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【新薬】ベロトラルスタット(オラデオカプセル)
遺伝性血管性浮腫の発作を抑制する経口薬が登場

2021/02/12
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2021年1月22日、遺伝性血管性浮腫発作抑制薬ベロトラルスタット塩酸塩(商品名オラデオカプセル150mg)の製造販売が承認された。適応は「遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」、用法用量は「成人および12歳以上の小児に、1日1回150mgを経口投与」となっている。

 遺伝性血管性浮腫(HAE)は、顔面、口唇、手足、上気道、消化器など様々な部位に、急性に浮腫が生じる常染色体顕性(優性)遺伝疾患である。補体成分C1rおよびC1s、血液凝固・線溶系、カリクレイン系に対して広範な阻止作用を有するC1エステラーゼインヒビター(C1-INH)の欠損や機能低下が原因とされる。浮腫を引き起こす主要なメディエーターは、C1-INHの欠損または機能低下のために過剰濃度となったブラジキニンである。過剰のブラジキニンがブラジキニンB2受容体と結合し、血管拡張や血管透過性を亢進することで血管性浮腫が生じると考えられている。有病率は5万人に1人とされ、日本の患者数は約2500人と推定されている。

 HAEの急性症状は2~5日間程度で軽快する。ただし、慢性的に発症を繰り返すことで、身動きがとれなくなるほどの激しい腹痛や顔面浮腫を生じたり、上気道(咽頭)の激しい浮腫により致死的な呼吸困難や窒息を引き起こす危険性もある。そのため、発作後は早期の治療が必要となる。

 HAEの急性発作に対するアプローチは「治療」と「発症抑制」に分けられる。既存の薬剤としては、C1-INH静注製剤(ベリナートP)、皮下注製剤のブラジキニンB2受容体拮抗薬イカチバント(フィラジル)があるが、このうち「発症抑制」に適応を有するものはC1-INH静注製剤のみであった。しかし、この適応は「侵襲を伴う処置によるHAEの急性発作」に限定されている。

 ベロトラルスタットは、「HAEの急性発作の発症抑制」に適応を持つ初の経口血漿カリクレイン阻害薬である。血漿カリクレインは、高分子量キニノーゲンを切断するセリンプロテアーゼで、血管拡張物質であるブラジキニンを放出することが知られている。ベロトラルスタットは、この血漿カリクレインを選択的に阻害することで、血漿カリクレインの活性を低下させ、HAE患者における過剰なブラジキニン生成を抑制する。

 12歳以上のI型またはII型HAE患者を対象とした国内第3相試験および海外第3相試験(いずれもプラセボ対照試験)にて本薬の有効性と安全性が検証された。海外においては、2020年12月現在、米国で承認されている。日本では、2015年10月に先駆け審査指定制度の指定品目、2018年12月に希少疾病用医薬品の指定を受けている。

 副作用として、腹痛、下痢、鼓腸(各5%以上10%未満)などが認められている。重大な副作用としては、肝機能障害(3.8%)が報告されており、QT延長を生じる可能性もある。

 薬剤使用に際しては、事前に該当患者またはその家族に以下の内容を十分に説明し、理解を得た上で使用する。
・急性発作の「治療」を目的に本薬を使用しないこと
・副作用のQT延長を含めた安全性の懸念があること

 なお、本薬は承認までの治験症例が限られていることから、有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例で使用成績調査を実施することが承認条件になっている。

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