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【適応追加】バリシチニブ(オルミエント)
アトピー性皮膚炎を治療する初の経口JAK阻害薬

2021/01/29
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年12月25日、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブ(商品名オルミエント錠4mg、同錠2mg)の適応が追加された。追加された適応は「アトピー性皮膚炎」、用法用量は「成人、1日1回4mg経口投与。なお、患者の状態により2mgに減量」となっている。

 アトピー性皮膚炎(AD)は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性疾患であり、患者の多くはアトピー素因を有している。特に、中等度から重症のADは、広範囲な発疹を特徴として、持続する難治性の痒み、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮と毛細血管出血を伴うことがある。患者にとって、痒みが最も大きな負担となり、体力を消耗させることもある。

 ADの治療法は病態に応じて、薬物療法、皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア、悪化因子の検索と対策──の3点が基本となっており、患者ごとに症状の程度や背景などを勘案して、これらを適切に組み合わせる。現時点でのADの薬物療法では、抗炎症外用薬のステロイドおよびタクロリムス(プロトピック他)が中心的治療薬と位置付けられており、多くの臨床研究で有効性と安全性が検討されている。また、2020年6月より JAK阻害薬の外用製剤デルゴシチニブ(コレクチム)が臨床使用されている。さらに、これらの中心的治療薬を使用しても効果不十分なADに対しては、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体の皮下注製剤デュピルマブ(デュピクセント)が用いられている。

 ADの治療目標は、症状が認められない、あるいは症状があっても軽微であり、かつ日常生活に支障がない寛解状態への導入およびその長期維持である。このことから、既存の中心的治療薬だけでなく、ADの病態形成や進展の要因(皮膚バリア機能の低下、炎症、痒み)を抑制できる、寛解導入および寛解維持療法において長期運用可能な薬剤の開発・承認が求められていた。

 バリシチニブは、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすJAKファミリーに対する阻害作用を示し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでADを改善する内服製剤である。2017年9月より「関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」の適応で臨床使用されており、ADの適応ではデルゴシチニブに次ぐJAK阻害薬である。なお、ADに適応を持つ経口JAK阻害薬としては1剤目となる。

 ステロイド外用薬で効果不十分な中等度から重度のAD患者(日本人を含む)を対象とした3つの国際共同第3相試験において、本薬の有効性と安全性が確認された。海外では、2020年11月現在、72の国と地域で承認されており、米国では関節リウマチ、欧州では関節リウマチとADの適応で使用されている。

 副作用としては、鼻炎などの上気道感染、LDLコレステロール上昇(各10%以上)などが認められている。重大な副作用としては、帯状疱疹(3.2%)などの感染症、消化管穿孔(0.1%未満)、好中球減少(0.8%)、リンパ球減少(1.3%)、ヘモグロビン減少(0.1%)、ALT上昇(1.1%)などの肝機能障害、黄疸(頻度不明)、間質性肺炎(0.1%未満)、静脈血栓塞栓症(0.3%)が報告されているので十分注意する必要がある。

 また、今回の適応追加に際しては、厚生労働省作成の「最適使用推進ガイドライン」(2020年12月)によって、周知の徹底が全国の医療機関・薬局に対して図られている。同ガイドラインには、臨床試験データに加え、本薬の取り扱い施設や医師についての要件、投与対象患者の選択、投与に際しての考え方、副作用への対応などの留意事項が記載されているので、使用に際して十分確認しておくこと。

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