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【新薬】ポサコナゾール(ノクサフィル)
深在性真菌症に新たなアゾール系抗真菌薬が登場

2020/02/14
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年1月23日、深在性真菌症治療薬ポサコナゾール(商品名ノクサフィル錠100mg、同点滴静注300mg)の製造販売が承認された。適応は「(1)造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防、(2)既存の抗真菌薬が無効あるいは忍容性に問題がある真菌症(フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療」、用法用量は「成人に、初日は1回300mgを1日2回、2日目以降は1日1回300mgを投与。点滴静注の場合は、中心静脈ラインから約90分かけて緩徐に点滴静注」となっている。

 深在性真菌症は、血液疾患領域をはじめとする幅広い領域の患者に見られる、臓器または全身性の感染症であり、早期診断・治療が必要とされる重篤な疾患である。深在性真菌症のリスク因子としては、同種造血幹細胞移植(同種HSCT)や好中球減少などがある。深在性真菌症の診断は容易でなく、一度発症すると予後が不良であるため、同種HSCT後などには抗真菌薬の予防投与を行うことが国内外のガイドラインで推奨されている。さらに、既存の抗真菌薬を使用しても効果不十分な一部の病型には、病巣切除やデブリードマンなどの外科的療法が併用されることがある。深在性真菌症の中でも、ムーコル症は年々増加傾向が認められており、フサリウム症などは発現頻度が少ないものの治療薬の選択肢が限られていることが大きな課題であった。

 現在、深在性真菌症の予防および治療には4系統の抗真菌薬が臨床使用されており、ポリエン系のアムホテリシンB(AMPH-B;アムビゾーム他)、アゾール系のフルコナゾール(FLCZ;ジフルカン他)やイトラコナゾール(ITCZ;イトリゾール他)など、フルオロピリミジン系のフルシトシン(5-FC;アンコチル)、キャンディン系のミカファンギン(MCFG;ファンガード他)、カスポファンギン(CPFG;カンサイダス)などがある。

 ポサコナゾール(PSCZ)は、FLCZやICTZなどと同じアゾール系薬剤であり、真菌細胞の細胞膜を構成するエルゴステロールの生合成を阻害し、各種酵母様真菌および糸状菌に対して抗真菌作用を示す。既存のアゾール系薬剤と比較して、ムーコル目(接合菌)を含む糸状菌にも抗真菌活性を示し抗菌力が優れているといった特徴を有している。さらに、FLCZと同様に、錠剤と注射製剤の薬物動態プロファイルが類似していることから、患者の状態により錠剤または注射製剤への切り替えが可能である。なお、腎機能障害のある患者でも用量調節が必要ないのも特徴だが、重度の腎機能障害例では曝露量がばらつく恐れがあることから、真菌症の発症の有無を注意深くモニタリングするなど、患者の状態を慎重に観察する。また、中等度以上の腎機能障害例に点滴静注製剤を使用する場合には、添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムが蓄積し、腎機能障害を悪化させるおそれがあることから、血清クレアチニン値を観察し、上昇が認められたら錠剤への切り替えを考慮する必要があることに注意する。

 既存のアゾール系薬(FLCZ/ITCZ)を対照として、侵襲性真菌症の発症リスクが高い患者を対象に予防投与を行った海外臨床試験において、侵襲性真菌症の発症抑制効果について、対照群との非劣性および優越性が認められた。また、真菌症(フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)患者を対象とした国内外の臨床試験にて、本薬の治療効果が認められた。海外では、米国や欧州など数十の国と地域において、経口懸濁液、錠剤、静注液が承認されている。

 薬剤投与時の主な副作用には、悪心、下痢(各5%以上)などがある。重大な副作用としては、低カリウム血症(5.2%)、QT延長(1.9%)、肝機能障害(重度の肝機能異常[0.6%]、肝毒性[0.4%]、胆汁うっ滞[0.6%])、急性腎障害(0.4%)が報告されているほか、肝機能障害(胆汁うっ滞性肝炎、肝不全、肝炎、黄疸)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、副腎機能不全、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、脳血管発作、腎不全、白血球減少症、汎血球減少症を生じる可能性がある。

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