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【新薬】タゼメトスタット臭化水素酸塩(タズベリク)
再発・難治性の濾胞性リンパ腫へのEZH2阻害薬

2021/10/08
北村 正樹(医薬情報アドバイザー、薬剤師)

 2021年8月16日、抗悪性腫瘍薬タゼメトスタット臭化水素酸塩 (商品名タズベリク錠200mg)が発売された。本薬は6月23日に製造販売が承認され、8月12日に薬価収載されていた。適応は「再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」、用法用量は「通常、成人に1回800mgを1日2回経口投与。なお、患者の状態により適宜減量」となっている。

 日本の悪性リンパ腫の罹患率は、年々増加傾向にあり、男女比は約3:2と男性に多く、65~74歳が発症のピークである。組織学的にはホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)に大別されるが、日本では大半がNHLであり、HLの頻度は全悪性リンパ腫のうち5~10%程度とされている。

 濾胞性リンパ腫(FL)はNHLの10~20%を占める低悪性度B細胞リンパ腫である。FLは一般的に進行が遅く、化学療法の感受性は良好であるが、ほとんどの進行期症例では組織学的進展などによって化学療法抵抗性となり寛解維持が困難で、長期にわたる再発を繰り返すことが多いことから依然として治癒が困難な疾患である。

 FLの治療は、病期や腫瘍量により放射線療法や国内外のNHL治療ガイドラインなどで推奨されている、抗CD20モノクローナル抗体のリツキシマブ(遺伝子組換え)(リツキサン;R)やオビヌツズマブ(遺伝子組換え)(ガザイバ;G)を併用した化学療法(R-CHOP療法、R-CVP療法、G-CHOP療法、BR療法)などである。
※C;シクロホスファミド、H;ドキソルビシン、OまたはV;ビンクリスチン、P;プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン、B;ベンダムスチン

 FLのうち、7~27%がEZH2遺伝子に機能獲得型変異を有すると報告されており、EZH2は、ヒストンH3の27番目のリジン残基(H3K27)に対するヒストンメチル基転移酵素(HMT)であり、ポリコーム複合体PRC2のサブユニットとして、H3K27のモノメチル化、ジメチル化およびトリメチル化を触媒する。H3K27のトリメチル化は、造血幹細胞など多くの幹細胞や癌細胞のクロマチンにおいて亢進し、細胞分化に関わる遺伝子あるいは癌遺伝子の発現制御や細胞増殖に関与している。

 タゼメトスタットはEZH2を選択的かつ可逆的に阻害する日本初となる経口のEZH2阻害薬である。詳細な作用機序は解明されていないものの、変異型EZH2(Y646Fなど)のメチル化活性を阻害することで、H3K27などのメチル化を阻害し、細胞周期停止およびアポトーシス誘導を生じさせることにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと推測されている。

 国内第II相試験(コホート1;1つ以上の化学療法又は抗体療法の治療歴を有し、かつ標準的な治療選択肢がないEZH2遺伝子変異陽性の再発または難治性のFL 患者を対象)、海外第I/ II相臨床試験(第II相パート コホート4;2つ以上の前治療歴を有するEZH2遺伝子変異陽性の再発または難治性のFL患者を対象)において、本薬の有効性および安全性が確認された。海外では2021年6月現在、米国で承認されている。

 副作用として、味覚異常(24.2%)、悪心(16.1%)、脱毛症(19.4%)、下痢、口内炎、腹痛、倦怠感、疲労、筋痙縮、食欲減退、低リン酸血症、皮疹(各5~15%未満)などであり、重大な副作用として、骨髄抑制[血小板減少(11.3%)、好中球減少(9.7%)など]、肺炎などの感染症(30.6%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 また、本薬の使用に際しては以下の事項に留意しておかなければならない。

 ●EZH2遺伝子変異検出のコンパニオン診断薬(コバスEZH2変異検出キット)を用いて、本薬投与の該当患者を事前に確認すること

 ●本薬は、少なくとも2つの標準的な治療が無効または治療後に再発した患者を対象とすること

 ●骨髄抑制が現れることがあるので、投与開始前および投与期間中は定期的に血液学的検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること

 ●投与により副作用が発現した場合は、添付文書の「用法及び用量に関連する注意」の記載を参考に、休薬、減量または中止すること。

 ●国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施すること。

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