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【新薬】イリノテカン リポソーム製剤(オニバイド)
膵癌の2次治療にナノリポソーム型イリノテカンが登場

2020/07/03
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年6月1日、抗悪性腫瘍薬イリノテカン塩酸塩水和物のリポソーム製剤(商品名オニバイド点滴静注43mg)が発売された。本薬は、3月25日に製造販売が承認され、5月20日に薬価収載されていた。適応は「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵癌」、用法用量は「フルオロウラシルおよびレボホリナートとの併用において、成人1回70mg/m2(体表面積)を90分かけて2週間間隔で点滴静注。なお、患者の状態により適宜減量」となっている。

 膵癌は4番目に死亡数の多い癌腫であり(2018年)、がん死亡全体の9.5%を占める。切除可能な場合は外科的治療が中心となるが、切除不能な場合は放射線療法と併用した化学療法などが用いられている。化学療法としては従来からゲムシタビン(GEM、ジェムザール他)単独療法、FOLFIRINOX療法(オキサリプラチン[L-OHP、エルプラット他]+イリノテカン[CRT-11、トポテシン、カンプト他]+フルオロウラシル[5-FU、5-FU他]+レボホリナート[l-LV、アイソボリン他])などが1次治療の第一選択肢として臨床使用されている。しかし、1次治療不応後の2次治療に関するエビデンスは限られており、標準治療法が確立されていないのが現状である。

 オニバイドは、既存のイリノテカンをポリエチレングリコール(PEG)で修飾したリポソームに封入した製剤である。イリノテカンはⅠ型トポイソメラーゼを阻害し、DNA合成を阻害することにより細胞増殖抑制作用を示すと考えられている。イリノテカンをリポソーム化する利点は(1)血漿中循環時間の延長、(2)血管透過性および滞留性亢進効果に伴う腫瘍への集積の増加、(3)腫瘍内でのSN-38の曝露期間の延長による抗腫瘍活性の増強──がある。つまりリポソーム化されて一定の大きさのナノ粒子になっていることで、透過性の亢進した腫瘍血管に選択的に集積しやすく、ここでマクロファージに貪食され、イリノテカンが腫瘍組織周辺に放出される。放出されたイリノテカンは腫瘍およびマクロファージが持つカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に変換され、腫瘍増殖抑制効果を発揮する。

 GEMを含む化学療法後に増悪した遠隔転移を有する膵癌患者を対象とした海外第3相試験(NAPOLI-1試験)、国内第2相試験(331501試験)において、本薬+5-FU/l-LVの有用性と安全性が確認された。海外では、2015年10月に台湾および米国で承認されて以来、2020年5月現在、EU、オーストラリア、スイスなど世界21ヵ国で承認されている。

 副作用は悪心(50%以上)、嘔吐、口内炎、便秘、腹痛、無力症、食欲減退、低カリウム血症、味覚異常、脱毛症、体重減少(各5~50%未満)などがある。重大な副作用として、下痢(49.7%)、好中球減少(44.8%)・白血球減少(35.0%)・貧血(17.8%)などの骨髄機能抑制、肝機能障害(11.0%)、感染症(10.4%)、Infusion reaction(4.9%)、急性腎障害(1.8%)、血栓塞栓症・腸炎(各1.2%)、腸閉塞(0.6%)などが報告されており、黄疸、消化管出血、播種性血管内凝固、間質性肺疾患、心筋梗塞・狭心症、心室性期外収縮を生じる可能性もある。

 既存のイリノテカン製剤と同様に、UDPグルクロン酸転移酵素の遺伝子多型(UGT1A1)に基づく代謝の個体差があるので、用量や適応患者をよく検討する必要がある。

 また、薬剤投与により副作用が発現した場合は、添付文書に記載の「投与可能条件」、「投与再開時の減量基準」、「減量時の投与量」を参考に、本薬およびフルオロウラシルの減量などを考慮する。

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