日経メディカルのロゴ画像

【新薬】ボロファラン(ステボロニン)
頭頸部癌の治療に世界初のBNCT用ホウ素薬剤

2020/06/19
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年5月20日、抗悪性腫瘍薬ボロファラン10B)(商品名ステボロニン点滴静注バッグ9000mg/300mL)が薬価収載と同時に発売された。本薬は3月25日に製造販売が承認されていた。適応は「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌」、用法用量は「成人、1時間あたり200mg/kgの速度で2時間点滴静注。その後、病巣部位へ中性子線の照射を開始し、照射中は1時間あたり100mg/kgの速度で点滴静注」となっている。

 国内ガイドラインでは頭頸部癌(口腔癌、上顎洞癌、咽頭癌、喉頭癌、甲状腺癌、唾液腺癌など)の根本治療は主に外科療法と放射線治療であり、局所進行症例においては治癒や機能形態温存を目指したがん薬物療法が行われている。がん薬物療法には、根本治療の前に行われる導入化学療法、後に行われる補助化学療法、放射線治療と同時に行う化学放射線療法があり、シスプラチン(ランダ他)などのプラチナ製剤を中心に、ドセタキセル(タキソテール他)などのタキサン類の薬剤やフルオロウラシル(5-FU他)を併用するレジメンが用いられている。近年、抗EGFR抗体セツキシマブ(アービタックス)や免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)などのがん分子標的薬により治療効果が向上している。

 頭頸部扁平上皮癌などでは治療が長引くことで放射線抵抗性を獲得すること、頭頸部非扁平上皮癌では放射線感受性が低いことなどから、治療期間短縮や線量増加によって治療効果を向上させてきた。しかし、治療強度の増強により、正常組織の被ばく線量や早期有害事象の増加も大きな問題となっている。

 近年、放射線療法として注目されている中性子補足療法は、中性子との反応性の高い核種をあらかじめ腫瘍細胞に取り込ませておき、その核種と中性子との核分裂反応により腫瘍細胞を破壊する治療法である。その中でも、中性子散乱断面積が大きいホウ素10(10B)が用いられている方法がホウ素中性子捕捉療法BNCT)と呼ばれる。BNCTは、腫瘍細胞に10Bを高い濃度で集積させることで、正常細胞への線量を耐容線量以下に抑えつつ、腫瘍細胞に対しては致死的な線量を与えることが可能である。

 自然界に存在するホウ素原子の安定同位体には、質量数10の10Bが約20%、質量数11の11Bが約80%含まれている。そのうち、中性子と相互作用を起こす10Bのみを99%以上に濃縮生成した薬剤がボロファラン(10B)。フェニルアラニン誘導体である4-ボロノ-L-フェニルアラニンに含まれるホウ素中の10Bの存在比を高めている。中性子線を照射することで腫瘍細胞に取り込まれたボロファラン(10B)が中性子を捕捉し、核反応により生成されたアルファ線およびリチウム原子核を放出することで、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

 (1)化学放射線治療または放射線療法後の切除不能な局所再発頭頸部扁平上皮癌患者、(2)切除不能な頭頸部非扁平上皮癌患者──を対象とした国内第2相臨床試験(JHN002試験)で本薬を用いたBNCTの有効性および安全性が確認された。2017年4月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定された世界初のBNCT用医薬品で、2020年5月現在、海外では承認されていない。

 副作用として、脱毛症(90.5%)、アミラーゼ増加(85.7%)、悪心(81.0%)、味覚異常(71.4%)、食欲減退、耳下腺炎(各66.7%)、口内炎(61.9%)などがある。重大な副作用としては、白内障(9.5%)、脳膿瘍、重度の皮膚障害(各4.8%)が認められ、嚥下障害、結晶尿、頸動脈出血を生じる可能性もある。

 なお、本薬は承認までの治験症例が限られていることから、有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例を対象に使用成績調査を実施することが承認条件となっている。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ