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【新薬】ラロトレクチニブ(ヴァイトラックビ)
NTRK融合遺伝子陽性の固形癌に2番目のTRK阻害薬

2021/04/30
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年3月23日、抗悪性腫瘍薬ラロトレクチニブ硫酸塩(商品名ヴァイトラックビカプセル25mg、同カプセル100mg、同内用液20mg/mL)の製造販売が承認された。適応は「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」、用法用量は「成人には、1回100mgを1日2回経口投与。小児には、1回100mg/m2(体表面積)を1日2回経口投与する。ただし、1回100mgを超えないこと。成人、小児ともに患者の状態により適宜減量する」となっている。

 神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体(NTRK)融合遺伝子とは、トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)蛋白質(TRKA、TRKB、TRKC)をコードするNTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3)と他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)とが染色体転座の結果、両者が融合してできる異常な遺伝子である。このNTRK融合遺伝子からつくられるTRK融合蛋白質により、癌細胞の増殖が促進されると考えられている。NTRK融合遺伝子の発生は非常にまれであるが、成人や小児の様々な固形癌や肉腫などで確認されている。NTRK融合遺伝子の陽性率は、一般的に結腸・直腸癌など患者数の多い癌では低く、乳腺分泌癌など患者数の少ない癌で高い傾向がある。このことから、患者数は極めて少ないと推定されている。

 ラロトレクチニブは、NTRK遺伝子がコードするTRKファミリー蛋白質のチロシンキナーゼに対する阻害作用を有するTRK阻害薬である。TRK融合蛋白質のリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。TRK阻害薬としては、2019年9月から臨床使用されているエヌトレクチニブ(ロズリートレク)に次ぐ薬剤である。

 12歳以上のNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌患者(日本人患者を含む)を対象とした国際共同第2相試験(NAVIGATE試験)、21歳以下の進行・再発の固形癌患者で国際共同第1/2相試験(SCOUT試験)において本薬の有効性と安全性が確認された。2020年10月現在、米国およびEUなど世界42の国および地域で承認されており、日本では2019年5月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 本薬投与による主な副作用として、疲労(14.3%)、悪心(10.6%)、便秘(10.1%)、味覚異常、嘔吐、下痢、筋肉痛、浮腫、頭痛、発疹、体重増加(各5%以上)などが報告されている。重大な副作用としては、肝機能障害(ALT増加[28.0%]、AST増加[23.3%]など)、骨髄抑制(好中球減少[10.6%]、白血球減少[9.0%]など)、中枢神経系障害(浮動性めまい[17.5%]、錯感覚[2.6%]など)が認められているため十分注意する。

 また、薬剤使用に際しては下記の事項について留意する。
・薬剤投与により副作用が発現した場合には、添付文書に記載のある用量調節基準などを参考に、本薬の休薬・減量・中止を考慮すること
・国内での治験症例が限られていることから、有効性および安全性に関するデータ収集のために、一定数の症例に関わるデータが集積されるまで全症例で使用成績調査を実施すること

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