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【新薬】ビルトラルセン(ビルテプソ)
筋ジストロフィーを治療する初の核酸医薬

2020/05/29
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年5月20日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬ビルトラルセン(商品名ビルテプソ点滴静注250mg)が薬価収載と同時に発売された。本薬は3月25日製造販売が承認されていた。適応は「エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィー」、用法用量は「80mg/kgを週1回、1時間かけて静注」となっている。

 筋ジストロフィーは骨格筋の壊死と再生を主な病態とする疾患であり、疾患の進行に伴い様々な合併症を示す指定難病である。筋ジストロフィーの代表的病型の1つであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーDMD)は、X染色体上に存在するジストロフィン遺伝子が遺伝的変異により欠失または重複することにより、機能的なジストロフィン蛋白質が欠損し発症するX連鎖劣性遺伝疾患である。ジストロフィン遺伝子変異にはエクソン単位での欠失または重複、点変異などの微小変異があり、DMD患者における変異の割合は、欠失が約60%、重複が約10%、微小変異が約30%とされている。DMDは、呼吸筋および心筋の障害、さらには重篤な運動機能障害、嚥下障害、痰の詰まり、消化管症状などを併発する進行性の筋疾患である。10歳頃に歩行困難となり、平均寿命は約30歳。日本での罹患患者数は約5000人と推定されている。
 
 DMDは根本的治療薬がなく、診療ガイドラインにおいて、進行予防に対して唯一エビデンスを得られているのがステロイド治療である。プレドニゾロン(プレドニン他)などのステロイドが臨床使用されているが、長期的な予後の改善に関するエビデンスが乏しく、肥満などの副作用に留意しなければならないのが現状である。

 ビルトラルセンは、国産初のモルフォリノ型のアンチセンス核酸であり、ジストロフィン遺伝子のmRNA前駆体のエクソン53部分に結合することでエクソン53をスキップさせ、正常より短鎖ではあるが、両端の構造を保持した機能的なジストロフィン蛋白質を発現させる。

 5歳以上13歳未満のDMD男児患者を対象とした国内第1/2相試験、歩行可能な4歳以上10歳未満のDMD男児患者を対象とする海外第2相試験において、本薬の有効性と安全性が確認された。2020年3月現在、日本以外の国または地域で承認されていないが、2019年12月に米国において承認申請が行われ、審査中である。国内では、2015年10月に先駆け審査指定制度の対象品目となり、2019年8月に希少疾病用医薬品の指定を受けた。また、2019年10月に医薬品の条件付き早期承認制度の適用対象とされた。

 臨床試験から重大な副作用は報告されていないものの、主な副作用としてBNP増加、駆出率減少、蕁麻疹、NAG増加、発熱、インターロイキン濃度増加(各5%以上)などが認められているため十分注意する。
 
 本薬は国内での症例数が極めて限られていることから、安全性と有効性に関するデータを収集するため、再審査期間中は全症例が使用成績調査の対象となっていることに留意する。

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