日経メディカルのロゴ画像

【新薬】オファツムマブ(ケシンプタ)
多発性硬化症を治療する月1回投与のペン型皮下注製剤

2021/06/11
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年5月24日、多発性硬化症治療薬オファツムマブ(商品名ケシンプタ皮下注20mgペン)が発売された。本薬は3月23日に製造販売が承認、5月19日に薬価収載されていた。適応は「再発寛解型多発性硬化症または疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症における再発予防および身体的障害の進行抑制」、用法用量は「通常、成人に1回20mgを初回、1週後、2週後、4週後に皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射」となっている。なお、同一成分の点滴静注製剤であるアーゼラが、抗悪性腫瘍薬として2013年5月から「再発または難治性のCD20陽性の慢性リンパ性白血病」の適応で臨床使用されていたが、2021年4月に販売中止が発表された。

 多発性硬化症MS)は、脳・視神経・脊髄などの中枢神経系に時間的・空間的に病変が多発する炎症性脱髄疾患であり、日本では指定難病とされている。自己免疫応答による中枢神経内の炎症により脱髄や軸索の損傷が生じることで、歩行障害、嚥下・構音障害、視覚障害などの多岐にわたる神経症状を呈する。主な身体的障害は歩行障害であり、適切な時期に適切な治療を受けられなければ、病態が進行し車椅子生活を余儀なくされる場合もある。

 国内のガイドラインで、MSは臨床経過に基づき、急性増悪(再発)と寛解を繰り返す再発寛解型(RRMS)、RRMSの経過をたどった後に再発の有無にかかわらず身体的障害が進行する二次性進行型(SPMS)、発症時から再発を伴わずに身体的障害が進行する一次性進行型(PPMS)の3病型に分類されている。MS患者の約85%はRRMSとして発症後、再発と寛解を繰り返しながら、約半数がSPMSに移行し、移行後も一定期間は再発が認められるが、病態の進行に伴い徐々に再発は認められなくなる。RRMSと再発が認められる段階にあるSPMSをまとめて再発性のMS(RMS)と称することもある。

 MS治療においては、急性期短期療法として、メチルプレドニゾロンの大量点滴パルス療法や血漿交換療法がしばしば用いられる。これらの治療法の短期的な効果は認められているが、MSは慢性的に疾患活動性が持続する疾患であることから、長期の予後改善を目的とした治療法がより求められている。現時点でのMSの長期的な再発予防・進行抑制治療としては、注射薬であるインターフェロンβ製剤(アボネックスベタフェロン)、グラチラマー(コパキソン)、ナタリズマブ(タイサブリ)および、経口薬であるフマル酸ジメチル(テクフィデラ)、フィンゴリモド(イムセラジレニア)、さらに2020年9月より、SPMSに対するシポニモドフマル酸(メーゼント)が臨床使用されている。

 MSでは、再発時に認められる急性期病巣の形成に自己反応性B細胞および自己反応性T細胞が重要な役割を担っている。オファツムマブは、CD20分子エピトープを特異的に認識するヒト型免疫グロブリン(Ig)G1Kモノクローナル抗体であり、B細胞および一部のT細胞サブセット表面に発現したCD20に特異的に結合する。これにより、補体依存性細胞傷害(CDC)作用および抗体依存性細胞傷害(ADCC)作用を誘導し、標的細胞を溶解させることにより、免疫反応を抑制し、炎症性脱髄の形成および進行を抑制する。オファツムマブの皮下注製剤であるケシンプタは、月1回投与のペン型のオートインジェクター製剤で、安全かつ簡便に投与できる。また、MSの治療薬としては、国内初のB細胞を標的とする薬剤である。

 再発を伴うMS患者を対象とした国際共同第2相臨床試験(G1301試験)および海外第3相臨床試験(G2301試験およびG2302試験)において、本薬の有効性と安全性が確認された。海外では、2021年5月現在、米国、EU、カナダなど世界41カ国で承認されており、日本では2020年3月に希少疾病用医薬品に指定されていた。

 主な副作用としては、注射部位反応(5%以上)などが報告されている。重大な副作用としては、感染症(15.0%)、注射に伴う全身反応(20.6%)が認められており、進行性多巣性白質脳症を生じる可能性もある。

 なお、薬剤使用に際しては下記の事項について留意する。
・慢性リンパ性白血病の治療のためにオファツムマブを点滴静注したB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルスの再活性化により肝不全に至り死亡した例が報告されている

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ