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【新薬】エンホルツマブ ベドチン(パドセブ)
根治切除不能な尿路上皮癌に対する抗体薬物複合体

2021/12/10
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年11月30日、抗悪性腫瘍薬のエンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え)(商品名パドセブ点滴静注用30mg)が発売された。本薬は9月27日に製造販売が承認され、11月25日に薬価収載されていた。適応は「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」、用法用量は「1.25mg/kg(体重)を30分以上かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続し、4週目は休薬。これを1サイクルとして繰り返す。ただし、1回量は1.25mgを超えないこととし、患者の状態により適宜減量する」となっている。

 尿路上皮癌は、尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)の上皮粘膜に発生する癌である。泌尿器科領域の癌において前立腺癌に次ぎ罹患患者が多い膀胱癌は、そのほとんどが尿路上皮癌である。また、同じ尿路上皮から発生する腎盂・尿管癌は、膀胱癌に比べてまれであり、全尿路上皮腫瘍の約5%程度とされている。尿路上皮癌の一次治療としてはシスプラチン(ランダ他)などの白金製剤を含む化学療法および、PD-1阻害薬(ニボルマブ[遺伝子組換え][オプジーボ]など)やPD-L1阻害薬(アベルマブ[遺伝子組換え][バベンチオ]など)といった免疫チェックポイント阻害薬が臨床使用されている。

 エンホルツマブ ベドチンは、尿路上皮癌細胞の表面に存在する接着蛋白Nectin-4を標的とする抗Nectin-4ヒト型IgG1モノクローナル抗体(エンホルツマブ)と、微小管(チューブリン)阻害作用をもつ低分子薬剤(モノメチルアウリスタチンE:MMAE)とを、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体(ADC)である。腫瘍細胞の細胞膜上に発現するNectin-4に結合し、細胞内に取り込まれた後にプロテアーゼによりリンカーが切断され、MMAEが細胞内へ遊離する。そして、遊離したMMAEは細胞内の微小管ネットワークを破壊し、続いて細胞周期をG2/M期に停止させ、アポトーシスを誘導することなどにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

 エンホルツマブ ベドチンと同様にMMAEを用いたADC製剤としては、2014年4月よりCD30抗体を標的とするブレンツキシマブ ベドチン(遺伝子組換え)(アドセトリス)がCD30陽性のホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、2021年5月よりCD79bを標的とするポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え)(ポライビー)が再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の適応で臨床使用されている。

 白金製剤およびPD-1/PD-L1阻害薬の治療歴のある根治切除不能な尿路上皮癌患者(日本人を含む)を対象とした国際共同第III相試験(EV-301試験)において、化学療法群(ドセタキセル水和物[タキソテールワンタキソテール他]、パクリタキセル[タキソール他]、vinflunine[国内未承認])との比較で本薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2021年7月現在、米国で承認されている。また、日本での製造販売承認申請は、厚労省から優先審査の指定を受けていた。

 主な副作用は、脱毛症(45.3%)、疲労、食欲減退、そう痒症(各30%以上)などであり、重大なものは末梢性感覚ニューロパチー(33.8%)などの末梢性ニューロパチー(46.3%)、好中球減少(16.6%)や貧血(11.5%)などの骨髄抑制、肺炎などの感染症(14.5%)、高血糖(6.4%)、急性腎障害(2.0%)などの腎機能障害、間質性肺疾患(2.4%)が報告されており、中毒性表皮壊死融解症(TEN)などの重度の皮膚障害発現の可能性もあるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては下記の事項について留意しておかなければならない。

●致死的な重度の皮膚障害発現の可能性もあるので、万が一、発現した場合は投与を中止して、皮膚科医と連携の上、適切な処置(ステロイド、抗ヒスタミン薬の使用など)を行うこと(添付文書上の「警告」および「重要な基本的注意」欄を参照)

●副作用が発現した場合は、添付文書の「用法及び用量に関連する注意」の記載を参考に、休薬、減量または中止すること

●薬剤1バイアル(30mg)を注射用水3.3mLに溶解し、10mg/mLの濃度にすること

●国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施すること

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