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【新薬】サトラリズマブ(エンスプリング)
NMOSDの再発防止に、4週1回投与のIL-6阻害薬が登場

2020/09/18
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年8月26日、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体サトラリズマブ(商品名エンスプリング皮下注120mgシリンジ)が薬価収載と同時に発売された。本薬は6月29日に製造販売が承認されていた。適応は「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」、用法用量は「成人および小児に1回120mgを初回、2週後、4週後に皮下注。以降は4週間隔で皮下注」となっている。

 視神経脊髄炎スペクトラム障害NMOSD)は、抗アクアポリン4(AQP4)抗体が関与する自己免疫性中枢神経疾患で、重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする。病理学的メカニズムには、炎症性サイトカインであるIL-6が関連していることが明らかとなっている。NMOSDは無治療の場合、年間1~2回再発すると言われており、再発を繰り返すたびに障害が悪化し、再発時の発作で失明や車椅子生活に至る恐れもある。世界的にも患者数が少ない希少疾病で、10万人当たり0.52~4.4人と報告されている。国内の患者数は、2012年の全国疫学調査で4370人と推計されている。

 NMOSDの再発予防では、経口ステロイド薬、アザチオプリン(イムランアザニン)などの免疫抑制薬が推奨されている。しかし、ステロイド薬や免疫抑制薬などの投与を行っても再発を抑制できない例もあり、また再発が抑えられてもステロイド薬の長期使用によって副作用が現れることが問題となっていた。

 2019年11月、抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤エクリズマブ(ソリリス)がNMOSDに適応拡大され、高い効果を示す、新しい機序の薬剤が登場した。

 サトラリズマブはpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体で、エクリズマブに次ぐ、NMOSDに対する新しい機序の薬剤。pH依存的にIL-6レセプター(IL-6R)に結合することで、IL-6シグナル伝達を阻害する。1分子の抗体が繰り返し抗原に結合できる「リサイクリング抗体」として設計されており、酸性のエンドソーム内で抗原であるIL-6Rから解離することで、IL-6Rのみが分解され、抗体の消滅を低減できるという特性がある。

 なお、既存のヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体トシリズマブ(アクテムラ)、サリルマブ(ケブラザ)は、関節リウマチなどに臨床使用されているがNMOSDには適応を有していない。

 12~74歳のNMOSD患者(日本人患者を含む)を対象とした国際共同第3相二重盲検並行群間比較試験(SA-307JG試験)で、経口ステロイドおよび/または免疫抑制薬との併用療法での有効性および安全性が確認され、18~74歳のNMOSD患者を対象とした海外第3相二重盲検並行群間比較試験(SA-309JG試験)で、単剤療法での有効性と安全性が確認された。海外では、2020年8月現在、米国、カナダ、スイスで承認され、日本では、2019年9月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 副作用としては、注射に伴う反応(発疹、発赤、頭痛など、11.7%)、リンパ球数減少(5%以上)などが認められている。重大な副作用としては、白血球減少(11.7%)、好中球減少(4.8%)、血小板減少(1.4%)、肺炎(1.4%)などの感染症が報告されており、アナフィラキシーショック、アナフィラキシー、無顆粒球症、肝機能障害を生じる可能性もある。

 薬剤使用に際して、下記の事項に留意する。
・本薬投与により、急性期反応(発熱、CRP上昇など)、感染症に伴う症状が抑制されることで、感染症の発見が遅れることがある。そのため、敗血症、肺炎などの重篤な感染症が現れ、致命的な経過をたどる恐れがある。
・投与中は患者の状態を十分観察し問診を行い、定期的に白血球数、好中球数を測定する。これらの数値に変動・異常を認め、さらに喘鳴、咳嗽、咽頭痛などの症状から感染症が疑われる場合には、胸部X線、CTなどの検査を実施し適切な処置を行う。
・治験症例が限られていることから、有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例を対象に使用成績調査を実施することが承認条件となっている。

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