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【新薬】エレヌマブ(アイモビーグ)
片頭痛発作を抑制する抗CGRP受容体抗体製剤

2021/08/27
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年8月12日、片頭痛発作発症抑制薬エレヌマブ(遺伝子組換え[商品名アイモビーグ皮下注70mgペン])が薬価収載と同時に発売された。本薬は6月23日に製造販売が承認されていた。適応は「片頭痛発作の発症抑制」、用法用量は「成人には70mgを4週間に1回皮下投与」となっている。

 片頭痛は、一次性頭痛の中でも臨床的に重要な疾患であり、片側性で拍動性の中等度から重度の頭痛発作が繰り返し生じ、4~72時間にわたり継続する。そして、頭痛と共に悪心、嘔吐、光過敏症および音過敏症を伴うことが多く、日常的な動作で頭痛が増悪するため生活に大きな支障を来すといわれている。坂井文彦氏らの報告によると1)日本における片頭痛有病率は8.4%、男女比は(女/男)約3.6であり、男女共、20~50歳代の勤労世代に多く見られる。

 片頭痛の治療は、頭痛症状を軽減・消失させる急性期治療と、片頭痛発作を抑制する予防療法に大別される。急性期治療では、片頭痛発作を確実に消失させ、通常の日常生活を維持させることが急務となり、薬物療法が中心となる。重症度により、アセトアミノフェンや非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が軽度~中等度に、スマトリプタンコハク酸塩(イミグラン他)などのセロトニン受容体(5-HT 1B/1D)作動薬であるトリプタン系薬、さらに2021年4月より抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体製剤ガルカネズマブ(遺伝子組換え[エムガルティ])が使用されている。また、急性期治療では不十分な場合に予防療法が選択され、バルプロ酸ナトリウム(デパケン他)などの抗てんかん薬、プロプラノロール塩酸塩(インデラル他)などのβ遮断薬、アミトリプチリン塩酸塩(トリプタノール他)などの抗うつ薬が使用されている。

 片頭痛の病態生理はいまだ確定的な機序は解明されておらず、従来から血管説、神経説および三叉神経血管説が病態仮説として提唱されてきた。しかし、研究が進むにつれて、現在は三叉神経血管系、脳幹部の下行性疼痛抑制系および各種神経ペプチドが片頭痛の発症に重要な役割を果たしていることが解明されてきた。特に、三叉神経終末から放出されている神経ペプチドであるCGRPが発作の疼痛に密接に関与している可能性が示唆されている。このCGRPは、血管拡張因子であり、多くの炎症メディエーターの産生および分泌の促進、炎症組織の充血、浮腫および疼痛を引き起こすことが確認されている。

 エレヌマブは、既存のガルカネズマブと同様に片頭痛発作の発現に関与するCGRPの作用を阻害するものの、ガルカネズマブがCGRPに選択的に結合し、CGRPの生理活性を阻害する抗CGRPモノクローナル抗体であるのに対して、エレヌマブはCGRP受容体を特異的に阻害することでCGRP受容体シグナルの伝達を阻害する、抗CGRP受容体モノクローナル抗体である。プラセボを対照とした国内第II相試験(対象;反復性片頭痛患者)および国内第III相試験(対象;反復性片頭痛および慢性片頭痛患者)において、本薬の有効性および安全性が検証された。海外では、2021年1月現在、欧米を中心に世界67の国または地域で承認されている。

 副作用は、便秘、注射部位反応(紅斑、そう痒感、腫脹など)、傾眠(各1%以上)などであり、重大なものとして重篤な過敏症反応、重篤な便秘の可能性があるので十分注意する必要がある。

 また、ガルカネズマブと同じ作用機序を有し、「4週間に1回」または「12週間に1回」の2つの投与方法が可能なフレマネズマブ(遺伝子組換え[アジョビ皮下注225mgシリンジ])がエレヌマブと同時期に片頭痛発作治療薬として承認および薬価収載されている。


【参考文献】
1)Cephalagia.1997;17:15-22.

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