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【新薬】ラスクフロキサシン(ラスビック点滴静注)
2つの標的酵素を阻害するキノロン系抗菌薬の点滴静注製剤

2021/01/08
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年11月27日、抗菌薬ラスクフロキサシン塩酸塩(商品名ラスビック点滴静注キット150mg)の製造販売が承認された。適応は「適応菌種:ラスクフロキサシン(LSFX感性)のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ペプトストレプトコッカス属、ベイヨネラ属、バクテロイデス属、プレボテラ属、ポルフィロモナス属、フソバクテリウム属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)、適応症:肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染」、用法用量は「成人に投与初日は300mg、投与2日目以降は150mgを1日1回点滴静注」となっている。同一成分として、2020年1月より経口薬(錠剤)が呼吸器感染症および耳鼻咽喉科領域感染症に対して臨床使用されている。

 国内の呼吸器感染症ガイドラインでは入院下の肺炎に対する抗菌薬として、βラクタム系抗菌薬やキノロン系抗菌薬のレボフロキサシン(LVFX)の注射薬(クラビット)が推奨されている。また、非定型肺炎が疑われる場合は、アジスロマイシン(AZM、ジスロマック他)などのマクロライド系抗菌薬などが考慮される。さらに、誤嚥と関連する肺炎や肺化膿症・肺膿瘍で嫌気性菌が関与する場合にはアンピシリン・スルバクタム(ユナシン-S他)などβラクタム系抗菌薬を含む薬剤が使用されている。しかし、近年、βラクタム系抗菌薬、マクロライド系抗菌薬に対する耐性菌の出現が問題となり、さらに肺炎球菌に対するLVFXの感受性低下も報告されている。

 ラスクフロキサシンは国内で開発されたキノロン系抗菌薬で、細菌のDNA複製に必須なDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼIVに対する阻害活性を有する。既存のキノロン系薬がDNAジャイレースまたはトポイソメラーゼIVのどちらか片方を阻害するのに対し、LSFXは両方を同程度に阻害する特徴がある。これらのことから、既存のキノロン系薬に比べて耐性菌が出現しにくいことが期待されている。

 市中肺炎患者を対象に行った国内第3相二重盲検比較試験(対照:LVFX注射薬)および、肺炎・肺膿瘍・慢性呼吸器病変の二次感染などの呼吸器感染症患者を対象とした国内第3相非盲検非対照試験において、本薬のLVFX注射薬に対する非劣性を含めた有効性、安全性が確認された。

 副作用(臨床検査値異常を含む)としては注射部位紅斑(5~10%未満)、下痢・好酸球数増加など(各1~5%未満)などが報告されている。重大な副作用としては、間質性肺炎(0.3%)が認められており、ショック、アナフィラキシー、白血球減少症、QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、低血糖、偽膜性大腸炎などの血便を伴う重篤な大腸炎、腱障害(アキレス腱炎、腱断裂など)、肝機能障害、横紋筋融解症、痙攣、精神症状(錯乱、せん妄など)、重症筋無力症の悪化、大動脈瘤、大動脈解離を生じる可能性がある。

 薬剤使用に際しては、既存のキノロン系薬と同様に、耐性菌の出現などを防ぐ観点から疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめるなど適正使用を心掛ける。また、既存のキノロン系薬と異なり、本薬の適応は肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染に限定されていることに留意する。

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