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【新薬】イデュルスルファーゼ ベータ(ヒュンタラーゼ)
ムコ多糖症II型を治療する初の脳室内投与薬

2021/04/23
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2021年4月21日、ムコ多糖症II型治療薬イデュルスルファーゼ ベータ(商品名ヒュンタラーゼ脳室内注射液15mg)が薬価収載された。本薬は1月22日に製造販売が承認されていた。適応は「ムコ多糖症II型」、用法用量は「1回30mgを4週間に1回脳室内投与。脳室内圧の変動を防ぐため、あらかじめ投与液と同容量(2mL)の脳脊髄液を採取した後、希釈せずに1分以上かけて投与する」となっている。

 ライソゾーム病の一種で、先天性の難治性疾患であるムコ多糖症。体内のムコ多糖を分解するライソゾーム酵素が欠損することにより、全身にムコ多糖の一種であるグリコサミノグリカン(GAG)が蓄積し、臓器不全、骨関節病変、皮膚・結合組織病変、中枢神経障害など全身性の多様な臨床所見を呈する。ムコ多糖症にはI型からVII型(V型は欠番)まであり、患者数は国内に数百人と推定されるが、中でもII型が最も多い。

 ムコ多糖症II型(MPSII)はハンター症候群とも呼ばれ、GAGの代謝経路を担うライソゾーム酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)の先天的欠損により、GAGのうち主にヘパラン硫酸(HS)とデルマタン硫酸(DS)が細胞内に蓄積する。これにより、神運動発達遅延、舌の肥大、難聴、呼吸不全、閉塞性無呼吸、肝脾腫大、心臓弁膜症、関節可動域の制限、骨格変形および高度の低身長などの症状が発現する。この先天的疾患はX染色体潜性遺伝病であり、原則的には男児にのみ発症することが判明しており、2~4歳ごろまでに典型的な症状が発症し、多くの患者は20歳前に死亡する。

 従来、MPSIIの治療は個々の症状に対する対症療法が中心となっており、病態の進行を阻止する方法はなかった。しかし、2007年10月より遺伝子組み換え技術を使ってヒト線維芽細胞に産生させたIDS蛋白であるイデュルスルファーゼ(エラプレース)が酵素補充療法(ERT)製剤として臨床使用されるようになった。一方で、高分子であるIDSは血液脳関門を通過しないため、既存のイデュルスルファーゼ製剤では中枢神経症状に対する効果が期待できないことが課題となっていた。

 ヒュンタラーゼは既存のイデュルスルファーゼと同一のアミノ酸配列を持つが、重症型MPSII患者における中枢神経症状の改善を目的としており、植込み型脳脊髄液リザーバを介して脳室内投与するERT製剤である。脳室内に直接投与することで、脳内のHS濃度を低下させ、MPSII患者における中枢神経症状を改善させることが期待されている。

 重症型MPSII患者(試験開始24週間以上前からイデュルスルファーゼを静脈内投与し、試験中も投与が継続されている)を対象とした国内臨床試験において、本薬の有効性および安全性が検証された。

 海外では2020年9月現在、脳室内投与製剤は承認されていないものの、静注製剤として韓国など世界6カ国で承認されている。日本においては、2020年3月、希少疾病用医薬品に指定されている。

 副作用として嘔吐、悪心、蕁麻疹、血中ビリルビン増加、落ち着きのなさ、発熱(各10%以上)が認められている。

 なお、薬剤使用に際しては下記の事項について留意する。
・本薬の投与により重篤なアナフィラキシー、ショックが発現する可能性があるため、緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与を開始し、投与終了後も十分な観察を行うこと
・イデュルスルファーゼが静脈内投与され、忍容性が確認されている患者に投与すること
・承認までの治験症例が限られていることから、有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例で使用成績調査を実施すること

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