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【新薬】アミカシン(アリケイス)
難治性肺MAC症に初の治療薬、リポソーム化アミカシンの吸入液が登場

2021/05/21
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年5月19日、抗菌薬アミカシン硫酸塩の吸入薬(商品名アリケイス吸入液590mg)が薬価収載された。本薬は3月23日に製造販売が承認されていた。適応は「適応菌種:アミカシンに感性のマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)、適応症:MACによる肺非結核性抗酸菌症」、用法用量は「成人1日1回590mgをネブライザを用いて吸入投与」となっている。

 MACによる肺非結核性抗酸菌(NTM)症(以下、肺MAC症)は、Mycobacterium aviumM.avium)またはMycobacterium intracellulareM.intracellulare)を主な感染菌種とする肺NTM症の一種で、国内で報告される肺NTM症の80〜90%を占めている。MACは、環境中に存在し、人間の体内に取り込まれて感染症を発症させるため、免疫力が低下した人のみならず、健康な人にも感染すると考えられている。肺MAC症は、病的状態や死亡率に大きく影響し得る深刻な疾患で、慢性咳嗽、呼吸器困難、倦怠感、発熱、体重減少および胸痛など幅広い症状を引き起こす。時間の経過とともに進行する可能性があり、肺に重度または不可逆的な損傷を来し、致死的な状況に陥ることが報告されている。

 日本における肺MAC症の治療は、リファンピシン(RFP、リファジン他)またはリファブチン(RBT、ミコブティン)、エタンブトール(EB、エサンブトールエブトール)、クラリスロマイシン(CAM、クラリスクラリシッド他)の3剤に、必要に応じてストレプトマイシン(SM、硫酸ストレプトマイシン)またはカナマイシン(KM、硫酸カナマイシンカナマイシン)を加えた多剤併用療法が標準化学療法とされている。しかし、いまだに治療の選択肢が限られており、副作用や耐性化により治療が困難な症例も少なくないのが現状である。

 アミノグリコシド系抗菌薬のアミカシンは、蛋白質合成を阻害することで殺菌作用を示す薬剤である。国内では、アミカシンの注射薬が様々な細菌感染症に対する治療薬として臨床使用されている。MACに対する適応はないものの、「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」(2019年2月)において、アミカシン感受性のNTM症に対して、保険診療が認められていた。しかし、注射薬では、肺への浸透性が低いこと、腎毒性を有すること、聴覚・平衡覚障害を生じる可能性があることなどが課題となっている。

 アリケイスは、アミカシンの全身曝露を抑えて副作用を軽減しつつ、肺内へ効率的に薬剤を送達できるように、リポソーム粒子に封入したリポソーム化アミカシンの吸入液剤である。使用に際しては、専用ネブライザの「ラミラネブライザシステム」を用いて投与する。

 多剤併用療法にもかかわらずMAC菌陽性が確認される肺MAC症患者を対象とした、日本人を含む国際共同第3相試験(INS-212試験)、日本人を含む国際共同第3相長期投与試験(INS-312試験、INS-212試験の延長試験)、海外無作為化プラセボ対照二重盲検および非盲検第2相試験(TR02−112試験)の結果から、本薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2020年12月現在、欧米など5つの国または地域で承認されている。

 副作用として、主なものは耳鳴、疲労、咳嗽、発声困難、呼吸困難、喀血、口腔咽頭痛(各5%以上)などが認められている。重大な副作用としては、気管支痙攣(21.5%)、第8脳神経障害(15.1%)、急性腎障害(3.2%)、過敏性肺臓炎(2.7%)が報告されており、ショック、アナフィラキシーを生じる可能性もある。

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