日経メディカルのロゴ画像

【新薬】イサツキシマブ(サークリサ)
多発性骨髄腫を治療する2番目の抗CD38抗体製剤

2020/10/02
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年8月31日、抗悪性腫瘍薬イサツキシマブ(商品名サークリサ点滴静注100mg、同点滴静注500mg)が発売された。本薬は6月29日に製造販売が承認され、8月26日に薬価収載されていた。適応は「再発または難治性の多発性骨髄腫」、用法用量は「ポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用において、成人1回10mg/kgを点滴静注。28日間を1サイクルとし、最初のサイクルは1週間間隔で4回(1、8、15、22日目)、2サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)点滴静注」となっている。

 多発性骨髄腫(MM)は、骨髄中の形質細胞が癌化し、再発を繰り返す難治性の造血器腫瘍である。貧血、腎障害、骨痛および骨折、血液中のCa値上昇などの症状が発現する。国内のMMの年間発症率は10万人当たり約2~3人と推定されており、高齢者の罹患率が高いことから、高齢化人口の増加に伴い患者数も増加傾向にある。

 MMの薬物治療には複数のレジメンが用いられており、プロテアソーム阻害薬の注射薬ボルテゾミブ(ベルケイド)、カルフィルゾミブ(カイプロリス)、経口薬イキサゾミブ(ニンラーロ)、免疫調節薬サリドマイド(サレド)、レナリドミド(レブラミド)、ポマリドミド(ポマリスト)、さらにヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬パノビノスタット(ファリーダック)、ヒト化抗ヒトSLAMF7モノクローナル抗体エロツズマブ(エムプリシティ)、抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブ(ダラザレックス)などが使用されている。

 イサツキシマブは、既存のダラツムマブと同じIgGκ型抗CD38モノクローナル抗体であり、造血器悪性腫瘍の腫瘍細胞表面に高頻度に発現するヒトCD38抗原に結合することで、抗悪性腫瘍効果を発揮する。補体依存性細胞傷害(CDC)作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)作用、抗体依存性細胞貧食(ADCP)作用などにより腫瘍の増殖を抑制するとともに、アポトーシス誘導やCD38の細胞外酵素活性阻害作用なども有している。

 レナリドミドおよびプロテアソーム阻害薬を含む2レジメン以上の前治療歴を有する再発または難治性MM患者(日本人患者を含む)を対象とした国際共同第3相試験(EFC14335/ICARIA-MM試験)において、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの併用療法(Pd療法)と、Pd療法へ本薬を上乗せしたIPd療法の効果が比較された。その結果、IPd療法の優越性が示され、本薬の安全性および忍容性が確認された。2020年8月現在、海外では米国および欧州で承認されている。

 副作用として、下痢(10%以上)、呼吸困難、悪心、嘔吐(各10%未満5%以上)などが認められている。重大な副作用としては、肺炎(15.1%)や敗血症(1.3%)などの感染症(38.2%)、Infusion reaction(37.5%)、好中球減少(43.4%)や血小板減少(11.2%)、発熱性好中球減少(10.5%)、貧血(3.3%)などの骨髄抑制が報告されている。

 薬剤使用に際して、下記の事項に留意する。
・既存のダラツムマブと異なり、本薬による治療は、少なくとも2つの標準的な治療が無効または治療後に再発した患者を対象とする。
・本薬は治験症例が限られていることから、有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例を対象に使用成績調査を実施することが承認条件となっている。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ