腺炎、高血圧、BNP増加、頭痛、倦怠感(各10%以上)などであり、重大なものはリンパ球減少(81.3%)、血小板減少(62.5%)、白血球減少(43.8%)、好中球減少(25.0%)などの骨髄抑制が認められているので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては下記の事項について留意しておかなければならない。

●本薬投与にあたっては、遊離した放射性ヨードが甲状腺に摂取されるのを防止するため、投与前からヨード製剤を投与すること

●投与により骨髄抑制が発現する可能性があるので、投与前および投与中は適的に血液検査を行い、患者の状態を十分観察すること

●放射線に起因する生殖細胞への影響等がある可能性のため、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌である

●国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施すること

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