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【新薬】ギボシランナトリウム(ギブラーリ)
急性肝性ポルフィリン症に対するsiRNA製剤

2021/10/01
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年8月30日、急性肝性ポルフィリン症AHP)治療薬のギボシランナトリウム(商品名ギブラーリ皮下注189mg)が発売された。本薬は、6月23日に製造販売が承認、8月12日に薬価収載されていた。用法用量は「12歳以上の患者に2.5mg/kgを1カ月に1回皮下投与」となっている。

 AHPは、主に肝臓で生じた遺伝子変異が原因となり、ヘムの生合成に必要な特定の酵素が先天的に欠如することでヘム産生量が減少し、中間体であるポルフィリンが毒性量まで蓄積する代謝性疾患である。労働年齢や出産年齢の女性に偏って発生し、最も多く認められる症状は重症かつ原因不明な腹痛などの消化器症状であり、随伴症状として、四肢痛や神経症状(四肢麻痺、筋力低下など)、精神症状(幻覚、妄想など)、自律神経症状(高血圧、頻脈など)が認められ、適切に治療しなければ、呼吸停止など致死的な経過をたどることも知られている。

 AHPには、欠損酵素により、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、異型ポルフィリン症(VP)、アミノレブリン酸脱水酵素欠損性ポルフィリン症(ADP)の異なる4病型がある。発症頻度は病型ごとに相違はあるものの、いずれも主要な病態生理は共通しており、肝臓の5’-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)1遺伝子のメッセンジャーRNA(ALAS1 mRNA)が誘導され、神経毒性物質のポルフィリン前駆物質アミノレブリン酸(ALA)およびポルフォビリノーゲン(PBG)が蓄積することで神経系とその他の様々な臓器が損傷し、急性の内臓神経発作および慢性の障害を引き起こす。

 従来、AHPの治療は、初期治療としてグルコースやオピオイド鎮痛薬の静脈投与、制吐薬などの対症療法、および既知の増悪因子(特定の薬剤、飢餓状態など)の除去が行われており、2013年8月からは、ALAS1の合成を抑制することでALAおよびPBGの蓄積を低減させる生物由来(ヒト血液)製剤のヘミン(ノーモサング)が使用されるようになった。しかし、ヘミンは作用時間が短く、静脈炎の発現防止として大口径の末梢静脈カテーテルや中心静脈カテーテルを用いるため、カテーテル留置による感染症および血栓症のリスクも問題となっていた。

 ギボシランはALAS1 mRNAを標的とする二本鎖の低分子干渉リボ核酸(siRNA)であり、選択的に肝臓に伝達されるようにアシアロ糖蛋白質レセプターのリガンドであるN-アセチルガラクトサミンにsiRNAが結合した構造を有している。本薬は、RNA干渉により肝細胞内でALAS1 mRNAの分解を促進し、肝臓におけるALAS1 mRNA濃度を減少させる。これにより、AHPの発作などの症状を引き起こす要因のALAおよびPBGの血中濃度を抑制する。

 AHP患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)において、本薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2021年8月現在、米国、欧州、ブラジル、カナダ、スイスおよびイスラエルで承認されている。また、日本では、2020年6月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 なお、siRNA製剤としては、2019年9月より「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」の適応でパチシランナトリウム(オンパットロ)が臨床使用されている。

 ギボシランの副作用は、腹痛、便秘、下痢、悪心、嘔吐、無力症、疲労、注射部位反応、発熱、インフルエンザ、上咽頭炎、上気道感染、リパーゼ増加、血中ホモシステイン増加、頭痛、片頭痛、そう痒症(各5%以上)などであり、重大なものはアナフィラキシー(0.9%)、肝機能障害、腎機能障害(各13.5%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 また、本薬の使用に際しては以下の事項に留意しておかなければならない。

●投与が予定より遅れた場合は、可能な限り速やかに投与し、以後、その投与を起点として、1カ月間隔で投与すること

●投与により、ALTまたはAST上昇を伴う肝機能障害が発現する可能性があるので、投与開始前に肝機能検査を行い、投与開始後6カ月間は月1回を目安に、それ以降は定期的に肝機能検査を行うこと。また、臨床的に顕著な肝機能検査値の変動が認められた場合は、休薬または投与を中止し、肝機能検査値が改善したことを確認した場合は、1回1.25mg/kgとするなど、慎重に投与を再開すること

●投与により、血清クレアチニンの上昇またはeGFRの低下が見られることがあるので、定期的に腎機能検査を行うこと

●承認までの治験症例が限られていることから有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例で使用成績調査を実施すること

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