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【新薬】ホリトロピンデルタ(レコベル)
不妊治療における初のヒト由来遺伝子組換えFSH製剤

2021/07/23
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年3月23日、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)製剤ホリトロピンデルタ(遺伝子組換え[商品名レコベル皮下注12μgペン、同36μgペン、同72μgペン])の製造販売が承認された。適応は「生殖補助医療における調節卵巣刺激」、用法用量は「通常、投与開始前の血清抗ミュラー管ホルモン(AMH)値及び体重に基づき、算出した投与量を、月経周期2日目又は3日目から1日1回皮下投与し、卵胞が十分に発育するまで継続する。なお、算出した投与量が6μgを下回る場合は6μg、12μgを上回る場合は12μgを1日投与量とする」となっている。

 世界保健機関(WHO)は、生殖器系疾患である不妊症について「ある一定期間(1年間が一般的)避妊することなく性交渉を行っているにも関わらず、妊娠の成立を見ない場合」と定義している。不妊症の治療には、薬物療法、外科的手術、人工授精や体外受精あるいはこれらが併用される。タイミング法や人工授精などの一般的な不妊治療により妊娠しない場合、体外受精・胚移植、卵細胞質内精子注入法・胚移植、凍結・融解胚移植などの生殖補助医療(ART)が不妊治療の選択肢となっている。

 脳下垂体前葉で産生されるFSHは、顆粒膜細胞に発現するFSH受容体に結合してエストロゲンの合成を促進し、卵胞の発育および卵母細胞の成熟に寄与している。国内ではチャイニーズハムスター卵巣細胞株由来のFSH製剤ホリトロピンアルファ(遺伝子組換え[ゴナールエフ])が、ARTにおける調節卵胞刺激で複数卵胞発育を促す目的で臨床使用されている。しかし、一方で、FSH製剤投与時の最も重篤な合併症として、急性腎不全や血栓症などをもたらす卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発現が治療遂行の大きな問題となっていた。このことから、既存のFSH製剤では、超音波検査および血清エストラジオール濃度測定によりOHSSの徴候がないことを確認し、投与中の用量調節に注意が必要となっていた。

 ホリトロピンデルタは、世界初となるヒト由来細胞株(ヒト胚性網膜芽細胞)を用いて製造された遺伝子組換えFSH製剤である。ヒト由来細胞株にFSHを分泌する遺伝子を組み込むことで、無血清条件下でホリトロピンデルタを生成し、内因性のFSHと同様の糖鎖を有する。この糖鎖構造により、内因性FSHと同様に血中クリアランスが低下し、安定した血中FSH濃度が期待される。また、製剤的にも血清抗ミュラー管ホルモン値および体重に基づいた個々の投与量アルゴリズムにより、各患者の特性を踏まえた治療および在宅自己注射が可能なペン型注入器付き注射薬である。生殖医療を受ける日本人女性(20~40歳)を対象とした国内第3相試験にて本薬の有効性と安全性が検証された。海外では、2016年12月に欧州で承認されて以来、2020年11月現在、世界63カ国以上の国または地域で承認されている。

 副作用は卵巣腫大、骨盤液貯留(各2%以上)等であり、重大な副作用としてはOHSS(10.6%)が報告されているので十分注意する必要がある。また、薬剤使用に際しては既存のホリトロピンアルファと同様、警告欄に下記の注意喚起がなされていることに留意しなければならない。

●血栓塞栓症を伴う重篤な卵巣過剰刺激症候群が現れることがあるので、用法および用量、使用上の注意に特に留意すること。予想されるリスクおよび注意すべき症状について、あらかじめ患者に説明を行うこと。

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