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【新薬】シポニモド(メーゼント)
二次性進行型多発性硬化症に初の治療薬、1日1回の経口投与

2020/10/09
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年9月14日、多発性硬化症治療薬シポニモドフマル酸(商品名メーゼント錠0.25mg、同錠2mg)が発売された。本薬は6月29日に製造販売が承認され、8月26日に薬価収載されていた。適応症は「二次性進行型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制」であり、用法用量は「1日0.25mgから開始し、2日目に0.25mg、3日目に0.5mg、4日目に0.75mg、5日目に1.25mg、6日目に2mgを1日1回朝に投与(漸増期間)。その後、7日目以降は維持用量として1日1回2mgを投与するが、患者の状態により適宜減量」となっている。

 多発性硬化症(MS)は、感覚障害、視覚障害、運動麻痺などが認められる中枢神経系の脱髄疾患で、再発と寛解を繰り返し慢性に経過する。四肢の不自由や、車椅子での日常生活を余儀なくされることもあり、厚生労働省の特定疾患に指定されている。

 MSは、臨床経過により再発寛解型(RRMS)、二次性進行型(SPMS)、一次性進行型(PPMS)の3病型に分類され、MS患者の約85%がRRMSである。そのうち約半数が再発とは無関係に障害が進行するSPMSへ移行すると言われている。SPMSへはRRMS発症から15~20年で緩徐に進行するが、SPMSへ進行すると日常生活に影響を及ぼす身体的障害(歩行障害、視力障害、排尿・排便障害など)や認知機能障害が認められるようになり、患者だけでなくサポートする患者家族などの社会生活への影響も大きくなる。

 MS治療においては、急性期短期療法として、メチルプレドニゾロンの大量点滴パルス療法や血漿交換療法がしばしば用いられる。これらの治療法の短期的な効果は認められているが、MSは慢性的に疾患活動性が持続する疾患であることから、長期の予後改善を目的とした治療法がより求められている。現時点での長期的な再発予防・進行抑制治療としては、注射薬であるインターフェロンβ製剤(アボネックスベタフェロン)、グラチラマー(コパキソン)、ナタリズマブ(タイサブリ)および、経口薬であるフマル酸ジメチル(テクフィデラ)、フィンゴリモド(イムセラジレニア)が臨床使用されている。しかし、既存の薬剤は主にRRMS患者を対象とした臨床成績に基づき承認されたものであり、SPMSに対して障害進行抑制効果と安全性プロファイルを有する治療薬がないのが現状であった。

 シポニモドは、既存のフィンゴリモドと同様にリンパ球上のスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体に作用するS1P受容体調節薬である。S1P受容体の5種類のサブタイプ(S1P1~S1P5)のうちS1P1およびS1P5受容体に選択的に作用し、血中リンパ球減少作用および中枢神経系に対する直接的な神経保護作用を示す。具体的には、リンパ球上に発現するS1P1受容体の内在化を誘導し、機能的アンタゴニストとして作用する。これにより、二次リンパ組織からリンパ球の移出を抑制し、血中リンパ球数を減少させ、自己免疫反応に関与するリンパ球の中枢組織への浸潤を抑制する。さらに、シポニモドは血液脳関門透過性を有し、中枢神経系に移行し、S1P1受容体を介してアストロサイト活性化を抑制、S1P5受容体を介してオリゴデンドロサイトの再ミエリン化を促進し、直接的な神経保護作用を発揮すると考えられている。

 日本人を含むSPMS患者を対象とした国際共同第3相試験(プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験)において本薬の有効性と安全性が検証された。海外では、2020年8月現在、米国およびEUなど世界38カ国で承認されている。

 副作用(臨床検査値異常を含む)として、リンパ球減少症、高血圧、肝機能検査値上昇(各5%以上)などが報告されている。重大な副作用として、帯状疱疹(2.6%)などの感染症、黄斑浮腫(1.3%)、徐脈(5.5%)や第1度および第2度房室ブロック(1.6%)などの徐脈性不整脈、QT間隔延長(0.2%)などが認められており、悪性リンパ腫、末梢動脈閉塞性疾患、進行性多巣性白質脳症(PML)、可逆性後白質脳症症候群を生じる可能性もある。

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