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【新薬】イネビリズマブ(ユプリズナ)
NMOSDの再発防止に、6カ月1回投与の抗CD19モノクローナル抗体製剤が登場

2021/07/09
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年6月1日、抗CD19モノクローナル抗体イネビリズマブ(遺伝子組換え[商品名ユプリズナ点滴静注100mg])が発売された。本薬は3月23日に製造販売が承認、5月19日に薬価収載されていた。適応は「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」であり、用法用量は「通常、成人に1回300mgを初回、2週後に点滴静注し、その後、初回投与から6カ月後に、以降6カ月に1回の間隔で点滴静注」となっている。

 中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患である多発性硬化症(MS)の中には、主として視神経と脊髄に由来する症候を呈する、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)が知られている。このNMOSDは、重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする抗アクアポリン4(AQP4)抗体が主に関与している自己免疫性中枢神経疾患であり、再発を繰り返すことで障害が悪化し、再発時の重症度は重度であることが多く、単回の発作で失明や車椅子生活に至ることも報告されている。NMOSDは世界的に患者数が少ない希少疾病で10万人あたり0.52~4.4人と報告され、日本では、2012年の全国疫学調査でNMOSD患者数が4370人、有病率は3.42人/10万人と推計され、抗AQP4抗体陽性症例では9割以上が女性であり、小児から高齢者まで幅広く発症し、発症年齢のピークは30歳代後半~40歳代前半である。

 NMOSDの再発予防の標準予防薬としては、経口ステロイドおよびアザチオプリンイムランアザニン)などの免疫抑制薬などが使用されているが、これらのステロイドや免疫抑制薬などの投与でも多くの患者で再発を抑制できない症例や、再発が抑えられてもステロイドの長期使用による副作用発現が大きな問題となっていた。しかし近年、抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤エクリズマブ(遺伝子組換え[ソリリス
)や、2020年8月よりヒト化抗ヒトIL-6レセプター(IL-6R)モノクローナル抗体サトラリズマブ(遺伝子組換え[エンスプリング])が臨床使用されている。

 イネビリズマブは、B細胞特異的表面抗原であるCD19に結合し、抗体を産生する形質芽細胞や形質細胞を含むB細胞を減少させるヒト化抗CD19モノクローナル抗体であり、さらに均一に脱フコシル化された抗体を産生するフコシル基転移酵素欠損チャイニーズハムスター卵巣細胞株を用いて、モノクローナル抗体16C4 を発現させることにより糖鎖部分を改変したヒト化脱フコシル化IgG1κモノクローナル抗体である。すなわち、モノクローナル抗体のFc領域からフコースを除去することにより、活性化Fcガンマ受容体(FcγR)IIIAに対する親和性が約10倍に増大し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機序を介したNK細胞によるB細胞の減少を著しく向上させる特徴を有している。また、本薬は投与間隔が6カ月に1回の投与で患者への負担が少ないことが特徴となっている。

 日本人を含むNMOSD患者を対象とした第II/III相国際共同試験において、プラセボ群と比較して本薬の有効性および安全性が検証された。海外では、2021年3月現在、米国のみで承認・発売されている。また、日本では2020年2月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 副作用として、頭痛、貧血、リンパ球数減少、好中球減少症、咳嗽、悪心、下痢、脱毛症、関節痛、末梢性浮腫 (各1%以上5%未満) などであり、重大なものは、感染症 (12.4%)、infusion reaction (12.0%)が報告されており、また進行性多巣性白質脳症 (PML)を発現する可能性もあるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項について十分留意しておかなければならない。

・本薬と同様なB細胞減少作用を有する抗CD20モノクローナル抗体製剤を投与したB型肝炎ウイルスキャリアの患者で、治療期間中または治療終了後に、劇症肝炎または肝炎の増悪、肝不全による死亡例が報告されている。このことから、本薬投与前にB型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること

・治療開始に際しては、重篤な感染症などの副作用が現れること、および本薬が疾病を完治させる薬剤でないことも含めて患者に十分説明し、理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること

・Infusion reactionのリスクを低減し症状をコントロールするため、本薬投与の30分~1時間前に抗ヒスタミン薬および解熱鎮痛薬を経口投与にて、本薬投与の30分前にステロイドを静脈内投与にて前投与し、患者の状態を十分に観察すること

・本薬の血中濃度低下により再発の恐れがあるため、投与間隔を遵守すること

・承認までの治験症例が限られていることから有効性および安全性に関するデータ収集のために、全使用症例で使用成績調査を実施すること

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