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【新薬】インコボツリヌストキシンA(ゼオマイン)
効果が減弱しにくいA型ボツリヌス毒素製剤

2020/10/16
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年6月29日、A型ボツリヌス毒素製剤インコボツリヌストキシンA(商品名ゼオマイン筋注用50単位、同筋注用100単位、同筋注用200単位)の製造販売が承認された。適応は「上肢痙縮」、用法用量は「成人に複数の緊張筋に合計400単位を分割して筋注。1回当たりの最大投与量は400単位であるが、対象となる緊張筋の種類や数により、投与量は必要最小限となるように適宜減量。また、再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は12週以上とする。なお、症状に応じて投与間隔は10週まで短縮可」となっている。

 脳血管障害や頭部外傷、脳性麻痺、脊髄損傷などが原因となって発症する上肢痙縮では、手関節、手指関節、肘関節および母指関節の屈曲、前腕の回内などの典型的で異常な姿勢パターンを伴う運動機能障害が認められる。更衣の困難さ、衛生状態の悪化、随意運動の妨げを引き起こすとともに、筋肉のスパズムによる疼痛や不眠の原因となって、日常生活活動の妨げとなる。

 上肢痙縮を含む痙縮の治療では、理学療法などのリハビリテーションに加えて、エペリゾン(ミオナール他)などの中枢性筋弛緩薬や、ダントロレン(ダントリウム)、A型ボツリヌス毒素(ボトックス他)などの末梢性筋弛緩薬が臨床使用されている。

 このうち、A型ボツリヌス毒素は末梢のコリン作動性神経終末に作用し、神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害することで随意筋の筋力を弱め、筋緊張状態を緩和する。標的とする筋肉内に簡便な手法で局所投与され、感覚神経障害を引き起こさずに運動神経終末のみに作用する神経ブロック療法の1つとして国内外のガイドラインで推奨されている。治療効果も高いことが認められている。しかし、既存の製剤は神経毒素成分(A型ボツリヌス毒素)以外に無毒性成分の複合蛋白質も含まれるため、投与を継続することで中和抗体が産生され、効果が減弱することが問題となっていた。

 ゼオマインは、A型ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)から産生されるA型ボツリヌス毒素から複合蛋白質を取り除き、神経毒素成分のみを有効成分とした薬剤。中和抗体産生による効果減弱の可能性が低くなると期待されている。

 脳卒中後の成人上肢痙縮患者を対象とした国内第3相試験(対照:プラセボ)において本薬の有効性および安全性が検証された。海外では、2005年5月にドイツで承認されて以来、2020年1月現在、欧米を中心に世界70ヵ国以上で承認されている。

 副作用として、筋力低下(3%以上)、注射部位内出血、構語障害(各1~3%未満)などが認められており、重大な副作用としてアナフィラキシーを含む重篤かつ即時型の過敏症、血清病などを生じる可能性もある。

 承認条件として以下の事項が挙げられていることに留意する。
・本剤についての講習を受け、本剤の安定性および有効性を十分に理解し、本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師によってのみ用いられるよう、必要な処置を講じる。
・本剤使用後に失活・廃棄が安全・確実に行われるよう、廃棄については薬剤部に依頼するなど、所要の措置を講じ、廃棄に関する記録を保管する。

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