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【新薬】オシロドロスタットリン酸塩(イスツリサ)
クッシング症候群に対する新たなACTH合成阻害薬

2021/07/16
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年6月30日、副腎皮質ホルモン合成阻害薬オシロドロスタットリン酸塩(商品名イスツリサ錠1mg、同錠5mg)が発売された。本薬は3月23日に製造販売が承認、5月19日に薬価収載されていた。適応として「クッシング症候群(外科的処置で効果が不十分又は施行が困難な場合)」、用法用量は「通常、成人には1回1mgを1日2回投与で開始するが、開始用量は患者の状態に応じて適宜減量する。その後、患者の状態により適宜増減するが、最高用量は1回30mgを1日2回」となっている。

 クッシング症候群は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)による刺激または副腎皮質の機能亢進により副腎皮質からコルチゾールが過剰分泌されることにより、慢性的に高コルチゾール血症を呈する疾患群である。そして、病型としてACTH過剰分泌によるACTH依存性とコルチゾール過剰分泌によるACTH非依存性に大別されており、さらにACTH依存性はクッシング病と異所性ACTH産生腫瘍に分類され、ACTH非依存性は副腎腺腫、副腎癌、ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成(AIMAH)および原発性色素沈着結節性副腎皮質病変(PPNAD)に分類されている。

 クッシング症候群は、いずれの病型でも副腎皮質からコルチゾールが過剰分泌することから、コルチゾール濃度を正常化させることが最終的な治療目標である。現在、治療の第一選択は原因となる病変の外科的切除となっているが、切除によっても寛解に至らない患者または再発する患者も存在し、その場合には放射線療法または薬物療法が実施されている。この中で、クッシング症候群の薬物療法としては副腎皮質合成ホルモン阻害薬としてミトタン(オペプリム)、トリロスタン(デソパン)、メチラポン(メトピロン)が経口薬で使用されており、さらにACTH分泌を抑制する持続性ソマトスタチンアナログ製剤であるパシレオチドパモ酸塩(シグニフォー)がクッシング病に対する筋注製剤として臨床使用されている。

 しかし、既存のクッシング症候群に対する副腎皮質ホルモン合成阻害薬では、治療遂行にあたって下記の問題が指摘されていた。

●ミトタンは、治療濃度に到達するまでに3~5カ月を要し、副腎皮質の不可逆的破壊による副腎不全の可能性がある

●トリロスタンは、効果発現が緩徐で副腎皮質ホルモン合成阻害作用も弱い

●メチラポンは、半減期が2時間未満と短く、夜間のコルチゾール増加が懸念される

 オシロドロスタットは、既存の薬剤と同じ副腎皮質ホルモン合成阻害薬であるが、副腎でのコルチゾールの生合成の最終段階を触媒する11β₋水酸化酵素(CYP11B1)の阻害作用を有している。CYP11B1阻害作用により副腎でのコルチゾール生合成を抑制し、高コルチゾール血症を是正すると考えられている。さらに、その作用機序からクッシング症候群のいずれの病型に対しても有効であると期待されている。また、既存の薬剤は1日3回以上の投与であるが、本薬は1日2回投与であるという特徴もある。クッシング病患者に対する国際共同第2相試験および国際共同第3相試験、クッシング症候群(クッシング病を除く)患者を対象とした国内第2相試験などから、本薬の有効性および安全性が検証された。2021年4月現在、欧州(適応症はクッシング症候群)、米国(適応症はクッシング病)で承認されている。

 副作用として、疲労(30%以上)、低カリウム血症、食欲減退、浮動性めまい、頭痛、低血圧、悪心、嘔吐、下痢、男性型多毛症、痤瘡、血中コルチコトロピン増加、血中テストステロン増加、浮腫、倦怠感(各5~30%未満)等であり、重大なものは低コルチゾール血症(53.9%)、QT延長(3.6%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 また、薬剤投与に際しては下記の事項について留意しなければならない。

●血中・尿中コルチゾール値、臨床症状等により投与量を調節すること。さらに、投与開始後、用量を漸増する場合は1~2週間に1回を目安に増量し、増量幅は1回1~2mgを目安とすること

●投与開始後、十分な臨床効果が継続されるまでは、1~2週間に1回を目安に血中・尿中コルチゾール値等を測定すること。また、その後も定期的に測定すること

●中等度(Child-Pugh分類クラスB)の肝機能障害患者では、1回1mgを1日1回、重度(Child-Pugh分類クラスC)では1回1mgを2日に1回を目安に投与を開始し、投与タイミングは夕方とすることが望ましい

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