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【新薬】ニラパリブ(ゼジューラ)
卵巣癌を治療する1日1回投与のPARP阻害薬

2020/12/04
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年11月20日、抗悪性腫瘍薬ニラパリブトシル酸塩水和物(商品名ゼジューラカプセル100mg)が発売された。本薬は9月25日に製造販売が承認され、11月18日に薬価収載されていた。適応は「(1)卵巣癌における初回化学療法後の維持療法、(2)白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法、(3)白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌──」、用法用量は「通常、1日1回200mgを投与。ただし、初回投与前の体重が77kg以上かつ血小板数が15万/μL以上の成人には1日1回300mgを投与。なお、患者の状態により適宜減量」となっている。

 卵巣癌は女性性器悪性腫瘍の中でも最も死亡患者数の多い疾患で、国内での罹患患者数および死亡患者数は年々増加傾向にある。卵巣癌では、進行期が最も重要な予後因子とされており、III・IV期症例の予後は不良である。各種癌治療では早期発見・早期治療が予後に大きく影響するが、卵巣が骨盤内臓器であるために腫瘍が発生しても初期段階では自覚症状に乏しく、卵巣癌の進行期分布をみると約40~50%の症例が予後不良なIII・IV期症例である。

 現在、卵巣癌に対して行われる化学療法は、カルボプラチン(パラプラチン他)などの白金系薬剤と、パクリタキセル(タキソール他)などのタキサン系微小管阻害薬の組み合わせによる化学療法レジメンで、奏効率が高いにもかかわらず、3年以内に約70%の患者で再発することが報告されている。再発に対して化学療法が実施されるが、再発回数が増すにつれて、後治療によるベネフィットを享受できる期間が短くなることが問題となっていた。一方、2013年に血管内皮増殖因子(VEGF)に対する分子標的薬ベバシズマブ(アバスチン他)が卵巣癌に適応追加となり、さらに2018年4月よりDNA一本鎖切断修復の主要酵素であるポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)を選択的に阻害するPARP阻害薬オラパリブ(リムパーザ)が卵巣癌に対する分子標的薬として使用可能となり、治療への有用性は高まってきた。

 ニラパリブは、オラパリブに次ぐPARP阻害薬である。DNAの二本鎖切断修復機構である相同組換え修復が機能しない癌細胞に選択的に作用し、細胞死に導き抗悪性腫瘍効果を発揮する。オラパリブは1日2回投与であるが、ニラパリブは1日1回投与の薬剤である。さらに、オラパリブの効能・効果では、初回化学療法後の維持治療に用いるときは「BRCA遺伝子変異陽性患者」となっているが、ニラパリブではBRCA遺伝子変異の有無にかかわらないという違いがある。また、オラパリブと比較してPARPとDNAとの複合体の解離を阻害する活性が高いこと、膜透過性が高く腫瘍組織中の薬物濃度比が高いことなどが報告されている。

 承認時までの5つの国内外臨床試験において、本薬の有効性と安全性が確認された。海外においては、2017年3月に米国、2017年11月に欧州で承認されている。

 副作用として、悪心(59.1%)、疲労(33.2%)、便秘(24.2%)、嘔吐(20.0%)、食欲減退・下痢・頭痛・不眠症・無力症(各10%以上)などが認められている。重大な副作用としては、血小板減少(62.0%)や貧血(55.1%)などの骨髄抑制(78.8%)、高血圧(9.8%)、間質性肺疾患(0.6%)などが報告されており、可逆性後白質脳症症候群を生じる可能性もある。

 なお、本薬の貯法は2~8℃の冷所保存となっているが、2020年11月に室温保存が可能な「錠剤」の剤形追加の承認申請も出されている。

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