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【新薬】ツシジノスタット(ハイヤスタ)
成人T細胞白血病リンパ腫に初のHDAC阻害薬

2021/09/17
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年8月12日、抗悪性腫瘍薬ツシジノスタット(商品名ハイヤスタ錠10mg)が薬価収載された。本薬は、6月23日に製造販売が承認されていた。適応は「再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫」、用法用量は「1日1回40mgを週2回、3又は4日間隔で食後に経口投与する。患者の状態により適宜減量」となっている。

 成人T細胞白血病リンパ腫ATL)は、レトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)が白血球中のT細胞に感染し、感染したT細胞から癌化した細胞(ATL細胞)が無制限に増殖することで発症するT細胞リンパ腫の中でも悪性度が高い。感染経路は、輸血、性交、母乳が知られているが、ATL発症につながる重要な感染経路は母乳による母子感染である。多くの場合は感染しても発症しないキャリアとなるが、生涯でATLを発症する確率は約5%であり、数十年の潜伏期を経て、ATLを発症する。発症年齢は20代までは極めてまれで、その後増加し、60歳頃をピークに、以降徐々に減少する。ATL発症後の主な症状としては、リンパ節腫脹、肝臓や脾臓の腫脹、紅斑などの皮膚症状、日和見感染などが出現する。

 ATLの臨床病態としては、「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」の4つに分類されているが、中でも「急性型」「リンパ腫型」および予後不良因子を有する「慢性型」は、アグレッシブATLと称され、急速に症状が進行することから早期治療が必要である。

 現在、アグレッシブATLに対する治療としては、未治療に対してビンクリスチン硫酸塩(オンコビン)、シクロホスファミド水和物(エンドキサン)、ドキソルビシン塩酸塩(アドリアシン他)、プレドニゾロン(プレドニン他)、ラニムスチン(サイメリン)、ビンデシン硫酸塩(フィルデシン)、エトポシド(ベプシドラステット他)、カルボプラチン(パラプラチン他)、シタラビン(キロサイド他)、メトトレキサート(メソトレキセート他)を併用するmLSG15療法などの多剤併用療法、さらにペントスタチン(コホリン、DCF)、ソブゾキサン(ペラゾリン、MST-16)、レナリドミド水和物(レブラミド)、モガムリズマブ(遺伝子組換え)(ポテリジオ)などが再発または難治性ATLに対する化学療法レジメンとして用いられている。しかし、いずれの治療によっても根治に至らず予後不良であり、新たな治療薬の開発が望まれていた。

 ツシジノスタットは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)のアイソフォーム(HDAC1、HDAC2、HDAC3[クラスI]ならびにHDAC10[クラスIIb])の酵素活性を広く阻害することで、癌の細胞周期の停止や細胞死を誘導し、抗腫瘍作用を発揮すると考えられている。HDAC阻害薬として、既に本薬以外にも皮膚T細胞性リンパ腫の適応でボリノスタット(ゾリンザ)、再発または難治性の多発性骨髄腫の適応でパノビノスタット乳酸塩(ファリーダック)、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫の適応でロミデプシン(イストダックス)が臨床使用されているが、ツシジノスタットはATL治療薬として初のHDAC阻害薬である。

 承認時までのモガムリズマブの治療歴を含む再発または難治性のATL患者を対象とした国内第IIb相試験(HBI-8000-210試験)において、本薬の有効性および安全性が検証された。海外では、2020年8月現在、中国で再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、局所進行性または転移性の乳癌の適応で承認されている。日本では、2020年8月に再発または難治性ATLにおいて希少疾病用医薬品の指定を受けている。

 副作用として、下痢、悪心、倦怠感、体重減少、食欲減退、低アルブミン血症、味覚異常(各10%以上)などがあり、重大なものは血小板減少(78.3%)、好中球減少(52.2%)などの骨髄抑制、間質性肺疾患(4.3%)、ニューモシスチス・イロベチイ肺炎、尿路感染(各4.3%)などの感染症、第一度房室ブロック、動悸(各4.3%)などの不整脈およびQT延長が報告されているので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても十分留意しておかなければならない。

●投与中に副作用が発現した場合には、添付文書の「用法及び用量に関連する注意」を参考に休薬、減量または中止すること

●骨髄抑制が出現することがあるので、投与前および投与中は定期的に血液検査を行い、患者の状態を十分に観察すること

●骨髄抑制が出現することがあるので、投与前および投与中は必要に応じて心機能検査(心電図、心エコー検査など)および電解質検査(カリウム、カルシウムなど)を行い、患者の状態を十分観察し、必要に応じて電解質を補正すること

●承認までの治験症例が限られていることから有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例で使用成績調査を実施すること

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